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鍼灸業界を変革するための5つの重点施策


5つの提言

今、鍼灸業界は大きな変化の時を迎えています。これまで培ってきた技術と伝統に誇りを持ちながらも、私たちが乗り越えなければならない課題がいくつもあります。業界の分裂や認知度の低さ、企業や社会とのつながりが十分でない現状は、これからの未来に向けて私たちが変わるべきサインだと感じています。

鍼灸はただの治療法ではありません。人々の体と心に触れ、その奥深くにある癒しと回復の力を引き出すものです。今こそ、鍼灸の素晴らしさをもっと広げ、より多くの人に届けるために、業界全体で新しい一歩を踏み出す時です。

この提案は、業界をより強く、そして未来に向かって成長させるための5つの具体的な施策です。それぞれの施策は、私たちが今直面している問題を解決し、次の時代へと進むために必要なものと考えています。

◯日本鍼灸師会と全日本鍼灸マッサージ師会の合流

背景・課題
現在、鍼灸業界は二つの主要団体に分裂しており、それぞれ異なる方針で活動しているため、全体としての政策提言力や業界の統一感が欠如している。このまま分裂が続けば、業界全体の影響力がさらに弱まる恐れがある。

目的
鍼灸業界の分裂による弱体化を防ぎ、団結力を強め、業界全体の影響力を強化するため、両会の合流を推進する。

施策案 
1.理事の兼任やオブザーバーとして理事会に参加させ、理事同士の交流を深める。
2. 共同プロジェクトを通じて、信頼関係を構築し、合流に向けた土台を作る。
3. ガバナンスの違いを調整し、双方の運営方法を尊重しつつ、透明性の高い統合体制を構築する。
4. 合流までのロードマップを設定し、5年、10年の長期計画で段階的に統合を進める。

◯企業内鍼灸施術の定着化とインセンティブ施策

背景・課題
企業の健康経営において、従業員の健康管理やストレス軽減に鍼灸が効果的であるにもかかわらず、まだ導入が進んでいない。また、鍼灸師の職場が限られており、収入基盤が弱いという課題もある。

目的
企業の健康経営を支援し、鍼灸業界の認知度向上と収益基盤を強化するため、企業内での鍼灸施術を定着させる。

施策案
1. 企業内に鍼灸師を定着させ、ヘルスキーパー制度を拡充。視覚障害者の鍼灸師も活用し、多様な働き方を推進する。
2. 企業の人事や経営層に対して、鍼灸の効果を示すデータや成功事例を提示し、導入を促す。
3. 健康経営を実践する企業に対し、鍼灸院での特典や割引を提供するインセンティブ制度を構築。
4. 成功事例をPRし、他の企業にも広める。

◯メディア戦略委員会の設立

背景・課題
鍼灸の効果や安全性に関する正確な情報がメディアを通じて十分に広まっておらず、一般の人々や医療従事者にも理解が進んでいない。また、情報発信が個別の鍼灸師に任されており、一貫性に欠ける状況にある。

目的
鍼灸の認知度を国内外で高め、一貫した情報発信を行い、業界全体のイメージを向上させる。

施策案
1. マスメディアが鍼灸を取材しやすい窓口を設置し、国内外に向けて鍼灸の効果や科学的な裏付けを発信。
2. 統一されたメッセージを作成し、鍼灸に関する情報のバラつきを防ぐ。
3. 鍼灸師や理事に対してメディア対応訓練を行い、取材時に一貫した専門的な情報提供ができるようにする。
4. 国際的なメディア戦略を強化し、日本鍼灸をグローバルに発信していく。

◯政策法制委員会の設立

背景・課題
現在、鍼灸に関連する政策は一部の人の判断に基づいて提言されており、業界全体としての戦略的なアプローチが欠けている。また、あはき法の改正や保険適用の拡大など、業界にとって重要な政策課題が未解決のままになっている。

目的
鍼灸業界全体の合意形成を図り、戦略的かつ一貫した政策提言を行うため、政策法制委員会を設立する。

施策案
1. あはき法に詳しい専門家を含めた委員会を立ち上げ、鍼灸業界に必要な政策を立案。
2. 保険適用拡大や教育制度改革など、優先度の高い政策を決定し、具体的な提言書を作成。
3. 政治家や行政機関との連携を強化し、政策実現に向けたロビー活動を行う。
4. 定期的に業界全体の声を集め、政策提言の方向性を確認・調整する。

◯鍼灸専門学校との関係強化と学生会員の拡充

背景・課題
現在、鍼灸業界と鍼灸専門学校との関係は良好だが、学生会員の加入率は十分とはいえない。また、学生が業団に積極的に参加する機会も限られているため、業界全体の次世代育成が課題となっている。

目的
鍼灸専門学校との関係をさらに強化し、学生会員の加入率を全国の鍼灸学生の60%に引き上げ、次世代の鍼灸師育成を促進する。

施策案
1. 鍼灸専門学校に対し、業団の活動やメリットをアピールし、学生会員の加入率を引き上げる。
2. 学生が参加できる勉強会や体験学習、インターンシップを強化し、業団との関わりを増やす。
3. 学生の興味やキャリア志向に応じた活動を提案し、個性に合ったサポート体制を整える。
4. 入会後も学生をフォローアップし、メンター制度を通じて業界の現場経験を積めるよう支援する。

自ら考え切り拓く

鍼灸業界は、私たち自身の力で未来を創り上げることができると信じています。現状に甘んじることなく、分裂や停滞に立ち向かい、業界全体で一丸となって、次世代により良い環境を残していく責任が私たちにはあります。だからこそ、この5つの施策は、未来を見据えた挑戦であり、業界全員が力を合わせて進むべき道標だと考えます。

それぞれの施策には、私たちが直面している課題を解決するための具体的な手段が含まれています。業界の統合、企業との連携、メディアを通じた発信、政策提言、そして次世代育成——これらはすべて、鍼灸が単なる技術にとどまらず、人々の健康と幸福を支える文化として根付いていくための基盤となるものです。

未来は、待つだけでは訪れません。自らの手で切り拓くものです。鍼灸師として、私たちは人々の体に触れ、心に寄り添うことで、未来を感じ取ることができるはずです。この施策に込められた思いは、まさにその未来を輝かせるための一歩なのです。だからこそ、今この瞬間、私たち一人ひとりが勇気を持ち、その一歩を踏み出し、共に進んでいくことが重要です。

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