小学生の頃の、笑ってはいけない「ちいちゃんのかげおくり」朗読授業
小学生の頃のとある光景をふと思い出しました。小学3〜4年くらいの頃の国語の授業での一コマです。
その日は「ちいちゃんのかげおくり」というお話を題材にした授業でした。
「ちいちゃんのかげおくり」というのは、戦時中に健気に生きる女の子とその家族を描いた、とても切なくシビアなお話です。
真面目な性格な先生だったので、少し授業もピリッとしていました。
ちいちゃんのかげおくりの朗読をCDで聞くことになりました。先生がラジカセの再生ボタンを押します。
「かげおくりという・・あそびをおしえてくれたのは・・・・おとう・・さん・・でした」
CDが傷ついているのかラジカセが古いのか、ところどころ音飛びします。
「ちいちゃんはそらを・・そらを・・・そらを・・・・みあげ・・・みあげ・・あげ・・あげ・・・あげ・あげ」
音飛びがエスカレートし、同じ音を繰り返すようになります。悲しいお話なのにアゲアゲな語尾になってしまっています。
笑いの沸点が極端に低い小学生。とはいえこういうお話のときに笑ってはいけないという物事の分別もしっかりわきまえ始めている世代でもあります。
自分も含めクラスにいる全員が、笑いそうだけど笑ってはいけないという狭間で戦っているように思えました。心なしか全員が下を向いて何かを堪えているように見えました。
(幸い、お話の題材的に涙を堪えているように見せかけることもできました)
「ちいちゃんと・・おとうさんと・・・おとうさんと・・おとうさんと・・・おかあさんと・・おじいちゃんと・・・おじいちゃんと・・・おじいちゃんと・・・おじいちゃんと」
ちいちゃん一家何人家族やねん。おじいちゃん何人やねん。どんな家族構成やねん。
物語のラストスパート、「かげおくり」のためにちいちゃんが数字を数えていく悲しいシーンに差し掛かります。
「ひとつ・・ひとつ・・・ふたつ・・・ふた・・・ふた・・ふた・・・ふた・・ふた・ふた」
『ちいちゃんの蓋探し』になってしまいました。
「やっつ・・ここのつ・・・ここ・・ここのつ・・・・ここ・・ここ・・ここ・・・・とお・・・・とお・・・とお・・・とおとおとおとおとおとおとおとおとお」
教室内に「とお」のエンドレスリピートが鳴り響きます。
この感動のフィナーレに、クラス中の全員が一直線に下を向いて肩を震わせていました。
その中心で先生が、悲しみのような怒りのような笑いのような何かを必死に堪えている、なんとも言えない表情をしていました。
小学生の頃の、緊張と緩和の極みのような一コマでした。