「インフレ=お金が腐る」ではない2つの理由

この記事を書いたら、何人かの方から「インフレで物価が上がればお金の価値は下がる。これはお金が腐るのと同じでは?」という指摘があった。
https://note.com/shinshinohara/n/n287a302530dc
しかし2つの点で異なるように思う。特に問題なのは、トマ・ピケティ氏の指摘する「r>g」だ。

ピケティ氏は自身の著作「21世紀の資本」で、経済成長(g)するよりもお金持ちの資産(r)の方が速く増えることを明らかにした。ということは、お金が信用創造などで増殖するスピードよりも、うっかりするとお金持ちが社会からお金を吸い上げ、ため込むスピードの方が速いという可能性がある。

お金持ちが社会からお金を吸い上げてしまったら、世間で流れるお金は減ってしまう。これだと、インフレは起きづらくなる。世界的に資金がジャブジャブだったのに大したインフレが起きなかったのは、それが原因だった可能性がある。それでいて、わずかな数の富裕層がお金で膨れ上がった。r>gだから。

もう一つの違いは、インフレで多少お金の価値が下がると言っても、額面は変わらない。1万円は1万円のまま。額面が変わらないことへの人間心理への影響は大きい。他方、「腐るお金」は放っておくと無価値になる。通常のお金はそこまでいかない。額面が保証する価値は残る。

そう考えると、インフレでお金の価値が下がることを「腐るお金」と同じ、とみなすことには無理がある。やはり、「腐るお金」は、従来の腐らないお金とは全く異なる動きをするだろう、と思われる。

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