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厄年ではないけれど。

年末から年明けにかけて、身内が病気になることが続いた。

実母は長年がんサバイバーなのだが、定期的にみてきたところにがんがみつかり、手術し、切除した。切除しても何年かするとかなりの確率で再発するという。

夫は人差し指の爪が変形し、クリームとビタミン剤を服用しているがあまりよくなってはいない。

私もストレスなのか、過食に走り、食べても食べても胃がスッキリしない。ずっと食べていられるので、気持ち悪さは消えず、朝起きても身体全体がダルい。常にみぞおちのあたりが熱い。
以前はストレスがあると食べられなくなっていたが、いまはどんどん食べてしまう。
胃カメラをしたことがないので、経験談を聞く限り絶対にしたくないので、なかなか消化器科がある病院へ行けなかった。
年末から年始にかけては市販の胃薬でごまかした。

仕事始めの頃は気持ち悪さと身体中がつらくて限界だった。
えぇい!ままよと評価の高い病院へ急ぐ。
胃薬と胃酸を抑えるお薬をもらって帰る。
え?すぐに胃カメラとかじゃないの?食前に飲む漢方のおかげが、食べるのを気を付けるようになって、お薬も効いていて気持ち悪さや身体のダルさが軽減してきた。

そんな頃だった。

子どもが眠る前に、自身の左の陰嚢の異変に気付いた。
少し大きくなってるという。それに『机を運ぶときに当たると痛い』とのこと。私も確認したが、大きさの変異がわからない。
そのときは『様子をみよう』と床についた。

何日かすると『やっぱり痛い』というので改めてみてみると、私が見ても以前よりもやはり大きくなっているように思える。
かかりつけの小児科へ行った方がいいのか困ったが、ネットでは場所が場所なので専門家に診てもらった方がいいという。私が怖かったのが『精巣捻転』だ。6時間、遅くても12時間以内に手術しないと元に戻らないことなどがネットに書いてあるのを目にしたのだ。

次の日の朝一番に泌尿器科へ急いだ。

年明けだからなのか、診察時間10分前に入ったというのに、受付番号は30番台。1桁の方は何時から並んで待っていたのか…
初診なので、問診票を渡され、気になるところを記入する。
提出するときに、あ、そういえば子どもは3歳児健診で尿検査で潜血が±になってから、ずーっと潜血があり、定期的に尿検査と1年に1度は採血をして調べてもらっていることを受付に話した。
すると受付の方が『念のため検尿してください』という。
検尿カップを手に持って、検尿室へ入るが、入り口に既にたくさんの計量カップがズラリとならんでおり、失礼ながらおののいてしまった…

無事にとりおえて、待合室で待つことにした。が、座れない。至るところにパイプ椅子が置いてあるのだが、足りないくらいだ。
周りはおじさん、おじいさんばかりで、子どもの年齢の子はいなく、明らかに子どもが最年少だった…

どこからとともなく『おしっことれましたか?』と看護師さんの声が響く。
私には異空間でしかなく、パワーが少しずつ失われていく感覚になってきた。
『早く診てもらって帰りたい』気持ちがふつふつ…

1時間経った頃か、ついに呼ばれた。診察室に入ると先生もおじいさんだった。こちらをみず、問診票をみながら
『尿に潜血がでるのね?家族に潜血がでる人いる?』が第一声だった。
私は子どもの陰嚢について診てもらいたいのに、尿潜血のことを喋り始めた。
『体質的なものもあるし、念のため腎エコーみてみましょう。』という。

ん?ちょっと待って、何言ってるの??私が記入したことは関係ないというのですか?
私自身、こんなに沸点が低いとは思ってみなかったが、この医師に対して信用性がなくなってしまった。

『あの、子どもが陰嚢を痛がっていて…』と声を低くして伝えたら
『あ?そうだったね、いっしょにみます』とだけいって、さっと次の診察へ向かってしまった。

待合室に戻され、エコーを待った。
『もう少しおしっこを貯めて…』『検尿されますか?』『あまりでてませんね』
周囲の音ですら、不快に感じる。
10分くらい待って呼ばれた。

腎エコーはじっくり診ていたが、肝心の陰嚢は触って握っただけで『精巣捻転ではないから、自然に治るのを待ちましょう』といわれる始末…
『何か気を付けることないんですか?』と確かきいたはずだ。『だからよくなるのを待つの』と言われてしまった…
腎エコーも『クルミ割り現象みたいだから、あとでネットで調べて』というだけで診察終了。

次回来るときに早朝尿を持ってくるように言われ、病院をあとにした。

このあたりではあの病院が泌尿器科では一番なので、『いい先生』というが、私にはそう思えなかった。人の顔をみないで、診察して、結果しか言わない。

自宅に戻ると『そのまま何も気を付けなくていいのだろうか』と不安がでてきて、翌日、病院に電話した。医師と直接話してくださいと会計の人に言われたので、仕方なく次の日に早朝尿を持って相談しに行くことにした。

翌日、変な歩き方で帰ってきた子どもが帰ってくるなり『痛い!』と言う。陰嚢も腫れて赤くなってしまっている。

急いで病院に向かった。受付で子どもが痛がっていると話したが、混んでいたのもあり、診てもらえたのは2時間後…
診察室へ入るとやはり、尿のこと。医師が言うには赤血球の大きさが大小不同なので、腎炎の疑いがあるので大きな病院を紹介するという。
私の悩みの種である陰嚢についてはどうなのか…改めて『赤く腫れていて痛がってます』というと『大変だ!』とやっとエコーを撮ることに。
血流がみえるので、捻れてはいないため細菌が入ったのではないかと、抗生物質が処方された。
3ヵ所ほど病院の名前を挙げられたので、以前入院したことのある所にお願いした。『入院したことがあるので、データとか残っていますよね?』と訊くと『それはわかりません』とパソコンをみながら答えた。
『それはわからないけれど、あるといいね』とでも返せないのだろうか?

家族は『そういう人だから』というのだが、そういう人ならいいのだろうか?とヒネクレ者の私。
話すときは、人の目を見て話すこと、これは若輩者の私が親に言われきたことなので、躾に厳しい明治・大正生まれであろう医師の親御さんは必ず伝えていたはずだ。

『17時を過ぎているので、予約はできないので、また週明け予約します』と告げられた。17時を回ったのは私のせいではないし、また紹介状をもらいにこの病院へこないといけないのか…

大きな病院へ行くまでの10日間は長かった。
問題は一つから思いがけない形で二つに増えた。もしかすると検査結果次第ですぐに入院しなくてはならないかもしれない。
ぐるぐる嫌なことを考え、不安は募るばかりで、胃痛がまたしてきた。年明け行った胃腸科の病院へまた行き、経緯を説明した。医師はちゃんと話を聞いてくれたし、しっかり話を聞いてきてくださいねと励ましてくれた。駐車場でちょっと涙がでて、薬剤師さんまで『治おるための検査だから』と言ってくれたものだから、お薬をもらうときには目と鼻がぐずぐずに。
心が弱くなっているときに、やさしいことばをかけてくれるのが、人なんだよなと思い出した。

抗生物質を飲み終わった2日後に陰嚢の腫れは落ち着いた。

紹介状を持って、大きな病院へ行く。
小児腎臓内科である。
午後診療というだけあって、そんなに人がいない。
ベッドに横たわり、チューブにつながれた子も、中学生や高校生もみんなよくなるためにきている。
『普通』ってなんだろうかと、ここに来るといつも思う。

尿検査をして、診察室へ。
担当Dr.は丁寧な自己紹介をしてくれて、まず、私が心配だった陰嚢はどうなったか訊いてくれた。抗生剤を飲んで落ち着いていること、この病院には泌尿器科がないので、腫れていたら外科の先生にみてもらうことになることを教えてくれた。症状が落ち着いているので、その件は完了した。
次の問題の腎炎だが、子どもは年中から尿潜血のみで『無症候性血尿』という診断だった。生涯このままの人もいるし、突然潜血がでなくなる人もいる。たんぱくがでて腎臓の病気になる人もいること。定期的に検査をしているので、かかりつけ医で診てもらうことを話してくれた。
かかりつけ医の大学の先輩で、知り合いだったのも安心した。

帰りに子どもが好きなお寿司を食べて帰った。

かかりつけ医に予約をとって、経緯を説明すると『大変だったね』と私が言ってもらいたかった言葉で気遣ってくれた。
今回は細菌だったので、大事には至らなかったが、今後、陰嚢が痛いはもちろんのこと、恥ずかしくてお腹が痛いと子どもが言ったら、異変はないかみて、あればすぐに泌尿器科へ行って診てもらった方がいいと釘を刺された。

私を傷つけたのも医師であり、救ってくれたのも医師や医療従事者だった。


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