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背中が痛くて病院に行ったところ20年ぶりにポケモンマスターを目指すことになった話

背中が痛い

激痛である

背中の痛みが怖いのでロキソニンを飲んで寝るが、結局痛みで丑三つ時を越えたあたりで目が覚めたのは今日でもう4日目だ。

初日は右の肩甲骨の内側が痛かった。
なぜこんな場所が痛くなるのか、考えていても始まらない。
痛いものは痛いのだ。

キリキリ刺すような痛みとゴムのハンマーで叩かれたかのような鈍い痛みが不規則に襲ってくる。厄介なのはベッドで横になっていると痛みが増すのだ。日数が経つにつれて回復していくだろうと高を括っていたが、むしろ徐々に痛みが増してきている。そして移動している、痛みが。肩甲骨の内側から背筋全体に謎の痛みが広がっていった。アメーバの如く。

いよいよ病院に行くしかない。
と自分で決めたのではなく妻から行きなさいと宣告された。
痛い痛いと夜な夜なうるさくしている夫に優しくしていた妻の堪忍袋の緒が切れかかっているのを感じた。
最後通告である。無視なんぞできない。
いつか堪忍袋の緒を針金でガチガチに補強して切れないようにしてやりたいものだと思いながら、態度は従順に、返事は自衛隊ばりにハキハキと「はい!いって参ります!」と病院へと向かった。

ということで地元で評判の整形外科にやってきた。先生もハキハキスバっと的確な診断をしてくれるらしいので楽しみだ。

コロナもあるので端っこでひっそり待っていた私の名前を呼ばれた!まずはレントゲンとのこと。こんなに痛いのだからもしかしたら肋骨の1本や2本ヒビがはいっているのかな?それとも神経が圧迫されているのかな?酷い病気が見つかったらどうしようと一抹の不安を覚えながら、まずはレントゲンだ。

(画像は拾い物、右です)

しまった!真っ赤なミッキーマウス柄ののボクサーパンツを履いていた!恥ずかしいので家でしか履いていないやつだ。妻の表情に気圧され慌ててでてきたので忘れていた。35歳のおじさんが履くにはちときつい柄だ。イケメン技士さんよ、スルーしてくれ。

恥ずかしさと体を横にしたときの痛みに耐えながらレントゲンも終わり、さていよいよ診察だ。

たしかに評判通りガハハと笑う豪快タイプのお医者さんだ。
事前に症状のヒアリングが看護師さんからされていたが、「で、きょうはどうしたの?」
と話を遮らずに一から私の話を聞いてくれる。うんうん、そういうお医者さんは安心感があるぞ。

いつからどこがどのように痛くなっていったか、そしてそれが如何に痛くて大変かを説明していくのだが、お医者さんの首がどんどん傾むいていく。

「うーん、ほんとか?」

なんと!いままさに痛い背筋を持っている私が説明していると言うのに、信じていない!酷い!説明させてその一言は酷い!サディスト!やぶ医者!

「話を聞いていると、筋肉じゃねぇなぁ」

「レントゲン撮ったけど神経も骨も問題ねぇなぁ」

「ホントに痛い?」

痛いって!背中の筋肉が! 

「だいたいわかった、横になってみて」

何がわかったんだコンニャロ。ほれ触れ、触るがよい、痛がるぞー、おじさんの!私が!いまから!痛がるぞー!!!

グニッ
「痛くないしょ?」

あれ?

ボコッ
「これも痛くないしょ?」

うん

バンバンバン
「ここもこれだけ叩いても痛くないしょ?」

痛くないですねぇ

「これなんだけどね、、、」

「たぶん石だね!いし!結石!!!」
「背中痛くなるとこよくあるんだよ!」

イシッテアノイシデスカ
アノゲキツウデ、ミモダエルトキイタコトノアル、ケッセキデスカ

このとき何故かイシツブテが頭に浮かんだイシツブテがほーれほれとイヤらしい顔をしてこっちを見てくる

(憎しみを込めて手描きしました)

コイツだ、コイツが数日間私を苦しめて、そしてこの先も私を苦しめる石野郎だ

思えば20年以上前にポケットモンスターレッドでヒトカゲを選んだ私は序盤の石タイプのジムリーダーを倒せなくて泣いた。泣きながらヒトカゲを鍛え、リザードまで進化させてしまった。そのせいで序盤のゲームバランスが崩れるてしまった。あの時から石は私の人生の敵なのだ。いまだその業(カルマ)から私は逃げ出せていないのだ。いまこそカルマ石野郎を退治するときだ、、、、

「とにかく水をジャブジャブ飲んで!勝手に出てくること多いから!」

やはりな。岩タイプだもんな。水が弱点なんだろう。知っているよ私は。

「あとね!むかしはジャンプしろっていう医者もいたんだよ!重力で石を落とすの」

ジャンプですか

「そう!ジャンプ!水飲んでピョンピョン跳ねなさい!ガハハ」

小さい頃ふしぎだった。
なんでポケモンは「ジム」なんだろうと。
ポケモンを鍛えるのは牧場だったり訓練施設の方がしっくりくる。どうして「ポケモンジム」なのかと。

やっと得心したよ、跳ねるためだな。
あのカルマ石野郎を倒すために私は水を飲んでひたすら跳ねるのだ。ジムでエクササイズしている、ヨガをしている、ウエイトトレーニングをしている人達を尻目にピョンピョン跳ねるのだ。それこそが私のジムメニューなのだ。

ありがとう先生

跳ねるよ

ピョンピョン、ピョンピョン

こうして私はおじさんになってから、今一度ポケモンマスターを目指すことになった。

ミュウもミュウツーもいらない

伝説のポケモンも倒さない

ただ、ひとりあのイシツブテを倒すための生活をはじめるのだ

痛みはじめてから9日目、まだ倒せていない。

補記)妻のキャラクターはフィクションです。石もフィクションだったら良かったのですが、、、

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しん太/ビール醸造とエッセイ
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