【コラム】日本の工芸意匠家_光琳と富本憲吉【7月3日開催近代陶芸/近代陶芸PartⅡ/古美術オークション】
こんにちは。
梅雨に入り、蒸し暑さが増してきましたね。何かとすっきりしない日々は続くかと思いますが、ぜひ一時の心の清涼剤として、今週末に開催されます「近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡオークション」をお楽しみください。また、緊急事態宣言は取り下げられておりますが、オークション・下見会ともに新型コロナウイルスの感染予防対策を行いながら実施してまいりますので、何卒ご協力のほどお願い致します。詳細はこちらをご覧ください。
新型コロナウイルス感染予防対策について
まずは近代陶芸オークションより、こちらをご紹介します。
LOT.215 富本憲吉
《金銀彩・四辯花飾筥》
H11.5×W14.5cm
1960(昭和35)年、1961(昭和36)年作
高台内に描き銘「富」(二つ)
共箱
「富本憲吉作陶五十年記念展」出品 日本橋高島屋 / 1961(昭和36)年
落札予想価格:1,000万円~1,500万円
富本憲吉(とみもと けんきち)【1886-1963(明治19-昭和38)】は、陶芸界を近代化へと導き、後進へ多大なる影響を与えた陶芸作家です。地場産業としての陶芸ではなく、楽焼からはじまり、土焼、白磁、染付、色絵磁器、金銀彩と技法を様々に変化させ、それぞれに見合った作品を生み出しました。とりわけ1921年(大正10)頃に、絵付けを施した平らな陶の制作に成功し「陶板(とうばん)」と命名したことで知られています。以降、多くの作家が陶板を制作するに至りました。また、独自の模様を多く創り出した図案意匠家としての面も持ち合わせており、西洋化する日本の生活の中でインテリアとしての陶芸作品の可能性を広げました。
本作は、鑑賞用陶器として創造された「飾筥」(かざりばこ)で、富本が得意とした形のひとつです。なかでもこの配色は珍しく、渋めの銀地と、赤く描いた輪郭線の上から金彩でなぞる富本の編み出した「カキオコシ」という技法を駆使し、富本の代表的な模様である「四辯花(しべんか)文」と「幾何学文」で構成されています。晩年の傑作・金銀彩を施した絢爛豪華な存在感を放つ飾筥をぜひご覧ください。
今回古美術オークションでは名立たる人物の作品が多く出品されます。良寛、宮本武蔵、長次郎、藤原俊成などなど。その中でも琳派の代表的な作家・光琳の「水辺芦撫子図団扇」をご紹介いたします。
LOT.160 光琳
《水辺芦撫子図団扇》
23.3×22.3cm(129.6×44.7cm)
紙本 軸装
萬野美術館旧蔵
「開館四十周年特別企画 萬野コレクションの名品一挙公開 琳派と茶道具」出品 サントリー美術館 / 平成13(2001)年
『栗山家愛藏品入札目録』掲載 三八 東京美術倶楽部 / 昭和10(1935)年
落札予想価格:1,500万円~2,500万円
光琳(こうりん)【万治一-享保一(1658-1716)】は、江戸中期に活躍した画家・工芸意匠家です。弟の乾山も、芸術性の高い陶器を創り出したことで知られています。光琳は、やまと絵の伝統を踏まえた革新的な装飾芸術を完成させ、《風神雷神図屏風》(重要文化財、東京国立博物館蔵)など、日本美術を代表する名作の数々を残しました。
本作は団扇図を描いた幅で、画面をS字の曲線で上下に分け、銀彩を施したと思われる上部には水辺に群生する芦、金彩を施した下部には可憐な撫子の花を描いています。特に、芦に見られるみずみずしい緑青とリズムに富んだ直線的な表現、水辺に表された光琳波(こうりんなみ)と称される流水文は、代表作《燕子花図屏風》(国宝、根津美術館蔵)や《紅白梅図屏風》(国宝、MOA美術館蔵)を想起させ、光琳の洗練されたデザイン力が存分に発揮された作と言えるでしょう。
日本の美術史上でも、偉業を成し遂げた名工達の作品をぜひお楽しみください。
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なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。
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執筆者:E