なぜおいそれと経済再開ができないのか

「新型コロナで重症化するのは高齢者。その高齢者が全員ワクチン接種を終えたら、経済活動を再開させてもよいじゃないか。むしろ経済活動を再開させない理由が分からない」という意見が根強い。経済活動停止により、経済的に殺される人も多いことを考えると、悩ましい。ただ、ことは単純ではない。
テレビでは、「変異株は若い人も重症化リスクがある」と言われている。高齢者ほど高い確率ではないかもしれないが、重症化リスクは変異株は高いらしい。
しかし経済活動再開支持者は、「経済的に殺されるリスクよりも低いはずだ」と考えるだろう。そこで、私は別の観点から考えてみる。
・高齢者がほぼ全員ワクチンを打っている。
・若者が経済活動を再開する。
・それによって新型コロナの流行が広がる。
この3つの条件がそろうと、ワクチンが全く効かない変異株が誕生する恐れがある。感染症の専門家が恐れているのは、本当はこれではないかと推測している。
経済活動が再開され、若者を中心に新型コロナの流行が広がったとする。すると、若者と高齢者が出会った場面で、大量のウイルス曝露を高齢者が受けることになる。すると、ワクチンが効かないウイルスが発生するリスクがある。
ウイルスというのは、常に変異している。感染者が何億個ものウイルスを外に吐き出した時、高齢者は、その曝露を受け、一定の確率で変異株が体内に入ることになる。ワクチン接種者は、免疫がウイルスを撃退してくれる。しかしあまり大量曝露だと、免疫をすり抜ける変異株と出会う確率が高くなる。
免疫をすり抜けることに成功した変異株は、その体内で増殖し、次のワクチン接種者へと感染を広げる。こうして、ワクチンの効かない変異株が発生する恐れがある。ワクチン接種さえすれば、新型コロナが流行しても怖くない、と考えるのは間違い。むしろ、もっと怖いことが起きかねない。
ワクチンの効かない変異株の誕生を抑えるには、ワクチン接種者が、大量のウイルス曝露を受けないようにすることが大切。そのためには、高齢者でなくても、新型コロナに感染するリスクを小さくし、ワクチン接種者にウイルスを大量に浴びせることのないようにしなければならない。
ワクチン接種者もそうでない人も感染リスクを最小化すれば、ワクチンがなかった時よりもさらに早く、新型コロナの感染は広がりにくくなり、やがて消えることも起こりうる。しかしどうやら、経済を止めることのリスクとの兼ね合いで、それが難しい様子。
だが、経済活動を再開させた結果、感染対策がおろそかになると、どうしても「ワクチン接種者がウイルスの大量曝露を受ける」という条件がそろいやすくなり、その結果、ワクチンが効かないウイルスが発生しやすくなる。ジレンマ。
だから、少なくとも「ワクチンを打ったからマスクは外して構わないよね?」とはならない。残念ながら、ワクチンを打ったとしても、ワクチンの効かない変異株を生まないためには、感染対策を弱めるわけにいかない。

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