新聞記者を辞めてまで、私が作りたかったコンテンツ with FACTELER
こんにちは。ビデオグラファーの田中です。
早速ですが、ご報告がございます。
このたび、メイドインジャパンの工場直結アパレルブランド「FACTELIER」の短編ドキュメンタリー作品を制作しました。
作品名「ものがたりのあるものづくり」は(※光栄なことに山田さんが出版された書籍タイトルと同名です)ファクトリエ11周年記念のコンテンツとして取り扱われ、先日はお客様の目の前で上映会も企画されました。
「ファクトリエ」というブランドについては、熊本の皆さんはご存知の方も多いはず。店舗なし、セールなし、価格は工場に決めてもらう——。日本のものづくり、アパレル業界の常識を飛び越えたブランドです。
いやはや、そんな素晴らしいブランドの世界観を伝えるドキュメンタリーを単独で制作することになるなんて…。今回は、今までのキャリアの中で、最も大きなチャレンジでした。
駆け出しの私にチャンスを与えてくださった山田敏夫さん(ファクトリエ代表/ライフスタイルアクセント株式会社代表取締役)本当にありがとうございました…!
今回の作品は、、、
ファクトリエを愛しているコアファンのお客様
ものづくり事業に携わる皆様
夢や理想を追いかけ、挑戦している皆様(←私自身がターゲット)
らに、思いが届くことを願い、制作しました。
まだご覧になられていない方はぜひ一度見ていただけると嬉しいです。
さて、こちらの記事では
・本編映像の裏話
・山田さんとの出会い
・田中の大失敗
・制作のきっかけ
・公開までの道のり
・今回を通して得た学びや発見
などについて話していきたいと思います。
読まれた方は、ぜひ感想もくださいねー!
お待ちしておりますっ!
山田さんとの出会い、ドキュメンタリー制作
▶︎ しっかりしろよ!田中!
始まりはDMです。8月上旬ごろ、
私から「もし、可能であれば一度、お話を伺ってみたい」と、長文でお送りしました。反応をいただけなくても無理はないか…と半ばあきらめかけていましたが、お送りして4日後…
「18日に人吉の工場行くので一緒に行きませんか?」
まさかの展開!予想外すぎる幸運でした…!山田さんの仕事の様子を間近で見られることなんて、滅多にない機会です。答えはもちろん一択でした。そして、山田さんは「私の著書も読んでおいてもらえると、深く(話を)進められると思うのでぜひ」とご連絡をいただきました。
しかし…田中は、大失敗しました。
特に理由もなく、せっかくの機会なのにも関わらず著書を読まずに、私は当日を迎えてしまったのです。
「・・・・・田中くんさ、それはマズくない?」
私は家から自家用車を走り出し、通町筋(熊本市中心市街地)で山田さんと合流。ご挨拶を済ませ、人吉に向かい始めた約5分後の車内…。山田さんから淡々と告げられた私は、張り詰めた緊張の中、大量の汗で滲んだ手でハンドルを握っていました。正直、焦りで事故らないか不安になりながらの運転…!それほど「やってしまった」という後悔の念で胸がいっぱいでした。
「もし自分から会いに行くとき、仮に相手が20冊くらい書籍を出版してるとしたら、全部読んでから行くのが当たり前だよ」
私がどれほど「忙しい」としても、山田さんはきっと数十倍の多忙を極めているに違いありません。そんな中、当たり前のことを当たり前にできない自分自身に対し、すごく情けなさを憶えました。(車内で2人でピースする写真を見た後では)信じられないかもしれませんが、出会いたての時間は、このようにマイナスからのスタートでした。今でもあのときの不甲斐ない自分の姿は、忘れられません。
「・・・・・いいよ。今日は1から全部話すので。なんでも思ったことは聞いてください」
——このとき、私は心底ありがたいという気持ちでした。独立すると、自分のことを本気で叱ってくれる方は、そういません。そんな中、山田さんは、適当にあしらうでもなく、真正面から向き合い、私にチャンスを与えてくれました。
今後は2度と同じ失敗は繰り返さないようにしようと胸に誓い、気持ちを切り替えて、当初の「山田さんのマインドを学び尽くす!」という姿勢に立ち返り、改めて1日がスタートしたのでした。
▶︎ カメラ持ってきてる? …なら、作品作ってみようか。
最初の一件があり、約1時間ほど経ったころ、私はようやく緊張を解くことができていました。それからの時間は、私の質問に対し、山田さんが全て答えるという…私にとっては、まさに至福の時間…!ドライブしながら、こんなにゆっくり何時間もインタビューさせていただく経験は、新聞記者時代にもありませんでした。
山田さんが思う「マーケティング」「ブランディング」とは?工場とお客さんとのコミュニケーションで大事にしていることは?どうやったら、サービスをより好きになってもらえる?…などなど。山田さんのこれまでの経験に基づく実践的な考え方を伺えたので、全てが貴重でした。
そんな中、いよいよ工場に到着するという場面で、私は見出しの通り、作品を制作することに決まりました。もともと、その意気込みはあったので、映像を撮ること自体は想定していましたが…
「本当にいい作品だったら、お客様にお見せしたいから」
と、まさかの事態。
私の想定を遥かに超える話に飛躍したのです!
「ガイアの夜明け」「カンブリア宮殿」…。大手の名だたるドキュメンタリーに密着されたご経験があるなか、私の作品にどんな評価をしていただけるのか分かりませんが、これは紛れもなく大きなチャンス。「記者時代に培ってきたものを全て生かし、形にしたい」という一心を込める。構成やカメラワークは撮影しながら考え、限られた時間内で最高のパフォーマンスを発揮することに、私は全神経を集中させました。
▶︎ 完成に向けて。 強力な助っ人も…!
撮影で訪れたのは2社。「デ・アイ」(あさぎり町)さんと「HITOYOSHI」(人吉市)さん。
いずれの工場も、山田さんとの強い信頼関係、ものづくりに対する情熱が、ひしひしと伝わってきました。この独特な感覚、感動はなんとも言語化しにくいのですが……(それについては、ぜひ本編をご覧ください)こういう部分こそ、テキストでは伝えきれない、むしろ映像だからこそ伝えられる内容だと思います。
撮影は無事に終了。9月中旬の完成を見越し、制作期間は8月下旬〜9月上旬。私はコンテンツを作る場合、撮影前に、視聴者(読者)に何を伝えたいのか、それを入念に打ち合わせるのですが、今回は、それが不十分な中での編集作業でした。つまり、ほぼぶっつけ本番でした。一方で何を表現するのか、については私の中で明確に決まっていました。それは前述した通り、
・山田さんとの強い信頼関係
・ものづくりに対する作り手の情熱
・ファクトリエの原点
をどう伝えるのか、ということ。
ある種、ターゲット(誰向けに?)設定の部分は「ある程度作品がまとまるまでは正直わからない」というイレギュラーがありましたが、強いて言えば山田さんやファクトリエの社員さん、コアファン層にぶっ刺さる作品を届けたい、という思いが、私の頭の中で反芻していました。
理屈で考える手前の「本能で感情がざわっと動く」感覚———とでも言いましょうか。そんな作品を作りたいと思いを込めて、編集作業をしていました。
そんな頃、全くの別件で、ある方とお会いすることになりました。この出会いが、予期せぬ形で作品の質を高める機会へと繋がったのです。それこそ、作曲家、鎌田優紀子さんとの巡り合わせでした。
実は、熊本県立劇場40周年企画事業で、知り合った鎌田さん。熊本市政令指定都市移行10周年記念スペシャルムービーの音楽などを手がけ、近年注目を集めている作曲家さんです。たまたま私が「ファクトリエの映像を作ってるんです」という話をしたところ、すごく興味を示してもらいました。音楽をどうするべきか悩んでいる旨をご相談したところ…私の頭の中には一緒にやれないか?と一縷の望みが、芽生えました。そして、、、、
田中「あまり、予算をご用意することはできないんですが・・・・・」
鎌田さん「田中さんの言い値でいいですよ!ぜひ素敵な音楽作りましょう!」
私のチャレンジを応援する心意気で、採算度外視で引き受けてくれました。
鎌田さん、そして、鎌田さんと二人三脚で音楽作りをしてくださった櫻井智子さん、本当にありがとうございました!
こうして上がってきた音楽は、私の想像ぴったりでした。伝えたい3つのテーマがしっかりと体現されていて、山田さんと工場の「絆」「温かさ」「重さ」が内包されており、作品の完成度はぐっと高まりました。
いざ、お披露目!田中、東京へ。
▶︎ 作品完成! 絶対に直接お見せしたい。
「東京まで行きます。直接お会いして作品をお見せしたいです」
9月15日、私は東京に赴きました。
このとき「山田さんはまだ一度お会いしたきりだが、裏表がなく、真正面から向き合われる方だという印象」だったので、良いものは良い、悪いものは悪い、と忖度なく評価されるはずだ、と確信していました。だからこそ、弱くてビビリな私が、時折顔を覗かせ、きっと緊張は、もろに表情に出ていたのだろうと思います。
そして結果ですが・・・・・・
「想像以上の完成度でした。とても良かったです」
この言葉は、めちゃくちゃ嬉しかったですね・・・・・!
山田さんと交わした言葉を振り返りながら、ときに書籍の言葉をお借りしたり…。ブランドや創業当初からの思いを伝えるうえで、最も適切な表現は何なのか。地道に突き詰めた結果、私が求める以上のクオリティへと昇華することができたと思います。
努力が実を結んだ瞬間というのは、何よりも大きなやりがいですね。前職時代には、ここまでの達成感は今まで味わったことがありませんでした。
▶︎ 少しずつ嬉しい声も。
その後、山田さんは早速、社内の方にも動画を共有されたそうです。少なからず反響もあり、泣きそうなくらい、嬉しかったですね…!
それから、映像に少しの調整を加えて迎えた10月7日。ファクトリエ熊本本店で、お客様向けの上映会が企画されました。
ファクトリエのお客様に日本初公開…!
時折頷きながら視聴する姿、終了後の拍手…!
感慨深い場面の連続でした。
大変嬉しいことに高評価でした。お客様の中には「ファクトリエの山田社長の思いを改めて思い出すことができた」といった声も。イベント終了後、数人のお客様にじっくりとお話しを伺ったところ、実際に映像から受け取ったイメージやメッセージが、私が伝えたかったものに近かったり、一方で新しい発見もあったりと、今後の映像制作のヒントとなるような学びが多くありました。私が作品を通して伝えたかったメッセージ(前述した3つのテーマ)もしっかり届いていたようです。
私らしい武器が見つかった。
今回のお仕事を通じ、ある確信が芽生えました。
それは、私の解釈力は大きな武器になる、ということ。「集めた素材を編集し、わかりやすく伝える」——。記者時代、約400本のコンテンツを制作してきた知見を活かし、取り組んだ結果、ファクトリエのコアなお客様の心に届く作品を作ることができました。これは、ブランドに対する理解が不十分であれば、難しいことです。ですが今回、洗練され、強いストーリー性があるブランドのドキュメンタリーを制作。これは、私自身の「ヒアリングを経て解釈する力」に相応の自信を持っていいと言える大きな実績でしょう。
ほかの映像クリエイターに比べ、映像技術に関しては「まだまだ成長しなければならない」と課題を感じつつありますが、これは、はっきり言って代替可能です。映像クリエイターの仲間にも恵まれているからこそ、将来的にはあまり心配することではありません。むしろ、私が勝負すべきポイントはそこではない。
クライアントさんに寄り添って、「最大限の自然体」を引き出し、「なぜ?」の原点を描く。それが、私なりの戦い方であると、気づかせてもらえる機会になりました。
今の時代…それらを伝える手段はドキュメンタリーに限りません。テキスト型のオウンドメディアだったり、InstagramやTikTokの縦動画だったり。つまりは、枠に捉われない企画力。それこそが、解釈力の底上げに伴い、必要になるスキルになるのではないかと可能性を感じています。これらを身につけていくためにも、「視座を高く持ち、常識に縛られない」という前提を意識していきたいです。
今回のお仕事で、私は大きく成長できました。大きな実績として、皆さんにご報告することができました。この場を借りて、山田さんに深い感謝をお伝えしたいです。本当にありがとうございました。
ぜひ、読者のみなさんも一度ファクトリエを体験してみてください!自分らしい1着、誰かに語りたくてたまらない1着が見つかると思います。
気づけば、独立して2ヶ月以上が経過しました。
必死で取り組む姿に共感し、応援してくれる、たくさんの方々に出会うことができています。皆様、いつも本当にありがとうございます。
今後も、お力になれることがあればぜひお気軽にご連絡ください。
こちらのnoteでは、普段はなかなか話せない私自身の思いや、作品完成までの裏話について、楽しく読んでいただけるようなコンテンツとして展開していきたいます!ぜひ、また次回のコンテンツもお楽しみに!
◯私が独立した背景や過去のキャリアについてはこちら ↓↓↓
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