ネコとサカナとオヤジとモグラ

朗読劇台本「ネコとサカナとオヤジとモグラ」

 
語り
ここは、とある漁港の海鮮市場。今日もとれたてのお魚たちを、うみんちゅの平良さんが売りさばいています。
 
オヤジ
さぁ〜安いよ安いよ!このまえ全国放送で一位とった糸満のマグロ!それからハタチみたいなサメ肌のミーバイ!ピッチピチだよー!安いよー!
 
マグロ
ピーッチピチピチィー!おいらはマグロだよ!ピチピチだよー!ピチピチピチピチー!
 
ミーバイ
おいらはミーバイだよー!ピチピチー!
 
語り
そこへ、お腹を空かせたノラネコの兄弟が通りかかりました。
 
ノラネコネコ
あんちゃ〜ん!お魚がいっぱい並んでるにゃ〜ん!
 
ノラネコアニキ
よし、俺があのマグロをとってきてやるにゃ〜ん!おまえ、ちょっとそこで阿波踊り踊ってあのオヤジの注意を引けにゃ〜ん!
 
ノラネコネコ
わかったにゃ〜ん!…それ!東京都高円寺で身につけた阿波踊りにゃ〜ん!これを見て萌え死ぬがいいにゃ〜!
 
オヤジ
ぅおッ?こ…これは…!コネコが阿波踊りを踊ってやがる!阿波踊りは30年前徳島でみたきりだが、こうしてネコが踊ると乙だねぇ〜!
 
語り
コネコの踊る阿波踊りに市場のオヤジは釘づけになっている隙に…
 
ノラネコアニキ
やったにゃ〜!某番組で日本一にノミネートされた糸満のマグロいただきにゃ〜ん!
 
マグロ
ひゃあぁ〜!ピチピチピチピチィー!
 
語り
マグロはノラネコのアニキにくわえられて持っていかれました。
 
ノラネコネコ
さすがアニキにゃ〜ん!尊敬だにゃ〜!
 
ノラネコアニキ
よし、今度はお前がやってみろにゃ〜!俺が津軽じょんがら節を歌ってあのオヤジの注意をひくから、その隙にお前はミーバイをくすねてこいにゃ〜ん!
 
ノラネコネコ
わかったにゃ〜ん!
 
ノラネコアニキ
にゃにゃにゃにゃ〜にゃにゃ〜〜♫にゃ〜♫
 
語り
ノラネコアニキは津軽じょんがら節を歌いました。
 
オヤジ
ぅお〜?こっ…こいつは…猫が…津軽じょんがら節を歌ってやがるぜ!相変わらず津軽じょんがら節ってのは、全くもって青森なのか新潟なのかどうにもわかんねぇなぁ!
 
語り
オヤジがノラネコアニキの津軽じょんがら節に気をとられてる内に、コネコは抜き足差し足、ミーバイへ近づいていきます。
 
ノラネコネコ
へっへっへ…ミーバイちゃ〜んv もうすぐおいらのモノだにゃ〜んv
 
ミーバイ
ッ?ピ…ビチビチビチビチーー!きゃああああああああー!オヤジー!助けてー!コネコがアタシをぉー!狙ってるぅー!
 
オヤジ
何?…!コラ!こんのノラネコ!オラが津軽じょんがら節に気をとられてる間にミーバイを盗もうなんて2000年早いだど!ネバーエンドだど!シ!シ!
 
ノラネコネコ
ふぎゃぁ!
 
語り
コネコはオヤジに追い払われてしまいました。
 
ノラネコネコ
な…何故だにゃ〜ん…何故オイラにはできないにゃ〜ん…
 
語り
自暴自棄になったコネコは、畑のモグラをとって襲うことにしました。
 
ノラネコネコ
出てこーい!モグラー!どうせオイラには海鮮市場の魚一匹盗むことなんてできないんだ!それなら一生畑のモグラとかハブとか襲って食べてやるにゃ〜ん!
 
語り
コネコは畑の土の中から一匹のモグラを掘り返しました。
 
モグラ
ひ…ひぃいー!ど…どうかお助けぇ〜!食べないで〜!
 
ノラネコネコ
うるさいにゃ〜ん!モグラ…これからお前のハラワタかっさばいて大腸とか小腸とか引きずり出してムシャムシャ食ってやるにゃ〜ん!
 
モグラ
ひぃいー!
 
語り
その時です。
 
サナダムシ
ま…待ってください!
 
ノラネコネコ
…?誰にゃん?
 
サナダムシ
わ…私はモグラの小腸の中に住んでいるサナダムシです。
 
ノラネコネコ
なんと!サナダムシにゃん?
 
語り
なんと、モグラの小腸の中にはサナダムシが入っていたのです。こうなっては、いくら生きるためとはいえ、むやみに小さな生き物の命を殺めてしまうわけにもいきません。
 
ノラネコネコ
チクショウ…こうなったら、オイラも津軽じょんがら節を極めてアニキを超えるしかないみたいだにゃ〜ん!頑張るにゃ〜ん!
 
ノラネコアニキ
頑張れ!
 
マグロ
頑張れー!
 
語り
こうしてコネコは、ノラネコアニキを超えるため、東北の津軽じょんがら節と東京都高円寺の阿波踊りの伝承と貢献に勤める道を歩んでいったということです。

(2015)

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