令和臨調記者会見を拝聴しての雑感
今般の政治スキャンダルについて、令和臨調による記者会見を面白く拝聴した。以下から視聴できる(https://www.youtube.com/watch?v=gWnx341YSJg)
①まず政治資金の公開性上昇と厳罰化を直ちに実行に移すのは「基本的に」反対である。規制する前に、議員たちが政治資金を何に使っているかを解明するのがより合理的な政治資金規正立法のためには望ましい。そのためには、独立調査委員会を設置し、匿名での聞き取り調査を行い、その結果については、数年後(少なくとも次回選挙後)の公表とすべきであろう。当事者の規制と処罰と、問題の全体像の解明は、ふつうトレードオフの関係にあることを認識しなければならない。政治制度改革においては、拙速は慎むべきである。
②政党ガバナンスについて。政党(自民党)内での議論を公開していくことには基本的に賛成である。詳細な議事録の作成を義務付けるべきであろう。ただし、議事録の公開は、これも数年後(あるいは選挙後)とする。直近の政争の具にされる場合、率直な議論は期待できないからである。これらの条件がクリアされれば、党内での議論の議事録作成と公開は、優れた政治家の発掘と育成に資するだろう。
③政治とカネの問題は、根治できないと明確に言うべきである。政治の結果が社会内の資源分配に絶大な影響を及ぼす以上、カネの影響力を完全に排除できるかのように述べるのはユートピア思想である。一般有権者の政治に対する信頼を失墜させる。期待値を下げなければならない。
公開/秘密の範囲と時期の設定は、制度のデザインを考える上で大きなポイントであるが、現代政治学では議論がほとんどなされていない論点である(モンテスキュー『法の精神』などでは論じられていたし、アメリカ合衆国憲法制定会議は匿名で議論された。政治的叡智の発揮であると言うべきであろう)。
私の知る限り、この問題を正面から論じたのはこの本である。大変、参考になる(https://amazon.com/Secrecy-Publicity-Votes-Debates-Elster/dp/1107083362…)。