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「目撃」の広がりが、社会の空気をつくっていく。この「目撃」のパワーを信じたい。 #BlackLivesMatter とフェスの未来

これまで何度も社会問題として取り上げられてきた #BlackLivesMatter が、かつて無いほど大きなムーブメントになっている。この問題については勉強中で、その問題を語れないけども、意思ははっきりしている。

#BlackLivesMatter だし、なぜこんな現実があるのか、学びと同時に、社会が動くための行動を起こしていかなくてはいけない。

大事なことは「わからないから黙る」ことでも「わからないけど声をあげる」ことでもなく「わからないこと学び、自分で考え、その考えを表明する」こと。「間違えていたら謝って修正する」こと。なのではないか、と最近は考えている。

僕がいろいろ読む中で勉強になったのは、以下。ぜひ読んでほしい


たくさんの目撃が広がった #BlackLivesMatter

#BlackLivesMatter のニュースを見ている、たくさんの「目撃」された証拠がSNSでシェアされていることがわかる。多くの人がスマートフォンという高性能カメラを持っていて、すぐに起動できる。

今回の #BlackLivesMatter のきっかけとなったジョージ・フロイドさん殺害の現場はもちろん、冷静だけど大きな怒りを表現するデモ参加者の映像、暴徒化する白人を止めようとする黒人女性の映像、黒人を抑え込んでいるスキにその地面に薬物かなにかを置き罪を偽装しようとした警官、暴徒と同じく店から何かを強奪する警官…。

誰かの目撃が、記録され、シェアされていく。いろんな人の目撃が広がっていくことで、少しずつ問題の全体像が見えてくる。黒人差別を許してはならない。もう何度も何度も言われてきたことだけども、今、かつて無いほどの大きな声になっているのは、信じがたい現実を多くの人が、SNSを通じて目撃し、擬似的に体験していることが関わっているのではないだろうか。(もちろん、コロナの感染拡大による不景気の影響も大きいと思うけど)

今、「目撃」の広がりが、社会の空気をつくっていく。この「目撃」のパワーを信じたい。

挑戦を目撃する、その挑戦を広める

僕にフェスの仕事、編集の仕事のいろはを叩き込んでくれたアースガーデン。かれこれ10年間くらいお手伝いしているのだけども、あらゆるフェスがなくなった今、コロナの影響は甚大だ。

ただ、アースガーデンでは現状をどうにか打破したいと、挑戦を続けている。

先日配信した「多摩あきがわ #ライブアットホーム vol.2」では「少人数ながら観客をいれる」ことに挑戦した。人数にすればわずか15人ほどだが、音楽関係者や、地域の人を招待し、彼らが「観客を入れたライブ」を目撃した。この観客を入れた野外ライブは、生配信やアーカイブを通じて、観客以外の多くの人が目撃している。

大事なのは「参加者を入れたイベントがこうやってできる」んだと「やってみる」こと。そして「できた事実を『目撃』した人がいる」こと。

政府の発表によれば、5/30現在、6月18日までは「屋内であれば100人以下、かつ収容定員の半分程度以内の参加人数にすること」「屋外であれば200人以下、かつ人と人との距離を十分に確保できること(できるだけ2m)」が目安となっている。今後、いくつかのステップを経て、人数制限は少しずつ解除されていくとされている。

少しづつではありますが、イベントの制限が解除されているわけだ。

フェスやライブがこれからもあり続けるために、イベントの主催者は、細心の注意を払いながら、少しずつ参加者をいれたライブを再開していく挑戦と勇気が必要なのだと思う。また、観客のみなさんには、その挑戦と勇気を目撃し、広める役割がある。

参加者を入れたイベントへ挑戦する、その挑戦を目撃する。この2つが少しずつ循環していくことで、社会に「イベントやっても大丈夫なんじゃない?」という空気が醸成されていく。科学的根拠とともに、イベントへの安心が広まっていくことが大切ではないだろうか。

こういった挑戦の先に、フェスティバル再開の可能性も待っているはず。

「野外ライブ配信」から「小さな野外フェス + 配信」の挑戦

アースガーデンでは「野外ライブ配信」企画から「野外フェス + 配信」のハイブリッドへの挑戦をしている。

多摩あきがわ #ライブフォレスト vol.01
日程:2020年6月14日(日)
時間:Open17:30 LiveStart18:00 Close 20:20 (予定)
場所:多摩あきがわ ライブフォレスト@深澤渓 自然人村 内
(〒190-0172 東京都あきる野市深沢198)
東京都心から車で60分、JR武蔵五日市駅から徒歩20分
料金:会場入場チケット:4000円 /ライブ配信チケット:2000円
主催:アースガーデン

前回は親しい人を招待しただけだけど、いよいよ公に観客を募る。もちろん、人数制限や空間の使い方には細心の注意を払う。

批判があるかもしれない。観客は来ないかもしれない。しかし、重ねてなるけれど、少しずつ壁を取り除いていく挑戦こそに意味がある。

配信も有料化する。過去2回は無料だったけども、経費は確実にかかっています。前回は寄付もいただいたけど、このままでは継続することができない。

ステージやスピーカーは地面からにょきにょき生えてくるわけではない。誰かがステージの部材を管理し続け、会場まで運び、建てて、撤去している。もちろん、アーティストのみなさんをお呼びするための予算も必要。観客のみなさんの意識も変わってもらわないといけない。

過去にアースガーデンで収録させてもらった「オオヤユウスケ(Polaris)×勝井祐二」の対談では、こんな話があった。

勝井 野外フェスには豊かな自然が欠かせません。でも、会場を特別にするのはみんなのフェスを作ろうとする意志だと思います。スタッフさんが準備をして、お客さんが集まる。みんながフェスを作って楽しもうとする意思を持ち寄るから、そこにしか生まれないグルーヴがある。

オオヤ 人が集まることに意味がありますよね。ライブを見たり、お客さん同士で話をしたり、トークを聞いたり。キャンプをして、料理を作って。

勝井 それぞれがやれることを持ち寄って参加するという感覚はありますよね。我々はたまたま音楽ができるというだけで、もしかしたらお客さんと変わらないのかもしれない。


音楽家はハーモニーやグルーヴを、登壇者は新しい価値観を、出店者は衣食住を、お客さんは参加や購入を。それぞれの価値が交換され、小さな経済がグルグルと回る。

その場をつくることに関わる、僕ら制作スタッフ、音響スタッフ、テントや会場設備の施工スタッフ、会場のオーナーさんの経済も回っている。

参加者もアーティストも、関わる人みんなが自分のできることを持ち寄る場。みんなで野外で楽しむ文化を守っていきたい。今、なんとしても生き残り、その文化を残し、発展させていかねばならない。そのためには、配信であったとしてもお金を払って参加することも当たり前にならないといけないと思う。

地域と配信の相乗関係

世界の絶景にサウンドシステムを持ち込み、DJやライヴの配信・アーカイヴを展開してきた「Cercle」をご存知だろうか。

https://youtu.be/XHNHq1mC0VQ

ファットボーイ・スリム、カール・コックス、ニーナ・クラヴィッツ、ボリス・ブレッチャなど世界に名を馳せるDJが出演するCercleのショーは、開催直前にFacebookで告知される。それに気づき、枚数の少ないチケットを手に入れた幸運なファンだけがショーに参加できる。
 
ただ、そのプレイはFacebook Liveで生配信され、リアルタイムで数千人が動画を楽しむ。アーカイヴ動画はYouTubeにアップロードされ、再生回数が100万回を超える動画も存在する。

ちなみに、この記事、書きました↑

主催者のデレク・バルボラさんによれば、Cercleは、開催場所との相乗関係を生み出している。

ぼくたちの収入のほとんどは、ショーのチケット代とバーの売上だよ。それらを合わせて収入全体の80パーセントを占めている。このプロジェクトは大きな観光効果があるから、ロケーションを管理している組織や公的機関からのサポートを受ける場合もある。

1,000人から2,000人が参加するショーであれば、チケット代とバーの売上だけで成立するけれど、Cercleの動画を観てもらえばわかるように、観客を入れない場合もある。そんなときは、文化省や観光庁に支援してもらう。YouTubeからの広告収入は、実は金額で言えば大したことないんだ。

──Cercleのショーは、観光にもポジティヴな影響を与えていると思いますか? 

もちろん。とてもいいインパクトを与えていると思う。フランスでは博物館や城を訪れる若者は減っている。けれども、ぼくらのショーの配信やアーカイヴを通じて、その場所に若者も足を運びたくなると思うんだ。

過去にショーを開いたある城では、「ここでCercleが開催されたんです」と、観光ガイドが紹介してくれたりもする。もはやその場所の歴史の一部になっているってことだよね。


2016年から始まったCercleには、withコロナ時代のイベントのあり方のひとつになるだろう。地域の魅力を発信しつつ、音楽の楽しさを伝える。

アースガーデンの配信イベントでは、タイトルに「多摩あきがわ」と明記し、アースガーデンの拠点のひとつである東京外縁の自然の中から、配信をお届けしてきた。自然の中だからこそ、3密をさけてイベントができるし、音楽とともに自然の気持ちを届けることができる。地域性こそが、withコロナ時代のイベントの解決方法であり、イベントのアイデンティティでもある。

将来的には、Cercleと同様、イベントの名前はそのまま、他の地域から配信を届けていくような可能性も見据えている。こうしたアースガーデンの挑戦、ぜひ参加してほしい。そして目撃して、広めてほしい。

「目撃」の広がりが、社会の空気をつくっていく。この「目撃」のパワーを信じたい。

と、ここまで書いておいてあれだけど、ジョージ・フロイドさんを殺害した警察官は、撮影していることを自覚しているのにやめてないという話もあり、ぐぬ…と思っているのだけど。

とりあえず、Instagramに真っ黒な画像をアップしているだけじゃどうしようもない。募金しよう。ぼくはしました。

日本では「トップダウンで政治が社会を変えるということが信じられすぎている。世界ではボトムアップの社会運動こそが政治を動かしている」という話をしているこちらの新書もぜひ。



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葛原信太郎
将来的に「フェスティバルウェルビーイング」の本を書きたいと思っています。そのために、いろんなフェスに行ってみたい。いろんな音楽に触れてみたい。いろんな本を読みたい。そんな将来に向けての資金にさせていただきます。