シンデレラ体重の憂鬱 〜サイクルヘルメット編〜
改正道路交通法の施行により、サイクルヘルメット着用の努力義務化から9ヶ月が経った。
たしか、一年前の年末年始あたりから報道がなされ、バイクを保有していない身としては初めてヘルメットを身につけるかどうかの選択肢を与えられた。
私は年中ふらつきに悩まされている。
自称栄養が足りていないから。
医者曰く、ストレスが原因ではないか、と。
それでも生きていかなければならない。私の心身は生きる目的に溢れている。
ふらつきの面では、歩行に比べれば自転車に乗っていた方が安定する。
細く頼りない脚よりも自転車の金属の方がブレにくくて当然だ。
実は歩行時の方がよっぽどヘルメットが必要だったことが判明し、報道を機にサイクルヘルメットを購入しようと決意した。
きっと3〜4ヶ月後の23年4月にはテレビを見て購入者が殺到し価格も高騰すると想定、私は報道があってすぐ自転車屋に向かった。
いざ試着をしてみて現実を知らされる。
緩い。
アゴ部分のサイズを調整し直し、頭にはめて、アゴ部分を固定して、頭を少し振ったらズレる。パーツが耳に当たり、これでは事故を起こす前に耳が取れる。
そもそもあごヒモの問題ではない、頭部のサイズだ。鶏の卵のパックの中にうずらの卵を入れる業者はいないだろう。
大人用サイズは使えないな、不本意だが子ども用を着けてみよう。
浅い。
まるでハンチング帽だ。
後頭部も側頭部も覆うことができていないので、非常事態時に頭を守ってくれない、本末転倒だ。
私は子どもサイズにも大人サイズにも当てはまらない半端者。
半端者のためのヘルメットなどこの世にない、と塞ぎ込んで9ヶ月、雑貨屋に寄ったら、キャップタイプのサイクルヘルメットを見つけた。
帽子のキャップ同様、後頭部のヒモ部分でサイズ調整が柔軟にできる。
自転車屋で見たサイクルヘルメットに比べるとスポンジも入っていないし、頭を守るプラスチック素材もサイズ調整のために人力で歪められるほどの薄さだ。
しかし自転車屋のヘルメットとは違い、頭部を固定できる。
固定したヘルメットの上からこぶしで頭を叩いてみる、衝撃が来ない。
これが・・・これが、ヘルメットというものなのか。
これと比較すると小学校の頃の防災頭巾は気休めにしかならないな、あれの主な使途はあくまで座布団だ。
いや、防災頭巾を被って自転車に乗っても防寒にしかならないし、昨今の努力義務も果たせない。防災頭巾はガラス片や火花から身を守るんだ、一緒にしてはならない。
なぜ防災頭巾を思い出したのかと言うと、それだけ頭を守るためのピッタリサイズのグッズを身に付けられる機会が稀で、それが防災頭巾以来だったからだ。
平素よりオシャレや日差し除けのための帽子も、サイズが合っていない状態で身につけている。
ニット帽だって風に吹かれて飛ばされるんだ。
購入したサイクルヘルメットは、転倒や衝突による頭への衝撃を緩和するもので、完全に頭を守ることはできないと書いてある。
自転車屋のサイクルヘルメットがどうかは分からないが、これで充分だ。何よりサイズが合っているのだから。
さらには、特に破損が見られなくても3年程度で新しいものと交換とも書いてある。
プラスチックは経年劣化するし、仕方がない。
問題は、3年後の世界にサイズの合うサイクルヘルメットが売られているかどうかだ。