家族という関係性に社会的成功もお金も関係ない

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という俳句そのものの人物もいる一方で、社会的に成功した人の中には、差別主義的な人が少なくない。「功成り名遂げたらみんなからチヤホヤされるはずだ」と考えていたらしく、自分をチヤホヤしない妻や息子の妻(ここではあえて「嫁」と書いておく)に怒ったり。


実業家と言われる人、成功している人は、周囲からチヤホヤされがち。もちろん社員などの部下はチヤホヤするし、社長同士の会合でも互いに相手の功績を称え合い、夜のお姉さんたちはもちろんチヤホヤしてくれる。チヤホヤだらけの環境で、すっかり勘違いしやすいらしい。


で、大金さえ渡せば家族からもチヤホヤされるはずだと考えて、アテが外れるというパターンに陥る様子。ではなぜ家族の場合、お金を渡しても尊敬されないのだろうか?チヤホヤしてもらえないのだろうか?それは、家族とは、お金とはまた別の、特別な関係性を結ぶものだからだと思う。


世の中には、最初から金目当ての女性もいるかも知れない。そういう場合は、ある意味、お金さえ家に入れれば尊敬し感謝してるフリを演技してもらえるだろう。でもたぶん、社会的に成功した人物は、そんな仮りそめの尊敬や感謝を求めているのではないだろう。真の尊敬、感謝を実はほしいのだろう。


ところが家族の関係性は、お金とは全く異なる次元で構築する必要がある。お金なんか埒外に置いて、相手の様子をよく観察し、必要なアプローチを重ねる。時に失敗し、素直に謝罪し、対応を改める。そうした歴史を繰り返し、積み上げることで家族の歴史は紡がれていく。しかし。


「カネを稼いでいるのはオレだ、家族はそのおかげでメシを食えている、ならば自分に従属し、屈従するのが当然だ」という考え方をすると、家族は反発する。家族は奴隷ではなく、家族だからだ。なのに、まるで会社組織の社員であるかのような屈従を家族に求めてしまうらしい。


こうした人たちは「説教くさい」という、不思議なほど共通した特徴を示すようだ。社会とは厳しいものだ、お金を稼ぐのは大変なものだ、お前は社会の厳しさ、お金を稼ぐことの大変さを知らない、と説教する。しかし、その説教は「その両方を実現した自分を尊敬しなさい」という裏メッセージが貼り付く。


しかし、社会的な成功も、お金を稼ぐことも、家族からしたら「外側」の話でしかない。あなたと私の関係性の中に、それらが何の関係あるの?という話。それよりは、パートナーが料理を作っている間に子どもの宿題を見たりお風呂に入れたりする歴史を紡ぐことが大切。外側のなんか関係ない。


「偉そうにしたい、お金さえ出せば尊敬され、感謝されたい」という、「外の世界」で通じた方法は、家族では何の役にも立たない。なのに家族にそれをし、空回りする。その空回りへの苛立ちが、差別主義的な世界観を持つ原因になっているらしい。「カネを出してるのになんで尊敬しないんだ!」と。


有名な女優が実業家と結婚した、というので話題になることがあるけど、離婚する事例がとても多い様子。これは、結婚前こそきれいだ、とかチヤホヤする側になり、優しくもするけど、いざ結婚すると、「オレを尊敬しろ、感謝しろ」という欲求が頭をもたげるからではないか。


家族の関係性を築くのに、社会的成功やお金は全くと言ってよいほど役に立たない。家族として過ごすその一瞬一瞬で、相手と優しさの応酬ができるかどうかで決まる。これは、これから社会的成功を願う人たちは、みな知っておいた方がよいと思う。社会的成功は家族には何の関係もない。


社会的には平凡でも、なんならそんなに尊敬されていなくても、家族を大切にし、家族が苦しんでいればどうやってそれを和らげられるかと奔走し、寂しそうならそばにいるようにし、そっとしてほしそうなら距離を置き、遊んでほしそうなら一緒に遊ぶ。相手との関係性を楽しむ気持ちがある人は、


家族から、かけがえのない人として認知されるだろう。それが家族なのだろう。

社会的成功をおさめた人は、家族を社員扱いしてはいけない。自分をチヤホヤする商売人と同じとみなしてはいけない。あなたの目の前にいる人は家族だ。家族は、社員でも商売人でもない。優しさを求め合う関係性だ。


家族とは、決して一方的な関係性ではない。必ず双方向的な関係性だ。もし「お前なんかいなくても代わりはいくらでもいる」なんて考えを少しでも持つなら、それはもう家族ではない。家族はかけがえのない、代わりの効かない関係性なのだから。


社会的成功を収めた人の中には、自分こそがかけがえのない存在だけど、家族の人間はそうでもない、自分に従うべき存在だ、と捉える人がいる。こうした人は、どれだけ社会的な名声を上げようと、お金を稼ごうと、家族には恵まれないだろう。家族を家族扱いしていないのだから。


家族の中では、「あなたのおかげで自分がいる」という感謝と敬意が必要。なのに、社会的成功を収めた人は、家族と言えど感謝したり敬意を示したら負け、と考える人が一定数いる様子。でも、それでは「家族」になれない。家族は必ず双方向的なのだ、ということを、ぜひ弁えて頂きたい。

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