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夏 第134回 ロランの『魅惑の魂』から
アネットの性格は慎重さが欠けたものだった。恋の体験もそれを教えることもなく、彼女は変わらなかった。だが寛大に信頼する必要性が、彼女に与えられていた。愛し愛されることを確信した今、彼女は何も隠さなかった。愛する人のどんなところにも、彼女は敬遠することはできなかった。彼女が自分を着飾ることを考えただろうか? 彼女は心は健全そのもので、ありのままの自分を恥じることはなかった。彼女を愛したなら、ありのままの彼女を見てほしい! 彼女は彼が素朴であると同時に、理解が鈍く、怖気やすいことに気づいた。彼女はそこに優しいが、悪戯な喜びを感じていた。女の魂とは何かを、彼が知るための最初の女性となるであろうことを思うと、彼女は嬉しかった。
ある日のこと、彼女は彼の家を突然に訪ねていった。ドアを開けたのは母親だった。白髪が整えられた老婦人だった。表情は穏やかだったが、瞳は厳しく注意深く光で照らされていた。疑うような態度でアネットを観た後に、小さな居間に案内した。居間は清潔だったが冷たいものを感じさせ、家具具にカバーが掛けられていた。
古くなった家族の写真や美術館の写真が、部屋の雰囲気をさらに冷え込ませていた。アネットは一人で待っていた。隣の部屋でささやき声が聞こえた後に、ジュリアンが急いだように入ってきた。彼は喜んでいたが、気おくれもしているようだった。彼は何を語ればいいのか分からなかった。話に答えていがが答えになっていなかった。二人は座り心地が悪い椅子に掛けていて、普段の慣れた身振りを妨げていた。二人の間にはテーブルがひとつあったが、寄りかかることはできないうえに、安定してなくて膝がぶつかっっていた。床にはカーペットは敷いてなく冷たく光って、額にかかった絵は植物標本のようにガラスの下に死んだようで、出かかった言葉も凍りつき、声を低くさせた。この居間はアネット、完全に凍りつかせていた。ジュリアンは訪問の最後まで彼女をここに置いておくのだろうか? 彼女は彼が勉強をしている部屋を見せてもらえないかと訊ねた。彼は断ることはできなかった。彼自身がそれを望んでいたのだ。それでも彼にはためらったような様子だったから、彼女はこう言った。
「ご迷惑なことかしら?」