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【観劇レビュー #3】憧れの宝塚大劇場で観る"宝塚『ベルサイユのばら』-フェルゼン編-"

2024年7月6日~8月11日宝塚大劇場、8月31日~10月13日東京宝塚劇場で上演された"『ベルサイユのばら』-フェルゼン編-"にご縁をいただき、2公演(宝塚大劇場・東京宝塚劇場それぞれ1公演ずつ)観劇することができた。

今回は宝塚大劇場で行われた8月3日(土)15:30公演についてレビューしていく。

以下ネタバレを含む箇所もある。本作品をまだ未体験の方は自己責任で読んでほしい。



作品情報

原作は1972年〜1973年に週刊マーガレットで連載された池田理代子先生による不朽の名作「ベルサイユのばら」
フランス/ベルサイユを舞台にフランス革命前からフランス革命前期を描く。この作品でフランス革命を学んだ学生は多いのではないだろうか。勿論侍もその中の1人だ。
男装した超絶美人オスカルとルイ16世の王妃マリー・アントワネットの人生を描く。オスカルに恋心を寄せる幼なじみアンドレ、王妃であるマリー・アントワネットと恋に落ちてしまうスウェーデン貴族フェルゼン。この4人による切ない恋愛模様も語らずにはいられない。
宝塚では1974年に舞台化。それ以降定期的に上演する人気演目となっている。毎回主人公が変わることも楽しみの一つ。(オスカルとアンドレ編、フェルゼンとマリー・アントワネット編といった風に)今回は初演以来50年の記念すべきフェルゼン編だった。


📍アクセス

宝塚線宝塚駅で下車し徒歩約8分程。大阪・梅田方面からも約30分程。
駅から大劇場までを結ぶ「花のみち」は宝塚ファン憧れの地。季節折々の花とモニュメントが楽しませてくれる。


キャスト

フェルゼン                             彩風咲奈
マリー・アントワネット      夢白あや
オスカル                                 朝美絢
アンドレ                                 縣千

この公演で退団が決まっていたフェルゼン役雪組トップスター彩風さん。本当に美しかった……後ほどみどころで触れる予定だが、退団公演らしい演出に今回初めての雪組にも関わらずぐっとくるものがあった。2013年の新人公演の際も主演であるフェルゼン役を演じていて、ハマり役とはこのことなのだろう。一挙手一投足からフェルゼンそのもので、どのくらいの時間を費やし研究して磨いてきたのだろうかと彩風さんの努力が垣間見えた気がした。

オスカル役は彩風さん退団後、次のトップスター就任が決まっていた朝美絢さん……本物のオスカル!?!…………登場から眩い光で発光していた。朝美さんに当たるスポットライトが反射して、当時2階席で観ていた侍自慢の視力両目3.0の目が危うく失明するところだった。とにかく光っていた……あの現象は常時そうなのだろうか。情報求ム。

朝美さんの光で目を失明しかける侍
見えないレフ板があった

みどころ

①フェルゼンと王妃マリー

母の愛蔵書

私が初めてベルばらに触れたのは、自称"昭和の漫画オタク"である母にすすめられた中学生の頃。母は時折「これを読みなさい」と自分の好きな漫画をすすめてくる。その経験が意外と(?)役に立っており、源氏物語を漫画にした「あさきゆめみし」を読んだおかげで古典は点数が高かった。ベルばらも例外ではなく、世界史が苦手だった侍もフランス革命の単元だけは得意だった。
そんな少女漫画という枠を超え最早世界史の教科書として、根強い人気を誇るベルばらを初演から50年も上演してきた歴史ある公演。休憩時間も含め約3時間という限られた中で、フランス革命前〜マリー処刑までを描かなくてはならない。(限りなく説明は削ぎ落とし、人物紹介もないまま物語は進んでいくので出来れば原作は履修済が好ましいだろう。)
原作の中でのフェルゼンとマリーは、最期まで愛に生き愛に死んでいった。そんな盲目的な二人が包み隠さずに言うとあまり好きではなかった。この舞台を見るまでは。

・原作との違い
<
原作>
・フェルゼンが王妃マリー、国王一家の逃亡を手助け。失敗に終わる。
・最後の夜二人は結ばれる(おい、と思っていた)。
・ジャルジェ将軍(オスカルの父)がフェルゼンの願いを叶え、最期の面会と逃亡計画を告げるがマリーは拒否。

<舞台>
・フェルゼンが助けに行くが間に合わず。
・ベルナール・ロザリー協力の元、フェルゼンが最期の面会と逃亡計画を告げるがマリーは拒否。

原作では逃亡劇が失敗に終わり、祖国スウェーデンに戻ったフェルゼンは民衆の手によって虚しく終わる。それが全面カット。マリーを失い暗転して終演。
今にもフェルゼンの胸に飛び込みたい気持ちを押し殺し、あくまでもフランスの王妃として民衆に裁かれることを選んだマリーの選択が、より気高く尊く見える脚本が良かった。
処刑台へ一段一段ゆっくりと登るマリーの姿は、儚くも力強く感じられた。あの演出はお見事。
この一連の流れで一気に私は二人を好きになった。


②これが悲しいさよならじゃない

集大成を感じた激エモお気に入りはフィナーレの曲「セラビ・アデュー」だ。

セラビ・アデュー
忘れ難き人
セラビ・アデュー
忘れ難き日々
さよならだけが人生と
思い知るとき人は愛を
抱き締めるのか
セラビ・アデュー
セラビ・アデュー
私の中にあなたは生き続ける
セラビ・アデュー
セラビ・アデュー
あなたの中に私は生き続ける

パンフレットより

“C'est la vie”(セラヴィ)はフランス人がしばしば口にする慣用句。日本語に直訳すると「これが人生だ」くらいの意味だが、「人生ってこんなものさ」といったあきらめや達観のニュアンスを帯びて使われる例が多い。人生は楽しい事や良い事ばかりではない。

綾部市 「善聞語録」よりhttps://www.city.ayabe.lg.jp/0000000610.html#:~:text=%E2%80%9CC'est%20la%20vie%E2%80%9D,%E8%89%AF%E3%81%84%E4%BA%8B%E3%81%B0%E3%81%8B%E3%82%8A%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%84%E3%80%82

Adieu(アデュ)」とは、永遠の別れを告げる挨拶です。
この単語を聞いたことがある方は多いかと思いますが、基本的にフランスで別れ際の挨拶に「A dieu」は使われません。
この理由は、「dieu」とは「神」、つまり「A dieu」とは「神のもとで会いましょう」=「永遠の別れに/永遠にさようなら」の意味が含まれるためです。

https://frazou.com/salutation-difference/

場面としてはマリー・アントワネットが処刑台に向かい物語終演。彩風さんが銀橋の真ん中に立ち、その周りを在籍生が囲みアカペラで合唱する。
この演出を考えた植田先生・谷先生本当にありがとうございます。
ゆっくりゆっくりと彩風さんが一人一人の顔を見ながら回る。きっと色んな思いが込み上げてきているんだろうなと感じさせる表情がまた良い。
愛するマリーや大切な友人であるオスカルやアンドルに先立たれ一人残されたフェルゼンが「これが自分の人生か」と悲しい現実を静かに受け止めたようにも感じる。宝塚から離れる彩風さんを表しているともとれる演出だ。
残される在籍生の表情も感謝と寂しさと入り交じった表情。長年彩風さんを応援していたファンは涙で前が何も見えなかったのではないだろうか。
ただ、これが永遠の別れじゃないと思いたい。フェルゼン達は確かに亡くなってしまい、雪組トップスターとしての彩風さんにはもう会えない。しかし、新しいトップスターを迎え新たな雪組として道は続いていく。彩風さん自身もこれからの仕事を通じ、私達に今までとは違う色んな姿を見せてくれるだろう。
希望に満ちたさよならだ。

シャンテの日比谷しまね館とのコラボ
しっかり見た

まとめ

チケット&公演情報

チケット代は2階7列81・82番S8800円。
今回で初めての宝塚大劇場だったわけだが、印象としてはデカい。例えば宝塚大劇場の1階席は最後尾が29列、横は92番(R3)、収容人数は2550名。東京宝塚劇場は1階席は最後尾24列、横は69番、収容人数は2069名。横にも広い分、個人的には宝塚大劇場の座席はとても見やすかった。

舞台の見え方はこんな感じ

ちなみに東京宝塚劇場での座席は1階席10列47・48番S9500
第二幕の客降りでは再び失明するかもしれないくらい近かく、生まれて初めて声に出さずに悲鳴が出る(?)という経験をした。

舞台の見え方はこんな感じ

おすすめ度

"The 王道"宝塚のショーと言えば!という醍醐味を詰め込みまくり、初見・昔からのファンも思う存分楽しめる作品。
フランス貴族達の煌びやかな衣装や細かいセット、華やかな男役・女役の一糸乱れぬパフォーマンスは"これぞ宝塚"。唯一無二。原作ベルばらファンも大満足なのではないだろうか。
残念ながら彩風さん演じるフェルゼン編は幕を閉じてしまったが、またいつか新しいパワーアップしたベルばらを見る日を心待ちにしている侍である。

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