音楽鑑賞日記 メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲
中学校入学当時の音楽の先生は、美しい女性だった。その寸前まで、ぼくが音楽が好きだったのかは怪しい。
だが、その先生の授業が楽しくて音楽が好きになってしまった。思春期のときめきが主因で、本当にそのとき音楽が好きだったかは解らない。
たぶん音楽の授業も慣れた頃だったと思う。先生がこんなことを言った。
今日はいつも違って、私が好きな名曲をいくつか聴くだけにします。
先生は、当時SP盤といわれてたレコードを数枚用意していた。
チャイコフスキー、スメタナ、バッハ、モーツアルトなどを聴いたような記憶が朧げにあるが、今ではそれを確信することはできない。
そして先生が、
メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲
と題名を言ってレコードに針を落とした瞬間に僕は雲の彼方にいるような陶酔に陥ってしまった。音楽を聴いてこんな気持ちになることの驚きでもあった。
いまにして思うがメンデルスゾーンのこの曲は音楽に無縁な者までを虜にして当たり前というか、それが人口に膾炙したものだったに過ぎない。
だが思春期のぼくの甘い思い出として、特別なものだったと語っても許されるのでないだろうか。
その後、ぼくがしばらくコーラス部に在籍したのは、メンデルスゾーンを聴いた感激に加え先生の存在が大きかったと思う。
だが、しばらくして先生は出産のため翌年からは休まれると告げられた。
先生がいなくなった後は四十歳くらいの男が音楽担当となった。それでコーラス部に通うのは止めてしまった、音楽を好きになった気持には変わりなかったけど。
メンデルスゾーンに全く触れない文章を書いてしまったが、これも音楽を愛する者が語る一つの表現として許してもらいたい。
不朽の名作!【メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 第1楽章