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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

食事記録#7『風が吹くとき』【ネタバレあり】

はじめに

アニメーション映画。1987年、戦争を描いた作品。優しい絵で核爆弾の脅威を生々しく表現する。

以下ネタバレ注意。長くなるので無理せず中断してくださいませ。

あらすじ

退職し余生を過ごす夫とその妻。イギリスの地方で仲睦まじく暮らすふたりに、戦争の足音が近づく。
外したドアを立てかけ、室内シェルターを組み始める夫。戦争経験者のふたりは当時のことを「よかった」と、楽しい思い出のように懐かしみながら、被災の準備を進める。しかし、今回は広島に落ちた核爆弾が使われるかもしれない。夫は警戒心を緩めずにラジオに注意を払っていた。
前触れはなかった。自国にミサイルが発射されたことをラジオが知らせた。あわてて妻と共にシェルターへ飛び込んだ夫。直後、町は閃光と熱に包まれた。
互いの無事を確かめたふたり。どうやらミサイルはこの近辺に落ちたようだった。煤と壊れた家具に溢れた部屋を見て、シェルターから出ようとする妻。放射能があるから出てはいけないと夫に引き留められ、ふたりは狭いシェルターの中、一晩とさらにもう一日も越した。
朝、全身の痛みや頭痛に悩んだ夫婦は、シェルターを出て過ごすことにした。水道も電気もテレビもラジオも機能せず、体調は悪化するばかり。ふたりは救援を待ち、ただリビングで眠った。
翌朝、庭に出ると、灰色の世界が広がっていた。瓦礫の山に、焦げた肉の匂い。明日には救援も来るし、息子には手紙を出そう。庭の木々も春には元通りさ。希望を持つふたりには突然降り始めた雨も、飲み水が蓄えられると喜びの種となった。
しかし、何度日が昇っても救援は来ない。落ちくぼんでゆく眼、底を尽きる貯蓄、拭えない疲労感、吐き気、湿疹。パニックを起こす妻を励まし続ける夫。しかし、状況が悪化し続けていることは誰の目から見ても明らかだった。
その日も、ふたりの体調は最悪だった。妻の髪が抜け落ちる。被曝を避けるために布袋を被るべしという教えを思い出し、重い身体を引きずりながら、ジャガイモの袋を全身に被るふたり。暗いシェルターの寝床へもぐり、妻に促され夫は神に祈り始める。慣れないながらも祝詞を唱えていたその声はやがて途絶えた。「もういいのよ……」妻の声もそして途絶える。

感想

重い。生々しい。テーマは知りつつも、かわいい絵に釣られて見たが、全身を粘質に殴られ続けたような感じ。

生々しい。リアル、現実味があるとも言えるが、その感覚は夫婦の存在から最も感じられたように考える。
夫婦の存在。声優の演技力も含めて、ただどこにでもいそうな長年寄り添った愛情に満ちた夫婦であることが強く意識させられる。兵役や仕事の経験から、政治にも詳しく頼りになる、でもたまに抜けたところや感情的な部分もうかがえる夫。そんな夫を支え続けている妻。平穏な家庭が一瞬にして無残に壊されることに生々しさを感じる。ついでに言うと、ミサイルを告げるラジオ放送もかなり突然のインシデントだった。物語の都合上、来ることは分かっていたけど、それでも突然に感じた。わたしだけかな?

実写を交えたアニメーションにいや~な違和感を憶えさせられる。情景描写(床に散らばる瓦礫がストップモーションで片づけられる)や、時折使用される戦時中の映像とか。すっごく嫌だ。生々しい。とか思い始めると、普通の綺麗なアニメーション、かわいい絵柄にも気持ち悪さを見出し始めて、もう疲弊し吐き気に苦しむ夫婦と同じような気分になってくる。

仲睦まじいふたりの姿は本当にかわいかった。本当に。もちろん核が落ちる前の話ね。
そう思うと、ふたりはシェルターに籠らずに、爆発と共に死んでしまった方がよかったのではないかと思わざるを得ない。そんなことはないと思うんだけど。特に本人たちは一切思ってないと思う。いや、そう思ってしまうのも鑑賞者の傲慢か?そうであってほしいというような。

機会を見つけて原作も読む。

蛇足

脱線したのでこちらへ。
今回に限らず「戦争の話」を聞くと、閉め出されたような気持ちになる。これでわたしがどのように感じようが当事者の気持ちは全く分からないということ。戦争に絞らずともどの作品にも言えることだろう。痛みは自分だけのものということ。『葬式列車』いいよね。

歴史に疎いから、そこら辺の話が出てくるときは少し意識がそれてしまったけれど、いい時間を過ごせた。

戦争テーマの作品体験すると毎度思うけど、『明日の神話』いいよね。他には絶対にないパワーを感じられる。

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