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坂の途中の草

5年がかりで取り組んできた仕事が、今年の末くらいにゴールを迎える。

身の丈を超える仕事で、毎回毎回、専門家と学術的な部分での協議をしながら、這うような思いで続けてきた。

その協議も、一応はきょうで最終回。

線路沿いの坂道を駅に向かって歩いていたら、アスファルトの隙間から生えた名も知らぬ草が、生き生きと逞しく茎をのばしていた。

路傍の草を見るといつも、「雑草という名前の草はないんだよ。それぞれに名前がある」と侍従長に語った、昭和天皇の言葉を思い出す。

坂というものは上り下りの通路ではなく、なにもなしえていない自分の、宙ぶらりんだけどれど十分に前向きな気持ちをどれだけ持続しうるか、それを静かに試す場である。(『坂を見あげて』堀江敏幸)


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