須磨浦山上遊園で昭和の音楽に。
私は22歳。最近、Billy Vaughn(ビリーボーン)楽団という15名ほどの合奏団を久々に聴いている。
Billy Vaughnとはそのリーダーの名前で、彼を中心に組んだ楽団。1950年代からアメリカで活躍し、「イージーリスニング」の代表格として、当時を生きた日本の人たちにもよく知られた人物。指揮者でもあり演奏もする何でも屋さんだったようで、調べてみると1991年には癌で亡くなっているが、楽団は現在でも存続しているということだ。
なんの脈略もなさそうだが、なんで聴いているかというと、22歳の私がこの音楽に出会ったのは2年前、関西は神戸、須磨浦山上遊園という郊外の遊園地(?)へ大学の友人たちと行ったときである。
須磨浦公園は同名の阪神電車の駅前から後ろの山にへばりつくように広がる山上公園で、山の上にいろいろな昭和のアトラクションがある。上に上がるにはケーブルカーや、名物の「カーレーター」を乗り継ぐ必要があるのだが、地上の入り口から、時が止まった空間が待っている。
左に須磨の砂浜や神戸市街、右に明石海峡大橋を見下ろしながらロープーウェイで山の中腹まで上がると、そのカーレーターが待っている。エスカレーターの機械をそのまま転用したかのような構造で、あまりにガタガタ揺れ、軋む音が響く。
全天候型のようで、屋根に覆われている。だからこそ音が響き渡る。10メートルおきぐらいの感覚で、スピーカーから「ようこそ」放送が流れるのだが、そのBGMがこのBilly Vaughn楽団の曲“Look for a Star”だった。開園は1959年、それ以降ずっとこれが使われているのではないか。遊具も時間が止まっている。
曲を聴いて連想されるのはどんな景色だろう。僕らの世代にとっては「昭和だ…」となる人が多そうだ。それも、戦後すぐといった感じか。少なくとも80-90年代の印象ではないはず。。よく言われるシティポップではない。
オリンピック前後の時代の“お出かけ”のイメージが伝わってくるよう。
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と、これで終わりにしてもいいのだが、ひとつ踏み込んでボーナストラック。
1960年にイギリスで作られた映画「Circus Of Horrors」の劇中で歌われるのが原曲だった。まさかホラーとは。せっかくだから近く見ようと思います。
その劇中歌をBilly Vaughnがのちにコピー、そちらの方が特に日本では有名になったということだそうです。元がホラーとは思えないほど、明るく艶やかな曲になっていますよねえ。
ここ最近は家に居っぱなしで、土日も夜を食べながらぼーっとBSをつけて見ていると、しかも旅番組を見ていると、あいだに挟まってくる広告はみんなテレビ通販で、売っているのがムード歌謡のオムニバスCDだったりします。
須磨浦山上遊園で流れていた曲も、きっとその世代の方が特に親しみを持って、昔を懐かしんで聴いているのでしょう。こうやって自分の体験に結びつくと、そう遠い世界の話でもなかったなと気づいたり。
そういう時代感も大切にしたいです。
実はいろいろ現代につながる接点もありそうなんですがちょっと長くなりそうなのでこのへんで。
神戸から阪神・山陽電車に乗って須磨浦公園駅で降りたら目の前。関西圏の方はぜひふらっと行ってみてください。心おだやかになりますよ。