Date 20??.10.7
Place 魔術劇場
ショーに出る前、この国でトップの起業家であり投資家が、私に一本のひかる小さな棒を買ってくれた。
彼は、
「君は、今これが欲しいのだろう」
「たかだか数千円の光る棒を」
「今この瞬間に、しかしここでそれに気がつき君に差し出せるのはどうやら私ししかいない。」
「私の口座にはいくら入っていると思う?」
「数千億?」と私はいう。
「数字はもはや問題にならないのだよ」
「で、私は君に提案するが、この数千円のひかる棒の代わりに、普通だ
短編小説「森の夢」
Date 2023.10.6
Place Japan
その場所は山を二つ、崖を三つ越えたところにあった。
その日、彼は年代物の山岳グッズを先輩から譲ってもらったことをきっかけに、久しく帰っていなかった祖父と祖母の家に行こうと思い立ったのだった。
前に行った時のことを思い出すと、かなり昔のことに感じられた。成人してから、実家を離れて海外赴任もありながら働いていたので、なかなかいく機会がなかったのだ。
実家の両親から、祖父母のことは時折きいていたし、両親が訪れると写真を送って