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ビール醸造で利益率を上げるためにやるべき10のこと

 こんにちは、ビール醸造家のしん太です。

 最近、クラフトビールの新しい醸造所(ブルワリー)が増えてビール業界に活気がでてきましたね!

と思っていたところにコロナの大打撃。外飲み需要の低迷はビール業界にも大きなダメージを与えています。

 自分が好きなブルワリーに潰れて欲しくない!好きなビールが無くなるなんて嫌だ!とお思いになる方も多いことでしょう。私もその一人です。

 そこで、私の経験からビール醸造において利益率を上げるための10の作戦をまとめてみました。一部ビール醸造に特有の内容もありますが、多くはものづくり全般に当てはまる利益率改善策です。①~⑩のどれかが誰かの参考になれば幸いです。

①ビールを移送するときのロス低減

 ビールロスの低減、これは効果大です。
例えば発酵タンクから熟成タンクにビールを移すときにホースを通してビールを移送しますが、ホースは事前に湯を通して殺菌し、その後水を通して温度を下げておくことが多いです。水が入ったホースにはビールを通すとき、はじめは水とビールが混じる区分があるのでその区分は熟成タンクにいれずに廃棄(ブロー)することがあります。
小さな醸造所ではこの際のビールの切り替わりを目視と官能検査に任せていることがあるますが、心理的に水からビールへの切り替えを確実にするために、多めにビールをブローしがちです。

 このようにビールをブローする必要のある時には感覚ではなく○Lブロー、のように数値基準をつくることで過剰なロスを防ぐことができます。

 ビール造りには同様に一部の区分をブローする工程がありますが、そういった箇所をひとつひとつ丁寧に確認し、必要最低限のビールロスにすることで大きな効果が生まれます。

②湯の製造温度と製造量の適正化

 エネルギー使用量のなかでやはり蒸気、また蒸気からつくる湯は大きなコストです。必要以上に高温の湯を沸かさないこと、また一度作った湯を放置しても放熱ロスになるだけですので使用タイミングと合わせることが重要です。

 どの工程でどのくらいの量の蒸気や湯を使用するか、手間ですがリストにしておくこともよいですね。使用量の適正化の参考にできますし、さらなる省エネをすすめるための基礎データにもなります。

③洗浄剤などの相見積もり

 常に今より良いものがないかアンテナを張ること、またその姿勢を商社やメーカーさんに示すことで、より良いものがあれば紹介してもらえます。相見積もりは手間ですがコスト意識がしっかりした会社だとみてもらうことも必要以上に高値にされない上でも重要です。

④設備部品の汎用化
 
 ビールの設備は高額です。大型機器は部品を自前で変えるとメーカー保証が切れるリスクがありますが、ホース類や配管継ぎ手などは汎用品にすることでコストが下がりますし、故障時の対応も簡単に。

 ビール造りは装置産業です。高額な機械類の購入コストだけでなく、修理やメンテナンスに係るランニングコストはばかになりませんので、ネジひとつとは言いませんが配管継手などへのコスト意識は大事です。

⑤冷凍機のメンテナンス

 ビールを冷やすのには冷凍機という設備で冷媒を冷やし、これで冷やすことが一般的です。蒸気同様大きなコストですので冷凍機の効率を下げないようにケアをしましょう。
 メーカーメンテナンスはもちろん効果がありますが、定期的にファンの目詰まり解消するなどできることもあります。

⑥ビールろ過用のフィルターの延命化

 ろ過ビールの製造には精密ろ過用のフィルターが使用されることが多いですが、これが超高価です。熟成タンク下部の酵母の除去、珪藻土などの一次ろ過の適正化、プレフィルターの導入などでメインフィルターの寿命は大きく変わります。コストインパクト大なのでここは絶えず追及していくのがマルです。

⑦ラベルのデザイン、グレード選定、発注量

 瓶ビールのラベル代は実は結構かかっています。また最近のクラフトビールでは特殊な印刷も増えていますが、何社かに見積りをとってみると良いかも。耐水性なども必要以上あればグレードダウンも有りです。発注ロットによって単価も変わるので、何パターンか確認しておき、余ったラベルの廃棄コストとのバランスをみましょう。

⑧仕込みでのエキス習得率の向上

 原料の持つ発酵性糖を麦汁中に最大限抽出すること(エキス習得)はビール醸造技術のなかでも王道の技術ですが、小規模製造だと他の工程の歩留まりのほうが悪いので意外と目が向けられません。製造規模が大きくなるほど、エキスの抽出効率が1%上がっただけでも相当の原価率低減の効果があります。
 ビールの味にも関わる調整になるので、醸造技術力の訓練も兼ねて手掛けたいですね。

⑨酵母管理の改善

 発酵で使用する酵母は大きな会社であれば自前で株を持っておりそれを培養して増やしますが、中小の醸造所では市販の酵母を購入します。そしてこれが高価です。
 そのため、毎回新品の酵母を買うのではなく、発酵や熟成タンクで増殖した酵母を回収した繰り返し使用するのが一般的です。適切な酵母管理によって繰り返し使用回数を伸ばせばコストダウンに。
 ただし、繰り返し使用のなかで酵母はストレスを受け、活性が落ちたり遺伝子変異していき、最終的にはビールの香味まで変えてしまいます。
 品質優先で無理はしずらいところですが、酵母の管理を適正化できれば繰り返し使用回数も増やす余地があるかもしれませんし、酵母自体の管理が良くなることはビールの味も良くするので、定期的な確認と見直しはしておきたいところです。

⑩人件費

 人件費は繊細な問題ですね。コスト削減にばかり目を向けても働き辛くなり、そういう働き手のストレスは最終的にビールの味に反映されるとおもっています。とはいえ作業の効率化によって必要な人手を適正にすることは、経営者としては目を背けられないですね。
 一人一人の負担を増やすのではなく、地道な効率化によって楽にする、そんな想いで取り組めば、いまは大きな効果がでなくても、製造規模が大きくなったときの人件費は大きく差がつくと信じています。

 ここで紹介した内容は本の見出しのようなもので、ひとつひとつの詳細に踏み込むととても書ききれません。またこれら以外にもまだまだ利益率改善の取り組みはできます。
 頑張ってビールを造っている方、それを楽しみに待っているファンの皆さんの笑顔のために、しっかりと利益をだしてビールを造り続けていきたいものですね。
 乾杯🍻🍻🍻🍻🍻

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しん太/ビール醸造とエッセイ
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