小松未歩の世界を語るnote vol.3-歌詞解釈「恋心」-(#恋心ナイト)
はじめに
こんにちは、kazuです。
今回は、2022年10月に開催された「恋心ナイト」についての記事です。小松未歩さんが2004年に発表した「恋心」という楽曲について、歌詞解釈を行いました。さて、当時の私はどんな解釈をしていたのでしょうか。
私はこの曲で描かれているのは、「彼がいない現実と真正面から向き合った主人公の半年間の物語」だと解釈しました。
登場人物は、主人公の女性と彼です。小説内では、主人公の一人称は私です。
また、今回は曲の流れに沿った解釈ではなく、歌詞から場面などを想像して、新たにストーリーを作ってみました。そのストーリーをドラマ化した場合、主題歌として恋心が流れる…そういったイメージです。なので、解釈の都合上、前後する場面もあります。ご了承ください。
歌詞解釈ポイント
私にとってのポイントは、3つあります。
①「肩にまわした手が時を戻す」
②「遣る方ない想いがつのる」
③「すっかりあか抜けた二人」
この曲に出てくる①~③の歌詞(※1)。これは一体、何を指すのでしょうか?
①「肩にまわした手が時を戻す」について
これは冒頭に出てくる歌詞ですが、ストーリーは、主人公の部屋で彼とゆっくり過ごしている場面から始まります。午後の陽射しが差し込む部屋の中で、彼の手が主人公の肩に優しく触れている場面を思い浮かべました。主人公はその感触に、懐かしさを感じ、遠い昔に戻った(=時が戻った)ような錯覚に陥っている状況だと解釈しました。
②「遣る方ない想いがつのる」について
この解釈のストーリーは現実と夢の中の場面に分かれていますが、ここの部分は夢の中の場面です。夢の中で彼と楽しくデートをしているのですが、途中で急にいなくなってしまいます。目が覚めると、彼がいないひどく虚しい現実を受け入れられない(=遣る方ない想いがつのる)主人公の姿を想像しました。
③「すっかりあか抜けた二人」について
あか抜けた=普段よりもお洒落な服装をしている二人のことを指すと解釈しました。この場面も夢の中ですが、ドレスコードが指定されているようなレストランで、お洒落な服装に身を纏い、向かいの席に座っている彼と、何か楽しい話で盛り上がっている場面を想像しました。
(※1)
出典:小松未歩(2004)「恋心」『涙キラリ飛ばせ』GIZA studio,GZCA-7050
この3点を踏まえ、書き進めていくと、ひとつの物語が完成しました。
それでは、お楽しみ下さい。
歌詞解釈
「恋心」
午後の陽射しが差し込む部屋の中で、彼の大きくて温かい手が私の肩にそっと優しく触れている…、それは遠い昔に何度も感じた懐かしい感触ですが、すごく長い時間が経ってしまったような虚しさが私を襲い、彼の顔を見ることが出来ません。
突然、彼の携帯が鳴り、電話に出ます。仕事の電話です。休みなく働いている彼を見て、私はこの頃不安になっていました。
「ごめん、行かなきゃ…。」
彼が言い放ち、急いで支度をして部屋を出ていく後ろ姿を追いかけるのは、いつものことでした。ただ、この日は何かが違っていて、彼の姿が目の前にあるのにモヤがかかったように認識できません。そして彼は、何も言わずに出ていきます。
部屋に戻ると、彼の忘れ物がありました。
彼はおっちょこちょいな性格で、何度もこんなことがありました。どうやら仕事の資料らしく、「急いで届けなきゃ。」と彼のあとを追いかけます。
しかし、いつもなら簡単に追いつけるはずが、今日はどんなに追いかけても追いつけません。
私は電話をかけようとして、携帯を見て戸惑いました。彼の電話番号がどこにもないのです。
「故障かな?」と思い、彼の会社に電話を掛けてみます。何かの時のために会社の電話番号も聞いておいたのです。
「申し訳ありませんが、当社にその人物は在籍しておりません。」
変な汗が出て、目の前の世界が一気に暗くなり、何が起きているのか把握できない私は、途端に体が動かなくなり、恐怖でおかしくなりそうです。
"早くここから逃げたい…!"
恐怖で叫んだ瞬間、気がつくと、ベッドの上にいました。
「なんだ夢か…」
あんな夢を見ていたから、汗でぐっしょりです。
少し落ち着いてから、言いようのない孤独感に襲われます。
「今日で半年か…」
彼は半年前の今日、自らの手で人生にピリオドを打っていました。
彼は私に何も言わずにふいに姿を消してしまった。
半年経っても、彼がした行為や彼の助けになれなかった自分自身を許せません。
あの日から別々の世界を歩くことになり、"彼がもうこの世界にいないこと"を、必死に言い聞かせて、前を向いてきたつもりでした。でも私には、そんな現実を受け入れられるほどの強さはありません。
夢の中で楽しくデートしていても、まるで初めから存在していなかったように、途中で急にいなくなってしまいます。夢の中で名前を呼ばれた日には、現実の世界はひどく虚しいのです。
でも少しずつ気持ちの整理がつき始めているのか、本当に彼が好きだったんだなという感情がよりクリアになった気がしていました。
忘れかけていた恋心とでもいうのでしょうか。
でもそれを丸裸にしてしまうと、風に触れると体の生傷が痛むように、現実という風に吹かれて痛みを伴うのです。
ある日、また彼が夢に出てきました。
デートでしょうか、二人ともお洒落をしています。
向かいの席に座っている彼と、何か楽しい話で盛り上がっています。
しかし、しばらくすると彼が黙り込んで、「もういかなきゃ…」と呟きます。
急に席を立ち、理解が追いついていない私に向かって、軽く手を上げて去っていきます。私は追いかけようとしても体が動かないし、声も出せません。
ただ彼の背中を見つめていることしかできない状況ですが、目が覚めると、また虚しい世界が広がっていました。
夢でした。
窓から見える、朝からひどく曇った空が、彼がいない現実を強く感じさせます。
彼がいなければ、この恋心に意地を張ることもできません。
「私はこの先生きていけるのかな…」
部屋に響く声が、より一層虚しさを掻き立てます。
そして今日もまた、新しい1日が始まります…。
いかがでしたか?
恋心の歌詞を、「彼がいない現実と真正面から向き合った主人公の半年間の物語」として解釈してみました。
最後に
この曲は、割と解釈がしやすかった記憶がありますが、オチを全く考えず、ストーリーを書いていたら、暗い話になってしまいました。ただ、主人公はまだ立ち直ってはいませんが、きっとこの先、新しい一歩を踏み出せる日が来ると僕は思っています。
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
2023.1.15
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