元ポルトガル駐在員の推しの街 エボラとオビドス
前回投稿したモンサラーシュに続き、とても思い出深いが、夫々全く対照的な街を二つ紹介したい。
一つは、リスボンからモンサラーシュへ向かう途中で立ち寄ったエボラ。ポルトガル中央内陸部でリスボンのほぼ真東に位置する地方都市。城塞で取り囲まれた街の入口では青い空と明るく素敵な広場が出迎えてくれる。
ここを通り過ぎて街中に入り、神殿や修道院を眺めながら奥に進むと目的のサン フランシスコ教会に到る。今までの明るく爽やかな印象が一変する。
入って直ぐの礼拝堂はしっかりとしたレンガ造りで、16世紀に建てられたというかなりの年代を感じさせるゴシック様式の教会。
祭壇の横を更に進むと、なんと5000体ともいわれる人の骨で壁と言わず、天井も床下も埋め尽くされた場所に行き着く。一瞬、彫刻か模様かと思うが、よく見ると全て本物の人骨であり、まったく異様な雰囲気に包まれる。
修道士たちの黙想の場として作られたとの事。だが、周り中から視線を感じる・・・特に吊り下げられた一体の人骨がじっと見つめている様で、我々にはとても落ち着いて瞑想などしていられない場所ではあった。
ここまでむき出しの死者との遭遇は今までに経験したことが無い。一度は見てみる価値はあると思うが、如何ですか?
人骨堂で思いの外の衝撃を受けて、次の目的地へ向けて出発するとすぐに、伝統の陶芸品を作っている小さな工房の看板見つけた。その横に展示してある焼き物は他で見かけるものとはかなり風合いが違っていて、興味を持って行ってみることに。
見知らぬ東洋人が突然訪ねて来て工房を見せてくれと言われ、オヤジさんも驚いた様子だったが、親切に案内してくれた。工房での簡単な会話の中にも、人見知りだが素朴なポルトガル人の優しさを感じられて、人骨インパクトが少しは和らいだようなひと時ではあった。楕円形の花柄の皿を購入。
もう一つのお勧めは、リスボンから真北に位置する小さな村、オビドス。昔々、ここを訪れた王妃が気に入り直轄地にしてしまい、その後、庇護を受けた芸術家たちが住むようになり、今も美術品や陶芸品で有名。
ポルトガルの青空が最も鮮やかな季節である春先から初秋にかけて、ここでは色とりどりの花が咲き誇る。空の濃い青及び赤い屋根とのコントラストが絶景で、”谷間の真珠”と呼ばれていたことにも納得できる美しさである。
少し高低差はあるものの、街中を巡る小道を散策するのは爽快そのもの。歩き回って乾いた喉を潤すには、道沿いのバールのテラスで飲むビールに勝るものは無い。または、エスプレッソ珈琲とパステル デ ナタ(カスタードクリーム入りプチパイ)で一息も勿論最高。
ここの陶芸品の色合いは、先のエボラ近郊のものとは趣きが異なり、思わず買いたくなるようなかわいさ。籠のように編まれた小さな陶器を購入。
また訪れたくなるような雰囲気を醸し出している村である。
ここから大西洋に向かって1時間ほど走るとぺニシェという名の漁港がある。そこで食べた素朴だが、とても美味しい海鮮料理が忘れがたいという話はまた今度・・・