歴史的球場と100年の森
私が実際に目の当たりにしているだけでも、世の中はあちこちで再開発が進められている。
白い簡易的な壁で覆われたその奥ではガッチャンガッチャンと工事の音が鳴り響き、外側では「ただいま○○db」と表示されている。
同時期にあちこちで工事している人手を少しでも良いから家具家電の搬入搬出業者に回してほしい。
引越しのタイミングと家具家電の搬入搬出のスケジュールが合わず、引越し後に不便な生活をしたり、引越しそのものを諦めている私もいる。
自分の体感では、10年前はここまで酷くはなかった。
あと何年か経って再開発ラッシュを終える時が来たら、暮らしやすい世の中が戻ってくるのだろうか。
再開発も本当は暮らしやすくするための計画のはずなのに、現状完全に不便を感じている。
歴史的建造物はほぼ不可逆。
一度壊したらそこで試合終了だ。
それが100年かけて造られるものなら、再びお目にかかれるのは100年先。
今を生きている大人は全員力尽きている頃だ。
首都圏生まれ首都圏育ち野球好きの自分も行ったことがない、神宮球場。
山手線の内側、表参道にほど近い都心の一等地に、広い空が拝める贅沢な球場が今の時代にあることに少し驚いた。
都心のビル群の中を歩けば、ビル風というものがいかに容赦ないか体感することができる。
花粉症シーズンの頃にビル群の中を歩いて強風でマスクが浮きっぱなし状態になり、もろに花粉を吸い込んで体調を崩したことがある。
私はビル群が生み出すビル風の罪をよく知っている。
神宮球場とその周辺の再開発は、ただ球場の改修だけでも良さそうなものだが、なんせ高層ビルは儲かる。
日本経済のためには必要な建物という認識はしている。
それなら縦横に広いビルを建て、その上に球場を作ったらどうだろう。
それならばビルとして何らかの収益を上げつつ、屋上の球場からは存分に空の景色を楽しむことができる。
神宮球場のデザインそのままであれば、何とか「ベーブルースもプレーした球場」の威厳も残せる、かもしれない。
素人の発想ではこれくらいのことしか思い浮かばないが、暮らしやすさと風情、人材のバランスを保ちながら世の中が回っていけばみんなが幸せでいられる気がしている。