もやもやをふわふわに。

朝から気持ちが晴れない。もやもやする。
私とあなたの考え方の違いを、それなく受け流す行為が、苦痛でたまらない。
はっきり『違いますよ』と伝えられたらいいのに。

そういう日はお菓子を作る。レシピは乳製品が入っていないもの。材料も特別なものでなくて、家にあるものを選ぶ。
お菓子作りは楽しい。分量通りキチンと作れば、その分、美味しいものが仕上がる。

私を産むまで調理のおばちゃんだった母は、『キッチンを汚すから』という理由で私に台所をあまり使わせてくれなかった。
母と初めていっしょに作ったのは、3歳の頃。『パン』だったような気がする。ベーカリーメーカーみたいなものが流行っていた時、料理が好きな母が買ったのだった。
材料を入れてスイッチを押せば、できあがる簡単なもの。待っている時間が長いが、それでも私は楽しかったのを覚えている。

料理はしてなかったけれど、お菓子作りだけは高校生からしていた。
レシピは嘘をつかない。そのままの通りに作れば、美味しいお菓子が仕上がる。
失敗したときは、分量を間違えたか、私がレシピをうまく咀嚼できなかったかだ。
美味しくて甘いお菓子が、身体にしみて癒される。
家族も喜ぶ。いつもおやつはお煎餅だったけれど、クッキーやスコーンが出ると『コーヒーでも入れる?』と母も喜んでくれた。

オーブンレンジからチャイムが聞こえる。
スチール容器から大きな帽子がみえた。
シフォンケーキの完成だ。

レンジから出すと、甘い香りにふわふわな気持ちになった。

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