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マイ年間ベストアルバム2023

はじめに

2024年も1月過ぎましたが、まだまだ2023年は語れます。
いち音楽リスナーがその年聴いて良かった音楽アルバムを頭捻りながらランク付けする、私の少し滑稽な様子をお披露目する年間行事でございます。
今回のランク付けは、いったんレビュー文を書いてみて、気持ちのノリ具合からランキングを出すようにしました。
軸は大きく2点。「2023年とは?」と「いっぱい聴いた?」です。
では10位からどうぞ。

10位~1位

10位:OGRE YOU ASSHOLE 「家の外」

 会社の先輩から、『今のOGRE YOU ASSHOLEのライブはヤバイぞ』と言われたので梅田Shangri-Laまで見に行ったのが3月。その通りだった。人力テクノ?こんなんだったっけ?でもめっちゃクセになるぞ!?とばかり。帰りに物販でCDを買い、家で大音量で聴いた。おお、良いぞ!EP自体は4曲だが、全体で1曲となるようなシームレスな構成。1曲目「待ち時間」のブザー音やギターの刻み、ベースとは思えないような音から始まり…。シュールレアリスムな音、歌詞、ジャケット。家の外とか妙に耳に残るし。完全に新境地。早く次のEPもしくはアルバムが聴きたいよ。

9位:nobonoko「Music For Animal Cafés」

 2000年台のニンテンドーゲームを思い出す、打ち込みインスト曲集。起動音のような1曲目から始まり、聴いているだけで街や草原、ショップなどのステージBGMが情景として浮かぶ。往年のゲーム音楽へのリスペクト、ジャズやミュージカル音楽の要素はもちろん、音の選び方も秀逸だ。
 アルバムジャケットの可愛さでかなり順位を上げてます。デザインもアルバムの魅力の一つ。

8位:家主「石のような自由」

 アルバム発売前から「きかいにおまかせ」を聴きまくった。最後の2文の詩は強く印象に残る。家主の新たなアンセムだと思う。
 元ネタまで特定できないけど、60〜70'sテイストがふんだんに出た今作。全体的に朗らかなインディーロック感ある。M3のような家主には珍しいシンセロック調に驚いたり。他の曲も何かにオマージュ元がありそう。ラスト曲はライブでアレンジされて変化しそう。
 前作までと比べはっきりとリアリスティックにポジティブ、自己啓発アルバム。星野源の詩を思い出す。でも流石にずっと同じ主題だと後半だるくなってくる。あと3曲目があまり好みじゃない(浮いてる)。
 そこを差し引いても、共感性の高い"生活の礎"になりそうな曲が並ぶ。君も君を責めるのやめな?

7位:paionia「PRODUCT」

 世知辛い…。1曲目のイントロからず~んってなる。バッドエンドのED曲。うつむきながら溜息交じりに読みそうになる歌詞。その容赦ない内省と諦観が響き渡る。でもアルバムの最後では、その中に「君」という存在と共に、希望的な観測と前向きな気持ちが表れた「わすれもの」であるのは印象的。あの曲がアルバムを上手く締めている。1曲1曲が重いからトータルで短いのも助かる。
 前作よりは”邦楽ロック”を意識した、マス層に届きやすい曲が多かったかなと。自分のような、なんだかんだベタが好きな人間にとっては凄くど真ん中に来た。ギターロックとして好き。もっと聴かれて欲しいが…。

6位:長瀬有花「Launchvox」

 2023年は20曲以上をリリースした長瀬有花のミニアルバム。出す曲出す曲期待を越えてくる、完全に長瀬ワールドが仕上がり切った状態で、長瀬本人の持ちうる、ゆるいながらもエッジの効いた世界観も、そこにコミットするクリエイターも100%の仕上がりで成り立っている。打ち込み系ベースに様々なジャンルを横断的に取り入れながらオリジナリティに昇華する、まさにポップスの理想的なやり方。全部いいけど特に「ブランクルームは夢の中」「砂漠の水」「宇宙遊泳」がベスト。すげえ。
 ただミニアルバムなのが物足りないことと、私個人がライブで先に聴いており、そこでのアレンジの方が好みだったのもあってちょっとマイナスしてます。本当はライブアルバム「Yuka Nagase LIVE “Eureka”」をランクインさせたかったけど、流石に非売品(ライブチケットの特典)なので渋々こちらに。2024年以降の活動も楽しみ!

5位:Midnight Grand Orchestra 「Starpeggio」

 前作からの化けようがすごい。あれはプロローグで今作からが1作目といえるだろう。
 イノタクの作曲編曲センス、そこに星街すいせいの作詞・ボーカル能力の生み出すシナジー効果が最大級となり、莫大なエネルギーを生み出している。1曲1曲の凝り具合がガチ。持ちうるアイデアを全部詰めてやろうという気迫がある音の凝縮具合である。そこに食い入るすいせい氏のアグレッシブなエネルギーで、そのまま宇宙へ。
 そのなかでも特筆すべきは「Midnight Mission」と「夜を待つよ」。特に「夜を待つよ」はそのポップな楽曲とは裏腹に、「〇人鬼を頭に浮かべて歌った」という終始復讐の時を待っているようなヒリヒリする楽曲で、アルバム中では一番好き。
 ミドグラが星街すいせいソロとは違うベクトルで、もっと面白い音楽の世界を見せてくれることを期待しています。

4位:Fiddlehead「Death Is Nothing to Us」

 やっぱ私、ポストハードコアが好きだわ。そう気づけたアルバム。一度聞いてからというものの、まあヘビロテしましたね。1曲目のThe Deathlifeから一発でポストハードコアの体にさせられる。それだけどもう十分4位です。詳しいことは分かりません。
 アルバムツアーのライブ映像がYouTubeに上がっていて、その盛り上がり用に観ている側も興奮してきて部屋の中で一人ノリノリになり熱くなっていた。なぜ来日公演逃したのか…。

3位:The Japanese House「In the End It Always Does」

 シンプルにインディーポップとして聴きやすく、シングルリリース曲を筆頭にヘビロテした。リラックスにはリズムが必要。打ち込みと生音が半々くらいに、ピアノから始まり徐々に伴奏や管楽器が増えていく盛り上ががっていくいい塩梅。
 国内盤CDについている日本語訳を読むと「別れ」や「苦悩」がメインで綴られていて、その気持ちを抱擁するように音楽がマッチしている。聴くたびに身に沁みてゆく秀作。

2位:スピッツ「ひみつスタジオ」

 名作、ではないかもしれないがホームラン級の良作である。私にとってのスピッツは幼いころから親しんできた”ポップス”であり、その立場からすれば今作は「待ってました!」という気持ちでいっぱいになった。スピッツ自身が年を経ていっても等身大を保ちながら大衆向けかつ音楽ファンも楽しませる構成は流石。”おじさんロック”でもありながら”若さ”も無理なく内包してる。そのうえで、21世紀以降のスピッツとしては抜群にポップスの出来が良い。やっぱコロナ禍で制作期間が長かったからなのかな。優しさや前向きさを感じる歌詞やメロディがストレートに染みていく。最初はふ~んレベルだった「手毬」や「Sandie」、「讃歌」が時間差で刺さってきたりね。あ~これだ、これが欲しかった。スピッツ、ありがとう。
 コナンのおかげもあってサブスクでもかなり聴かれているらしく、スピッツに良い波が来ているな~と。ファンクラブにも入ったし近いうちにライブ行きたいが一層難しそう。
追記:表紙と裏表紙のロボットかわいい。人間と機械、まさに2023年。

1位:ピノキオピー「META」

 「メタ思考」が覇権を握る2020年代前半を言い表したようなアルバム。
 2021年の「神っぽいな」以降、「魔法少女とチョコレゐト」「転生林檎」「匿名M」の大ヒットを生みだし、その集大成としてのアルバム「META」。結果としてこの3年間の”種明かし”であり、時代をリアルタイムに解釈し”次”を提示したアルバムとなった。
1曲目の「神っぽいな」では、世の中に対してメタ視点で皮肉を飛ばすピエロになりつつ、そんなメタ思考でしかモノを観れなくなった自分自身を憂いて終わる(バズってるものへの批判の歌ではない)。もうベタに楽しめていた頃には戻れない自分。思えばバラエティでもYouTubeやSNSでも、ベタなものに対して俯瞰で物言いをする態度やコンテンツが溢れかえる中、そこに対しても俯瞰で風刺する態度からこのアルバムが始まる。
 2曲目からは「魔法少女」「転生」などをモチーフに人生や世間を主題にした曲や「エゴイスト」「甘噛みでおねがい」のような内省的かつポップな曲を経て、終盤「匿名M」によって”メタ視点”の極北へ到達する。初音ミク視点となりインタビュー視点で元も子もない事を言い「あなたはどう?」と問いかける。
 そして最後の曲は「META」。このアルバムでのコンセプトやメッセージがすべて詰まっている(歌詞)。多種多様なメタ思考へ潜りながら推敲を繰り返し、残った気持ちは何か?逆張りや模索を経てたどり着くのは何処か?「メタを超えて」いく強い意志とエネルギーがラストで提示される。人生や社会をテーマに曲を発表し続けてきたピノキオピーの、一つの区切りのような曲であり、アルバムとなっただろう。
 とまあ小難しい事ばかりでもない。途中の「コスモスパイス」「ちきゅう大爆発」みたいな弾けて可愛い曲が上手くアクセントになってる。曲としても、前作に比べますますそぎ落とされたエレクトロポップになってきており、トータルの聴き心地が良い。
 時代を代表するヒット曲で時代を切り取り、メッセージを真っ向から提示する。アーティストとしても最高の集大成であり、ファンとしては神っぽいな以降のヒット連発でもブレずに続けてくれた心強さを感じたアルバムだった。
P.S. やっぱりピノキオピー 曲はどこか仏教だな。

おわりに

 この記事を書く上で、2023年を思い返したりアルバムを聴き直せば、色々心を"ざわつかせる"ような出来事や作品が多かったかなと思いました。その中でも2023年を一番言い表していると感じたアルバムを1位にしました。結構しっくり来てます。こうして考える過程が一番楽しいですね。
 さいごに、Apple Music と Spotify のリンクを載せます。1位~36位をアルバムから1曲ずつ選んでいます。


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