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クラフトビールにおけるカンブリア大爆発
「ビールの多様性」とは昔から言われているが、ここ5年の世界中のクラフトビールでの新しい味や製法の出現の量やスピードの凄まじさをみていると「古生代カンブリア紀の生物種の大爆発」のようである。
この現象を支えているのはインターネットと物流網の発展、中流所得者の増加、か。
ドイツの格言「ビールは醸造所の煙突の煙が見えるところで飲め」はビールの鮮度に対する啓蒙だ。
一方で、かつて物流網が整備されていない時代は、ある程度近場でビールを消費しなければならず、必然的に一定数の人が好む味が生き残ってきたのだろう。
転じて今日、100人に1人が好きな味を造ってもインターネットで広告し大多数の人にリーチすれば醸造所を運営できる。
相手にできる人間の数が圧倒的に増えた。
昔よりも自分の嗜好に素直に、尖ったビール造りをしても、それが売れる道ができた。
近くにファンが少なくても、遠くにいるファンを集めれば大きな力にできる。
また、小規模から売れるビジネスモデルができ、そのなかで圧倒的に売れる醸造所が出来てきた。
チャレンジしやすいビジネスモデルこの中から、稼げるビジネスモデルがでてきた。
いま世界中で醸造所が増えている大きな理由のひとつは儲かるからだ。
マイクロブルワリーが乱立し、インターネットによって増やした潜在的顧客を奪い合うようになった。
そうすると次は再び差別化が必要だ。
味で、コンセプトで、副原料で、ストーリーで、ローカルとの結びつけで、様々な手法で差別化を図るようになってきた。
これが近年のクラフトビールの多様性の爆発のひとつの背景だと思っている。
これはビールの「進化」なのだろうか。
生物と同じように変化に適応し、つまり顧客に認められ、生き残ったときに初めて進化したと認識されるのかもしれない。
世界的なビールの味の広がりは、飽くなき味の追及や、他社との差別化、その結果の利益の追及が絡み合った、人間の「欲」でドリブンされたアメーバだ。
いまも世界のいたるところで真摯な、欲深いアメーバ達が美味しい、面白いビールの世界を広げているのだろう。
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