結婚を増やし、少子化問題を改善するには、男性側のアップデートが必要

少子化の原因は子どもを産まないから、という意見が政治家なんかからもよく出てくるけれど、私はその意見に納得できない。周囲を見ても、結婚している人は子どもがいることが多いし、複数子どもを育てているケースも多い。だから、結婚した夫婦が子どもを産もうとしていない、というのはなんか変。


この記事にもあるように、結婚する若者が減っている、ということが大きいように思う。

https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=75864?site=nli#:~:text=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E5%B0%91%E5%AD%90%E5%8C%96%E3%81%AE%E4%B8%BB%E3%81%AA%E5%8E%9F%E5%9B%A0%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%AF,%E5%A4%A7%E3%81%8D%E3%81%84%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E6%8C%99%E3%81%92%E3%82%89%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%80%82

YouMeさんも結婚前、「結婚にメリットが感じられない」とよく話していた。「働けば女性一人でも生きていけるけど、結婚すれば女性に不利な仕組みだらけ。デメリットが多すぎる」と。


それにはやはり、男性側の価値観、あるいは親の世代の価値観が大きく影響しているように思う。女性が育児や家事を担当するのは当然、という価値観は根強い。しかも、その価値観を理由に、男性が子育てや家事から逃げるだろうな、という姿勢がまだまだ消えない。でも、最悪なのは別のところかも。


「誰が稼いできたと思っているんだ」という男性側の考え方。これが最も深刻で厄介な問題のような気がする。女性は赤ちゃんを産むという宿命にあるために、どうしても一定期間、授乳や育児で仕事を休まざるを得ない期間が発生する。その間、稼ぐことができないという不利な状況に置かれる。


そんな、女性側にはどうしようもない、努力しようが何しようがその状況を変えることができないにも関わらず、男性が「誰が稼いでいると思っているんだ」なんて言ったとしたら、それを許せるだろうか。どうしようもない状況に追い込んでそこでトドメを刺してくる人間を許すことができるだろうか。


出産で体が大きく傷つき、新生児には3時間おきの授乳をせねばならず、極端な睡眠欠乏に陥って、仕事どころではない状態がしばらく続く。そんなどうしようもない状況で「お前は働いていない、稼いでいない」などと発言するパートナーと一緒に暮らしたいと思うだろうか。無理だと思う。


今の若い女性は、先輩たちのそうした体験談を聞いて、「そんな男と結婚するハメになるリスクをおかすくらいなら、結婚しないほうがマシ」と考えても不思議ではない。しかも厄介なことに、結婚してから態度が豹変する男性が少なくないとも言われる。これでは怖くて結婚できやしない。


今は女性も勤め人が多く、出産時には産休を取る形となる。しかし、「産休」という言葉がすでにまずい。まるで休んでいるかのようなイメージを与える。そのイメージで勘違いした男性が、「お前は休んでいる、稼いでいない」という発想になるのを促してしまっているのかもしれない。


私の知人は、産休や育休の名前を「育児出向」と変えたほうがよいのではないか、と提案している。私もそれに賛成。出産や育児は、そんなたやすいものではない。中でも新生児育児は、ビックリする人が多い。近頃は変わってきたようだが、数年前まで「教えてほしかった」という女性が結構いた。


何を教えてほしかったかというと、「こんなにも眠れないとは思わなかった」ということ。

3時間おきの授乳、とだけ聞いたその女性は「まあ、ミルクを作ってオムツを変えて、って作業をしても1時間程度だろう。だとしたら2時間は眠れる。楽勝楽勝」と考えがちであったという。ところが。


赤ちゃんはおっぱいを飲むのが最初、ヘタだったりして、吸うのに疲れてろくに腹が膨れていないのに眠ってしまうことも。すると、3時間おきどころか1時間おきに泣く。睡眠がズタズタにされ、ほとんど眠れないという毎日に陥りかねない。しかも。


乳幼児突然死症候群というのを聞かされていて、いつ呼吸が止まってしまうか、と、母親はおちおち眠っていられない。赤ちゃんが泣けば「寝てよ」と思うけど、いざ寝たら静かすぎて「息してる?」と確認せずにいられない。か弱き命をつなごうと、必死になってしまい、眠ることができない。


拷問の中で最も苦しいのが眠らせないこと、と言われる。ワンオペで新生児育児を行うと、極度の睡眠欠乏に陥りかねない。最もつらい拷問に耐えながら、赤ちゃんの命をつながなければ、という必死の努力を続けなければならない。そんな極限状態の中で、もしパートナーである男性から。


「お前、ずっと家にいるんだから、片付けくらいしろよ。寝てばかりいないで。ずっと休んで稼いでないんだから、家事くらいしっかりやれよ。俺のメシは?」

もう、生涯許すことのできない恨みを持たずにはいられないだろう。耐えられない拷問を受ける中で鞭打つその言葉を許せるはずがない。


寝ていない、と訴えても「眠れる時間くらいあるはずだ、赤ちゃんだって始終起きているわけではないし」など、無理解な態度をやめないのなら、もう、その男性を許す気になれなくて当然だろう。なのに許せないことに、子どもがいるために夫の経済力に頼らねばならないという非情な状態。


こうした体験談を聞いた若い女性は、「うっかり結婚してそんな男性だったとしたら、殺したくなるほど憎くなるだろう。そんな不幸なことになるくらいなら、結婚しないほうがマシ」と考えても、不思議ではない。結婚が減っている大きな理由は、男性側がアップデートできていない点にあるように思う。


男性はどうも、「稼いだ人間は偉そうにしていい」という誤った思考を持っているのではないか。そうした思考を持っているものだから、産「休」で「休んでいるはず」の女性に、上から目線でモノが言えると勘違いしてしまう事例が後を絶たないのかもしれない。


ただ、最近の結婚している若い男性は、私の知る限り、軒並み産休を取り、新生児育児を積極的に担当している様子。新生児育児では母親が極端な睡眠欠乏に陥ることが、だいぶ知られるようになってきているらしい。こうした男性は、上記のような暴言を吐く心配はないだろう。


しかし、いかにもこうした暴言を吐きそうな男性がまだいらっしゃる。こうした男性は、女性に結婚してもらえない可能性がかなり高くなるように思う。わざわざ不幸になりにいく女性は少ないだろうから。結婚を増やすには、男性側の思考のアップデートが非常に重要になるように思う。


また、男性だけが変わってもやや不足。その男性の親がアップデートできていないと、リスクがある。「私は一人で育児したわよ」なんて姑が言ったとしたら、息子もそれにつられて変質してしまいかねない。親が古い考え方を引きずっていると、女性は怖くてその男性と結婚を考えられなくなるかも。


しかし、年をとった人たちが思考をアップデートすることは、かなり困難を伴う。そう考えると、まずは若い人の思考をアップデートすることが大切になるだろう。


学校教育の間に、

①新生児育児では極度な睡眠欠乏に陥りやすいこと

②「俺は稼いでいる」発言は悪魔の所業

③母親が睡眠を確保できるよう、男性も新生児育児をしっかり担当

④夫婦で一緒に問題に対処する「チーム」としての認識を持つこと

などをしっかり教えたほうがよいのでは。


辻由起子さんは大阪のトップクラスの進学校を出ているが、「親のなり方は教えてもらっていなかった」という。辻さんはそのために、筆舌に尽くしがたい苦労を味わうことになった。その悔しさから、辻さんは今も孤独で苦しむ母子を支援する活動を続けておられる。


私はたまたま、母親が(おそらく大阪で最初の)育児支援室を主宰していて、赤ちゃんを抱える母親たちがいかに孤独に苦しんでいるかを聞いていたので、YouMeさんと結婚し、育児をするにあたって、あらかじめ気をつけることができた。


育児支援室に通うようになった母親は、赤ちゃんと二人だけで過ごし、1か月間誰とも話さず、言葉も発さなかったため、買い物で声を出そうとしたときに声が出なかったという。かなり距離のある場所から、自転車で通ってこられていた。


私たちは、新生児育児の時に何が起きるのか、どうすればその問題を軽減できるのか、女性は、男性は、そのときどんな心構えを持ち、対応したらよいのか、あらかじめ知識を持っておくと、ずいぶん違うように思う。


「柏崎日記」を読むと、赤ちゃんを産んだばかりの母親はひたすら横になり、授乳することに専念。武士である夫は、妻の食事を用意し、掃除し、洗濯してから仕事にでかけていた。「産後の肥立ち」という言葉を男性もよく理解して、家事は武士である男性が全部になっていたことがよく分かる資料。


少し情報を追加すると、なぜ老父母の力を借りていないかというと、桑名藩から柏崎へ夫婦で異動になり、夫婦だけで子育てせざるを得なかったから。でも、男性側が、妻に授乳以外のことをさせようとしなかったということは、覚えておいてよいように思う。男尊女卑の激しい武士の世界でさえ。


結婚し、子どもが生まれるとなった場合、何が起きるのか。どうすれば問題を軽減できるのか。女性は結婚する前から情報に詳しく、詳しいがゆえに「理解のない男性とは恐くて結婚できない」となっている可能性がある。だとすれば、男性側に知識を広める必要がある。


結婚を増やし、少子化を食い止める方法、それは、男性側に、結婚し、子どもを育てる際に起きる様々な問題を教え、それを回避するにはどんな心構えが必要なのかを伝えることではないか。これができない限り、結婚も増えないし、少子化問題も改善に向かわないように思う。


追伸。

人によるかもだけど、40歳近くにもなると自分のことは大して楽しくなくなった。しかし一緒に楽しむパートナーができ、しかも満面の笑顔を見せる子どもが生まれると、人生は再び燦然と輝きだした。結婚も子育ても、うまく回る思考さえ整えておけば、ごっつ楽しいということを付言。

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