駅のほそみち紀行~誰もしていないことを始めた~
駅が開業した誕生日を「開業記念日」と私は呼んでいる。遠い昔であっても、1年に1度は同じ日が今もやってくる。その特別な日に駅を訪問し「入場券」というきっぷを窓口で買い求める旅である。
開業記念日と駅名が記された入場券は、その日、その場所でしか手に入れることができず、ICカードの普及と合理化で、今は窓口できっぷを買うこと自体が徐々にできなくなっている。
だからこそ、手に入れたときの感動は深いが、実用性だけの一枚の紙に価値を見出し、熱を入れているのは、端から見ればまず理解しがたい所業である。自覚しているがやめられない、少年のようだ。
私たちにとって身近な駅は、たとえ毎日利用していても、あまり深く気に留めることは少ない。
しかし、人が行き交い、時間が過ぎていくだけの場所にも、その生まれた「誕生日」があり、長い時間と社会の影響をめまぐるしく受けながら、成長して年老いた今の駅の姿がある。
どんな駅にもドラマがあり、訪れる私を待っている。先人達の想いを感じながら、ひとつひとつの駅に愛着を持って訪ねる、そんな旅をもう3年ほど続けてきた。
これから、私が体感した「駅」と「人」の模様をありのまま記そうと思う。読者の皆さまの思い出に触れる駅が登場した際には、ぜひ楽しんで頂ければ幸いだ。