キャプテン
剣道部のキャプテンをしていたことがあります。
ご存じの通り剣道は個人対個人ですから、決着をつける上で責任の所在は自分にあります。
ただ、団体戦の場合、それだけとも言い切れないところがあって、なんでかって言うと、団体戦は基本、5人対5人の勝負で、より多く勝ったチームの勝ちということになり、この場合負けても「人のせい」にできます。
でも負けようと思って戦う奴はいません。みんな勝ちたい。キャプテンの私が、キャプテンとしてあるまじき言葉をかけた彼だって、本気でそんなこと思っていたはずはないんです。
その彼は何と言ったか?
「俺だけ負けたらどうしよう」
そう言ったのです。
一種の保険をかけてたということ、「そんなことないよ」という励ましのリプが欲しかったのだろうということは今なら分かります。いや、当時だって分かっていたはずなのです。でも私はそうしなかった。
代わりに私が言った言葉は、「良かった。それなら俺たちのチームは勝ち上がるね」です。負けるのが彼だけなら、よっぽどのことがない限りチームは次の駒へと進めるわけです。
鳩が豆鉄砲を食らったような顔
というのはああいう顔を指して言うのでしょうね。友人の口元には「信じられない」という吹き出しが出ていました。
私も大人になったので、今はそんなこと言いません。言ったら即パワハラです。それぐらいのマナーなら弁えられるようになりました。
でも、極たまに、「こんぐらいのこと言わなきゃ分かんねえか?」って思った時に、キャプテンの時の自分が込み上げてくることは、稀にですが、これあります。
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