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マギレが少なくなった世代【学力の地域格差、人手不足etc】
Xで
「地方の子供の学力は低下しているが、首都圏では逆に賢くなっていて中受が盛ん(らしい」
という趣旨のポストが流れてきた
これが小中学生のことだとすると、一つの仮説が思い浮かぶ
「(特に女性の)大学進学率上昇で、優秀な人は地方を出て行った」
田舎に住んでるとそれを感じることがたまにある
大学進学率上昇で優秀な人が地方に残らない
団塊ジュニアの時代(50代前半)くらいまでは、
「女の子だから短大、専門学校で十分」
という風潮がまだ残っていた
また、金のない家庭が大学進学する心理的ハードルが今よりもかなり高かった
しかも田舎の場合、どこの通学制大学に行くにしろ下宿が必須という地域があるからなおさらである
結果、大学へ行かなかった彼女らの多くは地元で就職して地域を支えていた
表面的な学歴は低くとも、地頭がいいので優秀な子供が生まれる可能性もある
今のアラフォーあたりの地方出身の優秀層は彼女たちの子供も多かった
本人的にはもちろん不完全燃焼な現実だっただろうが、
マクロでみれば労働者としても、母親としても貴重な人材としての役割を果たしていたのは間違いない
また、ロスジェネはよい就職が見つからずに地方にリターンしたケースもあるだろう
それらが「優秀な人が下支えしてくれている」という感じになっていた
しかし、今のアラフォー世代(筆者も含む)は違う
特に氷河期解消後の83年以降生まれ(=現41歳以下)
優秀だけど女だから短大でいいや、といった風潮は田舎でもだいぶ減っていた
優秀な人が都市部の大学に出て、そのまま都市部に就職する
そのため、田舎には能力的に都市部に就職できなかった親御さんが多くなる
優秀層は、自営業者の子供、医者、医療関係者、公務員くらいといった感じだ
数としては少ない
県庁所在地なら地元国立卒インフラ系や転勤族などがいるが、
給料の高い産業(僻地大手工場など)がない非県庁所在地からは学力が高い親世代の多くは消えている
マクロでみれば(つまり個別事例の例外はあるということ)、優秀な親のほうがある程度優秀な子供を産みやすいので、優秀な親世代が激減した地方では学力が著しく低下したのだろう
学力が高い層が家庭の事情で地方に残り、結果として地方を支えるという「マギレ」が大幅に減り、その都市の市場経済価値に見合った人だけが残ったのだ
地方はだいたい3つに分けられる
大きく地方といっても場所によって事情が違う
ここでは大きく3つに分ける
都市部
県庁所在地または大卒が多く就く産業がある都市
それ以外
だいたいこの3つのスペクトラムで説明できるだろう
もちろん1に近い2(政令指定都市など)とか、2に近い3とかはあるが
県庁所在地には、転勤族がある程度来る(県によって人数の差はある)
転勤族の多くは大企業に就職した大卒なので優秀
それゆえ地方の中ではまだ学力低下がおさえられやすい
それ以外でもある程度の仕事はあるので、高学力者でも県庁所在地を選ぶケースはあるだろう
それ以外になると外からの流入はほとんどなくなる
そういえば、筆者は3に近い2の地域の中学校から内申が壊滅してて行ける学校が指導困難校しかなかったため、田舎に引っ越して高校時代を過ごしたが、
高校の同級生と転校生の話題になったときに、
(市内や県内からならともかく)、遠くから親の転勤などの理由で転居してくる人はほとんどいないと言ってたのを思い出した
なお、滑り止め私立である偏差値約55の筆者の高校ですら、ほとんどの同期が地元に戻っていないと思われる
トップ高校ならなおさらであろう
早慶の関東占有率が増えたのは金銭面だけの問題ではない
早慶の合格者の4人に3人が東京圏出身という新聞記事が出た
これは一般的に「経済格差」「上京に金がかかる」のせいにだけされがちだが、それだけではないと考える
勉強ができる親世代が上京してしまったので、地方では学力が高い生徒が現れる可能性が低くなった
記事中でも、龍谷大学の松岡准教授が
社会経済的に恵まれた家庭が集まっている東京圏における教育熱の高まりがあるのでは
と分析されている
都市自体の地の利(受験に有利)だけでなく、金銭的能力的に恵まれた家庭が都市に集中しがちということだ
筆者の高校があった地方の地域トップの自称進からは東大合格者は消えている
筆者の時代は年数人いたが、優秀な親御さんが都会に出ていって東大に合格できるような御家庭が地方にはいなくなっているのだろう
医師の子供は当然ながら医学部指向が強いから優秀でも東大に行かないし
地方非県庁所在地で結果を残してる自称進は、大手の工場など優秀層を集める装置がある地域にある可能性が高いのだろう
筆者の地域にそれはない
ただ、優秀な親御さんがある程度残ってる、
関西圏、愛知県からはもっと来てもおかしくはないのになとは思うけど
もしかしたら、早慶の地方合格者4分の1の大半が関西圏、愛知県で、ほかの地域はかなり稀ってことなのかもしれないけども
人手不足もマギレが少なくなったことが原因
人手不足も、優秀な人が家庭環境や性別などの影響なく、レベルが高い場所に行きやすくなったことが要因だと思う
就職氷河期は、優秀な人が就職できずに接客業でバイトということが結構あって、バイトのレベルが高かった
今は賃金や格に見合った人しか来ない、か募集を出しても誰も来ない
また、主婦のバイトも女性の正社員化で減っている
壁の影響で長時間労働ができないというのもあるだろうが
女性や高齢者の就業率が上昇したことによって地域のボランティアが不足しつつあることも問題になっていたりする
(例えば民生委員など)
老若男女の大半が上(東京の文脈のある大手企業など)に行こうとして下(とされやすい界隈)が地盤崩壊を起こしているのだ
余談
家庭環境等を問わず望む進路に進めると、能力によって職業がよりきっぱり分かれてしまうという副作用が出るのは当時はあまり考えてなかったけどそりゃそうだなと今は思う
大学進学率上昇=地方からの人口流出
だ
地方(特に非県庁所在地)選出の政治家が大学進学を煽るのは選挙区の振興に対する不利益を誘導する政策を推していると言って差し支えないのだが…
少なくとも筆者の田舎では公務員か資格職以外で文系大卒を活かせる仕事は少ない
国公立大学未満な田舎の貧困者が好んで大学に行きだしたのは大学進学率が上がり始めた2010年ごろからの感じがするので、そこでまたもう一段変化があるかもしれない
だいたい、そういう同級生や知り合いの多くは筆者の肌感では地元の専門学校か高卒就職といった感じだ