絵本の読み聞かせの前に実況中継を!

友人に赤ちゃんが生まれて、「どうやったら国語力がつくだろう?」と書いてた。多くの人が絵本の読み聞かせを勧めていて、そこは私も異論ないのだけど、その手前でもっと効果的な方法があると考えている。それは「見るもの聞くもの全て実況中継」。

赤ちゃんは何もしゃべらないし、こちらの言葉も理解できないと思って、ついつい口を閉ざしがち。けれど赤ちゃんは、外界からの情報を全身で聞いている。集めている。だから新生児のうちから、言葉のシャワーを浴びせるかのごとく、言葉の雨を降らせたらよいと思う。

でも何をしゃべったらいいか分からない場合に、簡単なのが実況中継。「はいはーい、何泣いてるの?おなか減った?オムツは・・・濡れてないね。まあさっきから3時間は経ったしなあ。よう眠ってたねえ。ミルク作るからちょっと待っててな。ええと、哺乳瓶は、と」てな具合。自分の行為を実況中継。

ベビーカー押していてもそれをやっていた。「今日はお天気がいいねえ。おひさまポカポカ。風もあんまり吹かないしねえ。と思ったら今吹いたねえ。はい、ここの段差を上りますよ、よっこらしょ、っと。あ、目的の店が近づいてきました!◯、△、☓ってカンバンに書いてるね。おしゃれだねえ」

スーパーに入る時も「はーい、自動ドアが開きまーす、ウィーン。お店に入ったらカートに乗り換えるよ。はい、両足をこの穴に入れて、合体!では店内に入りまーす。まずは果物コーナー。おいしそう!でも今日はカレーだからジャガイモどこかな?おお、今日は1袋◯◯円だって!」

こんな感じに、赤ちゃんの頃から「実況中継」しまくった。あまりに言葉を多く受け止めすぎたのか、言葉の話し始めはそんなに早くない(一歳3ヶ月くらいかな?)けど、その後の語彙数の増え方は急激だった。2歳になる前に「ご!(5)」を読み、やがて「立入禁止」も読み、字を書き始めた。

どうやら、実況中継を四六時中やってたからか、「線のもつれてる絵(文字)には、どうやら音が当てられているらしい」と、子どもは仮説を立てるらしい。字に強い関心を持ち、ごく自然に読めるようになった。書くことにも興味が湧き、2歳になる前にアルファベットを書き始めたのはびっくりした。

でも、教えていない。息子は赤ん坊のころから大変な聞かん気で、自分で全部発見したいタイプ。私が教えようとすると見向きもしない。そっちを見ようともしない。「こんなに『教える』ことに相性の悪い子どももいるんだなあ」と半ばあきれつつ、自分で気づくのに任せた。そしたら。

紙にランダムに線を書き殴ってるなあ、と思っていたら、線が交差してる部分を指差して「えっくす!」と言って驚いた。すると、自分の発見に気をよくしたのか、線を書き殴ってる間に見覚えのある字が現れないか、実験を続けるように。そうしてEとかPとかをどんどん「発見」していった。

子どもは、赤ちゃんの頃から「実況中継」をしておき、目にするもの、耳に聞くものを全て言葉にして聞かせたらよいように思う。言葉はシチュエーションと一緒に覚えるもの。だから、五感が様々な事を感じてるその場で言葉を聞くと、シチュエーションと一緒に丸ごと言葉を覚える。

息子は私が帰宅すると「ただいま!」と言って出迎えてくれた。本当は「おかえり」というところだけど、「誰かがドアを開けて入ってくる時に『ただいま』と言う」というシチュエーションは間違っていない。子どもはこのように、シチュエーションと共に言葉を覚える。

しかし絵本は、絵を見る視覚と読み聞かせの言葉しか入ってこない。もし、普段の生活で全く言葉を聞かせてもらえてなかったとしたら、絵本の絵が何をしてしているのか、読み聞かせの言葉がどんなシチュエーションを示しているか、見当がつかないかもしれない。

子どもは、日常生活の中で親が話す言葉に耳を傾け、「こういうシチュエーションの時にこういう言葉を発するのだな」と、言葉の意味に見当をつけていくのだと思う。だとしたら、絵本の読み聞かせが有効になるには、何よりも日常での言葉かけが大切。

うちの子らは、幼稚園に入った段階で「難しい言葉をよく使ってる」と言われた。子どもに対して難しい言葉をそんなに使った憶えはないが、言葉をかけまくってる間に「これ便利だな」と思って憶えてしまったらしい。そういえば「こういう前提で」って子どもが言ってたな・・・

言葉の発達は、本じゃなくて日常にあると思う。日常で赤ちゃんに言葉をかけまくり、目にするもの、耳にするものを全て言葉にして実況中継すれば、子どもは言葉が達者になると思う。絵本の読み聞かせをする前に、赤ちゃんに語りかけまくるとよいように思う。

もし親御さんが「自分は語彙数が少ないから・・・」と気にされるなら、そんなの気にしなくて結構。そんな難しい言葉を使う必要は一切ない。子どもは言葉の面白さに気がつくと、自分で学びだす。親を追い越す。だから親である自分がどうかなんて気にする必要はない。

私の知ってる複数のケースで、親は小学校あるいは中学校を出ただけで学歴もなく、本も読まない人だったけど、子どもは大変読書家になり、旧帝大に進学してる。その人たちは、子どものことを話すのが楽しそう。子どもにいろんなことを抜かれて嬉しそう。それが子どもの学習意欲をかき立てたのかも。

そういう親御さんの特徴は、子どもが何か一つできるようになると驚き、喜んでいた様子。すると、子どもは自分が成長すると親を驚かすことができると思って、ますます能力を高めようとする。つまり、親の能力は関係ない。親が子どもの成長を祈り、一つ一つの成長に驚き、喜べばいい。

実況中継してると、子どもが思わぬ反応を示すことに驚かされることがしばしば。「立入禁止」の看板を読んだ時は本当に驚いた。教えたつもりはないけど、どこかの実況中継の中で聞き憶えていたのだろう。それも随分前だろうから、よけいに驚いた。すると、もっと驚かそうとするらしい。

言葉の実況中継、お勧め。それをした上で絵本の読み聞かせをすれば、日常での豊富な生活体験の裏付けがあるから、絵本の内容もたいへん彩られた感じで受けとめられるのではないだろうか。

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