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母と息子 208『魅惑の魂』第3巻 第3部 第8回
それからの二人はいろんなことを話した。だが戦争だけはそこに加わるのは難しいことだった。それは最初から負傷者の身振りでアネットにも解った。彼はその話に触れてほしくはないようだった。戦争のことは通行禁止の道だった。それは通れない道なのだ!…
「いいえ、その話だけは止めましょう! それはあなたには理解できないことです。あなただけを指してはいません… こちらにいるみんなことです… ここと… あちらとは… この二つは同じ世界じゃない。こことあちらとでは言葉が違います」
アネットは言った。
「その言葉を、わたしが学ぶことはできないのかしら?」
「ええ、あなたでも学ぶことはできません。温かい同情心を持っているあなたでさえ学べません。愛だけでは経験していないことを補うことはできないんです。それにぼくも肉体という本に書かれていることまでは翻訳はできません」
「試してみることもだめでしょうか? わたしは理解したいって強く思ってます。いいえ好奇心なんかではありません、わたしにできることで助けてあげることもできるのではないでしょうか! わたしに出しゃばるような気持ちはありません! あなたが試練としていることに少しでも近づきたいのです」
「ありがとう、その気持は感謝します。でもぼくたちを助ける最善の方法は、それを忘れさせてくれることなんです。あちらの仲間の間でも、このことには触れないことになっているのです。言葉はなくともそれは互いに合意しています。ぼくたちも、議論するときでさえ、あちらのことには触れません。戦争に関係する話(本や新聞も)は、ぼくたちに大きな嫌悪を与えました。戦争は文学ではありません」
「生きていくとこも、そうではないでしょうか」
「その通りでしょう。でも人間は愉しんで歌う必要があるはずです。生きていくことには、自分なりの主題を持つことができます。変化に富んだも主題です。歌いましょう!」