脳内モデル (1) 概念図から生理構造へ
概念図の発展
生まれて初めて参加した研究会は、2009年10月24日の思考と言語研究会。その研究会のために、僕はシャノンの一般通信モデル(下図)の左右両端にある送信者と受信者を、真ん中にもってきたトランシーバーモデル(トップ画像の図)を作った。これは、僕が脳内の部位や分子構造を考える土台となった。こういうモデルを10種以上つくって、試行錯誤を繰り返し、概念図から生理構造へと発展していった。
複雑なデジタルネットワークを解析するためには、一般通信モデルでは足りなくなって、2010年12月17日のインターネット・アーキテクチャ(IA)研究会から、インターネットのレイヤ解析に用いられるOSI参照モデルも使って考えた。OSI参照モデルは、ローカルエリアネットワーク(LAN)が出発点にあるモデルで、回線雑音が描かれていない。OSI参照モデルに回線雑音を書き入れると、一般通信モデルに論理層を付け足すのと同じ概念図ができあがる。
記憶の生理構造に向かって試行錯誤
僕は、2011年1月に情報処理学会自然言語処理研究会で、ペンフィールドの実験結果を報告し、それからも脳内の生理メカニズム、論理メカニズムについて、試行錯誤しながらモデル化する作業を続けた。
2011年3月10日と11日につくばの産総研で開催された電子情報通信学会 パターン認識とメディア理解(PRMU)研究会(テーマは「文字・文書の理解と認識」)で、僕は「書き言葉はアナログ処理され、話し言葉がデジタル処理される-シャノン情報理論とパブロフ「条件反射」概念への誤り訂正要求」と、「言葉の意味のデジタル処理とパターン認識 -正しい言葉で正しく思考した記憶が抽象概念の意味となる」という2本の発表をした。
1日だけ有給休暇を取得しての参加だったので、初日午前中に発表を終え、夜の懇親会には参加せず東京に日帰りした。おかげで出先で東日本大震災を被災せずにすんだ。
文法語のベクトル性
5月には、音声言語処理研究会で、「チョムスキーに「生成文法」という幻想をいだかせた神経細胞のデジタル・ネットワーク・オートマタにもとづく「二重符号化文法」」という発表をした。(情報処理学会研究会報告 Vol.2011-SLP86(NL-201) No.16)
東大工学部6号館で開かれた研究会では、文法語がベクトル性をもつことについて論じた。自分の発表の番がくるまでの時間、日本語助詞の文法的修飾をパワーポイントのオートシェイプを使って図化して遊んでいた。下の図はその日の発表のなかでも使ったが、はたしてこの図に何か意味はあるだろうか。
6月に東大で「ラテントダイナミクス(隠れた動力学)2」という研究会があり、予稿のページ数に制約がなかったので、それまでに考えたことの整理のつもりで21ページ書いた。翌年2012年9月に「ラテントダイナミクス3」があり、それには36ページ書いた。この2つの予稿論文とパワーポイントはウェブ上で今も公開されている。この頃に「脳室内免疫細胞ネットワーク仮説」ができあがった。
2009年のトランシーバーモデルから、丸3年かかった。