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松井秀喜のメジャーリーグ挑戦を振り返る

2023年シーズンのオフは山本由伸をはじめとする何名かののメジャーリーグ挑戦と佐々木朗希のメジャーリーグ挑戦を前提とした契約更改の延伸が大きな話題となりました。

今やメジャーリーグ挑戦はプロ入り前からの目標に掲げることが当たり前となった時代で、メジャーリーグに挑戦すること自体をとがめる風潮はほとんどないと言っても過言ではありません。
佐々木朗希がメジャーリーグに来季からの挑戦を希望することを非難する声はあっても、将来的にメジャーリーグでプレーすること自体を非難する声はありません。

1999年からプロ野球を見始めていつの間にか四半世紀経ってしまいましたが、25年前のプロ野球と今のプロ野球で最も変わったことの一つがメジャーリーグへの挑戦に対するとらえ方ではないかと思います。

20数年前にメジャーリーグ挑戦と言うと球団やファンは全面的に応援するという風潮ではなかったのは確かです。
そして、今回タイトルにも挙げている松井秀喜のメジャーリーグ挑戦は今では考えられない雰囲気でした。
当時プロ野球を見ていなかった人はぜひこちらの会見を見てほしいと思います。

この会見の中で、「ファンには申し訳ない」「裏切り者」という言葉が出てきます。
これからメジャーリーグでプレーするという希望を叶えるにもかかわらず、まるで謝罪会見のような雰囲気なのが時代を感じさせます。

イチローがメジャーリーグでのプレーを希望する際もすんなりと移籍できたわけではなく、球団と1年2年にわたる交渉を経て移籍しています。

私が見ている中だと、イチロー、松井の移籍を以てメジャーリーグに選手が移籍することが残念なものであるという風潮がなくなったのではないかと思います。

また、名実ともに日本野球界の象徴が重圧を背負い込んでメジャーリーグに挑戦するというのは野手においては松井が最後であったと思います。
だからこそ、メジャー1年目のシーズンである2003年のホームラン16本という成績は当時の私としても衝撃を受けました。

投手に関しては今年、山本由伸がメジャーリーグでプレーしますが、NPBでは3年連続で投手4冠王と沢村賞を獲得しており、前人未到の領域に達している彼は間違いなく日本一の投手です。
その彼がどんな成績を残すのか、投手の中でどれくらいの位置にいけるのかというのは、ファンとしても結構緊張感を持ってみる人が多いのではないかと思います。

また、松井秀喜のメジャーリーグ挑戦で一つ今の選手との違いを垣間見ることができることがあります。
それは特定の球団を松井自身が望んだことです。

今の選手はメジャーリーグでの成功の定義を個人の成績やメジャーリーグでプレーし続ける点に置いているように見えます。
これはかつてであればイチローなどもそうだったのではないかと思います。

ただ、松井に関してはメジャーリーグ随一の名門であるヤンキースを希望しました。
そして彼の目標をメジャーリーグでのホームラン王やMVPではなく、ワールドシリーズ制覇に置いていたのが今となってみれば特殊なように見えます。

ここに関してはどちらが良くてどちらが悪いというわけではありません。
ただ、メジャーリーグで何年かプレーしてワールドシリーズ制覇の目標を掲げる選手は何人か見た中でプレーする前からそこを目標にするのは面白い点です。

この点は松井が巨人で10年プレーしたことも影響しているのかもしれません。
松井が巨人でプレーしていた時代はまだ野球=巨人であった時代でした。
極端に言えば巨人が優勝するかしないかが最大のテーマであったようにも思えます。
そんな環境で4番としてチームの中心に立ち、全日本でも不動の4番であった松井だからこそメジャーでもチームの勝利を強く欲したのかもしれません。

当時中学生であった私が松井のメジャーリーグ挑戦について思っていたことを最後に述べます。
私が野球を好きになったきっかけは松井秀喜と上原浩治でした。
まさに当時の巨人ファンの典型と言っていいでしょう。
そんな大スターがメジャーに行ってしまうのを世論と同じように残念に感じていたのが本音です。
そして、2003年のシーズン、メジャーリーグの対応の苦慮している松井を見ていて歯がゆさを感じていました。(当時は中学生のガキファンであったのでお許しください)
しかし、そんな中で私が「松井メジャーに行ってよかったな」と感じた出来事がありました。

それは2003年のア・リーグ優勝決定シリーズの最終戦、勝てばワールドシリーズ出場、負ければシーズン終了の大一番でした。

ヤンキースが劣勢の中で徐々に追い上げて、8回に同点に追いつきますが、同点のホームを踏んだのが松井でした。
その時、日本では見たことないような形相で全身で喜びを爆発させる松井の姿を見て、松井がメジャーに行って良かったと思ったのです。

結局、ヤンキースはこの試合に勝ってワールドシリーズに進んだもののワールドシリーズでは敗退。
その後もヤンキースはポストシーズンには進出するも松井が望むワールドシリーズ制覇は遠のき、松井自身も膝の故障で試合に出ること自体が危ぶまれていきます。
そんな中ヤンキースとの契約最終年2009年、松井はワールドシリーズで躍動します。
ワールドシリーズ第6戦のペドロ・マルティネスから放ったホームランは私が野球を見てきた25年の中でも最高のシーンの一つです。

松井がメジャーリーグで残した成績は日本時代ほどの水準ではありませんでした。
しかし、彼がメジャーリーグに行ったことが間違いだったと考える人はもういないと思います。
改めて松井の挑戦を振り返ってみて何かに挑戦することの大切さを学んだ気がしました。

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