BOSS OC-2に特別な価値はあるか?
普段自分はベースを弾く時、エフェクターを殆ど使いません。
(数はけっこう持ってますが)
使うのはプリアンプとコンプレッサーくらいで、これも殆ど音を“調整する”ツールですから人によってはエフェクトに数えない人もいると思います。
で、唯一“エフェクターらしい”もので使うのがオクターバーです。
オクターバーは原音に対して1オクターブ、ないし2オクターブ下の音程を加えてミックスできるエフェクターです。ピッチシフターの1種でもありますが、ジャンルとしてはオクターバーというジャンルで独立している感があります。
オクターバーはギタリストだけでなく特にベーシストにも人気のエフェクターです。オクターバーは単に低い音程を出す、というよりもオクターバー独自のサウンドをミックスすることでシンセベースっぽい独特な音色になるからですね。自分もこの“シンセっぽい”感じを求めて、使うことが多いです。
前置きが長くなりました。
本題は、そんなオクターバーの代表機種BOSS OC-2についてです。
BOSS OC-2について
BOSS OC-2は1982年に発売されたオクターバーで、2003年頃まで販売されたオクターバーの代表機種かつ元祖的なモデルです。
近年は中古市場でも値段が高騰しており、かつて5〜8000円程度で買えたこのエフェクターも2万円近くで取引されることも見られます。
特に初期の日本製“Octaver”はプレミアが付いていて更に高い値段で売買されることも。(後期の台湾製から印字がOctave表記に変更された)まあ、近年はなんかもうヴィンテージエフェクター扱いされてますね。
話を戻すとOC-2の最大の特徴は完全なアナログ処理によるオクターバー・サウンドです。
1オクターブ、2オクターブ下の音を生成するという処理はいくつか方法があるのですが、OC-2の場合は入力信号を矩形波に変換したのちフリップフロップIC(ロジック用IC)を使い、半波整流した波形を合成してからフィルターを掛けることでオクターブ下のサウンドを得ています。
この音声処理を行う際に矩形波に一度変換している音をミックスしているというのがミソで、当然オクターブ下として出てくる音は原音とは全く異なる音ですが、矩形波のシンセベースっぽい音になるという副次効果が得られる訳なんですね、
そういった要因があり、OC-2はアナログ・シンセサイザーようなベースサウンドが得られるオクターバーとして未だに根強く支持されています。
そもそも後継機種は…??
さっきちょろっと書きましたが、OC-2は既に2003年に生産終了した古代のエフェクターです。世界的エフェクターブランドのBOSS(神企業)のことですから、当然のように後継機種があります。
まずOC-3。
OC-3は2003年にOC-2と入れ替わりで発売された直系の後継機種です。
基本的な操作感はOC-2と同じですが、内部の音声処理はバッファ以外はほぼデジタル化され、ポリフォニックに対応したのが大きな変更点。
OCT2のコントロールはモードを切り替えることでコントロールできるパラメータが変わり、通常の2オクターブ目のレベル調整に加え、ポリフォニックモードのレンジ、更に歪みをオクターブサウンドに混ぜるドライブ・コントロールにもなります。これによってサウンドバリエーションが増えています。
また他の機材と組み合わせる用途を想定してダイレクト音だけ分岐して出力できるパラレルアウトもこのOC-3から搭載。
OC-2からまさに正統進化をしたOC-3ですが、当時としては漠然と評価が低く、不人気機種だったような記憶があります。
というのも、2000年代半ば(自分がエレキベースを始めた頃)はまだ中古のOC-2が大量に出回っており、しかも数千円の格安で入手できる時代で、OC-3をあえて選択する人が少なかった。
あと当時は内部回路のデジタル化という部分に妙なアレルギーを感じている人が多く(精度の低いデジタル製品がまだ多かった時代)、これが余計に前モデルのOC-2とアナログ神話を持ち上げることになってしまったように思います。
でもOC-3の音って全然悪くないんですよ。素のオクターバーサウンドはOC-2と比べるとかなり重厚でローエンドが伸びている感じで、これはこれで全然ありっていうかむしろ良いと感じる人も多いはず。
まあとにかく、音というかそれ以外の要因で後続機種が出てもOC-2の評価が根強いという時代が長く続きました。この期間はかなり長かったように思います。OC-3の後続機が出るまでに20年弱間が空いたので。
最新機種OC-5の登場
2020年、全世界のオクターバー界隈(?)に激震が走ります。
満を持してOCシリーズの最新モデル、OC-5が発売されました。
詳細はBOSSの公式ページを見て貰うとして。
OC-3からの変更点はざっとこんな感じ。
・追加されたVintageモードでOC-2のサウンドを再現!
・1オクターブ上の音もミックスできる
・ポリフォニックで一番低い音だけオクターブサウンドを掛けられる
・ドライブモードは削除
シンプルにまとまりつつも正統進化を遂げています。
特にやっぱり嬉しいのはOC-2を再現したVintageモード。この手のエミュレーションはシンセ界隈のリイシューでも度々「再現たってデジタルでしょ。どうせ似て非なる感じになるんだろ」と口酸っぱく言われるもんですが、このVintageモードの音は実機と比較してもOC-2と良く似ている!かなり出来が良いといっても過言じゃありません。
そして地味に嬉しいのが1オクターブ上の音もミックスできるようになったこと。単に1オクターブ上の音を足すことで音程をより聴こえ易くするだけでなく、1オクターブ上の音を出す単体のピッチシフターとして運用できること。実はいままでソロ・フレーズを弾く時に同じBOSSのPS-5という古いピッチシフターを+1octのためだけに使っていたのですが、OC-5にこの機能が搭載されたことで完全にPS-5が不要になりました。
また最新機種だけあって、ピッキングに対してのエフェクトの反応が非常に自然になっています。OC-2だとゴーストノートであったり、ピアニッシモ気味に弾いたフレーズだとエフェクトがしっかり掛かりきらないこともありましたが、OC-5は適切な感度になっていて細かいニュアンスも拾ってくれます。
ちなみにポリフォニックモードに切り替えると、OC-3っぽい重厚なニュアンスの音色になります。つまり、1台でOC-2とOC-3のどっちの音も出せるのがOC-5っていう感じです。ドライブモードは削除されましたが、前2モデルの音をほぼ完全にカバーできるのが本機といっても過言じゃないでしょう。悔しいだろうが仕方ないんだ。
まとめ
OC-2の音はほぼOC-5でカバーできるし、機能性に加えて使いやすさも向上している。これからオクターバーが欲しい、なんて思っているキッズは迷わずOC-5を買おう! バカ高い中古エフェクターに金を出している暇があったら好きなアーティストのライブでも行ったほうが得だ。
敢えて古く価格の高騰しているOC-2をわざわざ買う必要性はあんまりないよっていうのが個人的な結論。
最後にOC-2とOC-5のVintageモードの比較動画を上げときます。
どっちがどっちかは明言しません。
……ほとんど変わんなくない??