食事記録#2『わたしたちに許された特別な時間の終わり』
ネタバレはしないように。
作者は岡田利規「三月の5日間」と「わたしの場所の複数」の二篇が収録された薄い文庫本。
移動中にサクッと読みきれそうと入手したけれど、内容は慣れてないと苦労しそうな感じ。おもしろいよ。
「三月の5日間」
飲んだくれた六人が六本木のライブハウスに入る。そこで遭遇した「パフォーマンス」。そして、男の一人が知り合った女とラブホテルへ。二人はあるシナリオを迎えるために、五日間のセックスと対話を繰り返す生活を始める。
段落なくびっしり見開き埋まってるようなページは苦労した。語り手の変化や、時間軸の移動が面白かった。後半の女と男がホテルへ向かう道中の仕草や、着いてからの二人の雰囲気がめちゃくちゃ好き。ラブホテルの五日間に至るまでのメインではない物語の流れもよき。
テーマがすごく好き。
「わたしの場所の複数」
バイトをサボって布団で寝転がる女。昨日読んだコールセンターの愚痴ブログ。バイトの合間に仮眠する夫。布団から動かない女を中心に、フリーター夫婦の限界な関係と、どうしようもないわたしが語られる。
読み進めて行くうちに、これ女は最後まで布団から起き上がらないし、部屋の中では何も変化しないんだな。全て回想や現在の女の物語は何も起こらないという予感させられる小説。
語り手の視点や時間軸の不安定さによる不快感が心地良い。最後まで読んでよかった。
「わたしたちに許された特別な時間の終わり」というタイトルの意味がしっかり存在していて、読者によって感じ方、捉え方が変わりそう。