株主資本主義者はなぜ元気を取り戻したか

最近、株主資本主義を批判すると「能力のある人間は雇う、そうでない人は知らん」ということを平気で言う人がたくさん現れるようになった。新型コロナの流行が始まってから昨年までは、こうした反応は鳴りを潜めていたのたが、今年に入ってから息を吹き返し、参院選で自民党が勝ってからとても元気。

ついこないだまで「新しい資本主義」と言い、分配を重視すると言っていた岸田首相は、「資産所得倍増プラン」なんて言い出した。それって株主資本主義やん!言ってた「新しい資本主義」と正反対やん!という状態。おそらくこんな言葉遊びを提案したのは竹中平蔵氏あたりではないかと思うが証拠はない。

どうも、国内外の資本家たちから岸田首相は脅された様子。株主資本主義を改め、分配に力入れる改革を進めるなら、日本から資金を引き上げて株価を崩落させるぞ、とでも言われたのではないか、と「補助線」を引くと、わざわざロンドンシティで「資産所得倍増」宣言が理解可能。
https://news.yahoo.co.jp/articles/c7b4fa2dc8c187e88b5ac5d441c71e008b87155d

こうしたロビー活動の成功を受けて、株主資本主義が大好き、労働者への分配大嫌い(できれば労働者の分け前を減らして自分たち株主に配分させたい、何なら首にして浮いた賃金を株主に還元させたい(収奪したい))な人達が元気になり、それを平気で発言するようになっているのだろう。

彼らが元気になってる一つの理由に、新型コロナによって痛めつけられた経済システムもどうやら正常化が進みだしているという安心も手伝っているのだろう。もしそうなら貧しい労働者もなんとか生きていけるから、株主資本主義の人達も遠慮なく労働者から収奪できるというわけだ。

そのような状況を受けて、またぞろ竹中平蔵氏が元気になり始めていた。新刊をひろゆき氏と出し、これから株主資本主義を「資産所得倍増プラン」として推し進めようとしていた様子。しかし、ある事件が竹中氏を心胆寒からしめた様子。安倍氏銃撃事件。

この事件を見て、竹中平蔵氏は「次は自分かも」と恐怖し始めたのか、パソナの会長を辞任、新刊の宣伝も取りやめて、公的な場から姿を消している。自分が格差社会を作り出した張本人であり、その点でかなり憎まれているという自覚があるためだろう、という「補助線」を引くと、竹中氏の行動は理解可能。

おそらくは「資産所得倍増プラン」の影の主唱者である竹中平蔵氏がいなくなったけれど、株主資本主義の大好きな人達が元気な様子を見ると、岸田政権はもう、分配に力を入れた政策は腰砕けなものと思われる。

ただ、冒頭の「能力のある人間は雇うが」の話、戦前の格差が大きかった時代もそうだった。格差への怒りが共産主義とナチスを生み、金持ちの全財産を没収、あるいは虐殺。恐怖した資本家たちは戦後、ケインズ経済学を採用、能力のあるなしに関わらず必死に雇用、共産主義国を凌駕する豊かさに。

恐らく現在はその手前の段階にある。格差を是正せず、放置するなら、株主資本主義社会たちを血祭りにあげる社会思想が台頭しかねない社会状況が遊んでいるのに、それに自覚のない人が少なからずいるらしい。このままでは、その人たちを守れない。

結局、能力がないなら守らない、という態度は、株主資本主義者は守らない、という政治思想の呼び水になるということにどれだけ自覚があるのだろうか。バランスを欠けば、極端な形でバランスを矯正しようという動きが始まる。今は違法なことが合法化され、合法なことが違法に変わるリスクがある。

格差を放置することは、放置することで利益を得る連中への報復感情を高め、その時代の流れが高まれば、もはや止めようがなくなる。私は誰も殺されてほしくない。だから是正すべきだと申し上げている。是正の動きを嘲笑する人たちを守るための発言が嘲笑されるという皮肉。なんとかならぬものか。

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https://www.atpress.ne.jp/news/190356

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