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【終わりに気付く、物語】 Review of #DOC乃木坂46
Overture
これは、シンデレラストーリーなんかじゃない。
剥き出しの心を肯定され、否定され、削られる。
気を抜く一瞬すら見られている。
偽っても、見破られる。
自分をさらけ出し、
自分と向き合う機会に、否応無く晒される。
そういう世界を、7年前から生き抜いてきた。
これは、上り詰めた先にあった、輝かしいステージの上の物語。
自分の"終わり"と向き合う、宝石たちの物語。
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既にプロフェッショナルとなってしまった彼女たちの、一体何を撮れば良いのだろう。
作中冒頭、監督はこのような言葉を載せていた。
確かにアイドルのドキュメンタリーと言えば、
無名だった彼女たちが、どうやって輝かしい結果を掴んだか。
その過程、シンデレラストーリーを追うことで、光と影、栄光と途方もない努力が感動を呼ぶもの。
少なくとも私は、そう思っていた。
私が乃木坂46というグループに興味を持ったのは、2017年の半ば。
彼女たちは既に、何千何万のファンを魅了するスターだった。
今、輝かしいステージで可憐に踊る彼女たちの、一体どこに影があるのだろう。
この映画を観る前は正直、本編で何が描かれるのか皆目見当もつかなかった。
それがどうだ。
劇場から出た時、私は彼女たちに畏敬の念を抱かずにはいられなかった。
奇遇にも、今作の主人公の1人である西野七瀬さんと私は、同じ1994年生まれ。
同じ時代を生きる1人の人間として、彼女に深い尊敬が込み上げてくる。
彼女らと同じ時を、これ程強く私は生きてきただろうか。
そう思わずには、いられなかったのだ。
世界で一番、孤独な…
「アイドルは見られるのが仕事」
こんな言葉を口にしたり、耳に挟んだことのある人は少なくないと思う。
私もそのうちの1人だ。
しかし、この映画を観ながら痛感することになる。
「見られる」という行為が、どれほどの力を持っているのかということを。
彼女たちの日常は、常に誰かの目に晒される。
ライブや握手会といったイベントや、テレビ、ラジオ、雑誌、ブログといったメディア露出。
贔屓目もあるかもしれないが、今や乃木坂の名前を見ない日はないといっても過言ではないだろう。
だが、想像してみてほしい。
四六時中、一挙手一投足を誰かに見られている。
貴方がもしそんな立場だったら、果たして耐えられるだろうか。
舞い込んでくる仕事、過密なスケジュール、
そして、一方的に多数の第三者に知られている環境。
こんな極限状態で、自分を取り繕うことなんてできるはずもない。
彼女たちはいつも生身で、自分の心すらさらけ出して輝く。
無理をした分だけ身体は重くなり、精神は消耗する。
1つ何かを終えても休む間などなく、すぐさま次の現場へ向かう。
疲労の色など見せようものなら「プロなのに…」という容赦のない視線。
それでも尚、アイドルとしてあろうと最大限の光を放つ。
惹かれないわけがない。
あの輝きは紛れもなく、彼女たちの命の輝きなのだから。
何度も生身の自分でぶつかり、削られ、磨かれた光。
原石だった彼女たちは、こうやって宝石へと変わっていったのだ。
乃木坂という、居場所
密着し、乃木坂のメンバーを観察していた監督から出てきた一言が、とても印象的だった。
メンバーの仲が、異常に良い
グループアイドル、しかもこの規模ともなればパフォーマンスのポジションやメディア露出といった、明確な差が生まれる。
「あの子より前に出たい…!」「私の方が可愛いのに…!!」
自分を魅せることを生業にしているのだから、現実問題としてそういったいざこざは少なからずあるのではないか。
その闘争心のようなものが、グループの熱量を上げているのではないかと思っていた。
だが、違ったのだ。
キャプテンの桜井玲香さんは作中で「家族のような感じ」だと表現していた。
今のメンバーにとって”乃木坂46”というグループは、中で闘う為の場所ではない。帰ってくるための居場所なのだと。
彼女たちにとってグループが、外の世界で全力を出す為の、拠り所となっている。
外でどれだけ傷ついてきたとしても、
自分がどれだけ尖ってしまったとしても、
ここに帰ってくれば、受け入れてくれる皆がいる。
メンバーが今の乃木坂というグループに感じているのは、大きくなったからこそ生まれた、計り知れぬ安心感なのかもしれない。
そう思った。
登ったからこそ、時を知る
全国ツアー、アリーナライブ、武道館。
レコード大賞、紅白歌合戦…
大きすぎる目標を次々と成し遂げ、スターダムを駆け上がってきた乃木坂。
目標があるうちは気づかない。
あるいは見て見ぬ振りをできること。
それが、メンバー1人1人の未来だった。
今が続けばいいと願うメンバー
その先を描くメンバー
高め合い、登ってきたからこそ、気づく。
この場所には、永遠にはいられないのだと。
彼女たちは知ってしまった。
みんなとなら、どこまででもいける気がする。
でも一人一人が見ていたものが、必ずしも同じ未来とは限らないのだと。
この時が有限であるとわかった時に、人は変わるのかもしれない。
私の人生の中で、一番キラキラしてる時間だと思う
自分の卒業を悲しんでくれる
自分を慕ってくれる
そんな人ができるなんて思ってもみなかった
そう言いながら西野さんは、はにかんだ。
一度に進める道はひとつしかないけれど、
そのひとつは、自分が予想もしてなかった未来に繋がっているのかも。
彼女を見ていると、そう信じたくなった。
これは、栄光の先にある、”終わり”を知った彼女たちの物語。
分からない未来に悩み、それでも刹那に輝こうとする、
ありふれた願いの、物語。
サムネイル:映画公式HPより
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