MTG美顔ローラー事件

注目の特許訴訟が、ようやく確定しました(トップ画像は筋膜リリースローラー)。

認容額が4億4千万円と金額自体大きいことは言わずもがなですが、知財高判の大合議で審理がされたこと、第一審判決認容額の約1億円から大きく増額されたこともあり大きな注目を集めました。
文言の解釈、事実の認定ともに気になったので対照表に整理しました。

対照表(損害論全体)

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対照表(限界利益)

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概観
- 控訴審は大合議で審理されたこともあり、解釈論が大きく展開されています。
- 第一審では3億円だった請求額が5億円に増額されることによって認容額のキャップが外れたことが、認容額増額の遠因ともいえそうです。
- 控訴審は、寄与度(当該特許が製品の販売に寄与する度合い)を考慮するべき規定や根拠はない、と示していますが、寄与度に近いもの(「覆滅がされる程度」)は考慮しており、判断要素は第一審とほぼ同様にみえます。そうすると、認容額がほぼ4倍になったのは、端的には、寄与度(控訴審「覆滅がされる程度」)10%が40%に評価されたためといえそう(マスキングになっている箇所が多く詳細は不明)。
- より詳細には、本件特徴部分(侵害に関する特許技術である、軸受け部材と回転体の内周面の形状)が構造上目に触れないことや代替技術が存在することについて、第一審は、寄与率を当該特許が製品の販売に寄与する度合いと理解したうえで、これらの事情を考慮して被告製品の販売に特許があまり貢献していないと判断しているのに対し、控訴審は、これらの事情を「覆滅がされる程度」では考慮せず、「販売することができないとする事情」として考慮、そのうえ、これらの事情は、被告製品及びMTG製品のいずれにも当てはまるので、両製品に与える顧客誘引力に差はないとしています。結果、控訴審はこれらの事情を減額要素としていません。

第一審、控訴審の判決文は以下から閲覧できます。

〇控訴審

〇第一審


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