見出し画像

フランス紀行 一日目 《日本出国〜パリ到着》

夜から眠れなくて、翌朝まで完徹してしまった。ワクワクというより緊張感が勝っていた。

ようやく寝ようと体を横たえたら鼻から血が垂れていた。鼻血を出すなんて学生ぶりではなかろうか。スピリチュアルなことには全く関心のない私でも、吉兆ではないことくらいわかる。波乱の予感を感じさせながら、羽田空港に電車で向かった。

6:30。予定時刻を過ぎても、今回の相方が登場しない。待ち合わせに遅れることのない真面目な性格なのにも関わらず、既読以降何の返信もない。まさかソロ・パリではなかろうな、と心配しつつも相方のお母様からLINEが届いた。

お母様の説明から察するに、相方がスマホを家族の鞄に入れっぱなしにして出てきてしまったらしい。初っ端からまさかの展開。頭の中で流れるのは、有名なスパイ映画の音楽だ。

果たして。

間に合った。ぎりぎり間に合った。

無事に会えたことで安堵のあまりここがクライマックスかのように涙が出てくる。焦った。まだ日本から出ていないというのに。

クライマックスはまだ早い。無事でよかったねえと言い合いながらX線の検査を受ける。私が持っていくフィルムは感度はそこまで高くはないが、影響が出る恐れがあったので恐る恐るハンドチェックをお願いする。

保安課の方は20本あるフィルムの蓋を全て開けてチェックしてくださった。手間だろうにありがとうございました。

ともかく保安場を抜けて搭乗開始に間に合った。胸を撫で下ろす。

食事は用意されていないと思っていたが機内食もいただくことができた。ビーフが牛丼、チキンがカレーライスで、私は牛丼を選んだのだがあまじょっぱさが癖になる美味しさだった。

三時間で北京まで向かって、そこから乗り換え。飛行機の乗り換えは初体験だったため手間取ってしまい、全然違うゲートに一時間近く並んで時間を無為にしてしまった。

さて泣きっ面に蜂はつきもの、ここでイヤホンを無くしたことに気づく。ああ私のイヤホン。羽田でお留守番である。

翻訳機を駆使しながら割と無愛想な中国の保安検査を抜けると、もう最終搭乗の五分前。相方が全力ダッシュしてくれてことなきを得た。

もうこの時点で全身汗ダラダラ、靴紐は解け、身体中によくわからないポーチをぶら下げているというかなりやばい状態になっていた。

ここから11時間40分の耐久戦がスタート。
謎の味がする機内食を食したり、見たかった映画を3本一気見したり。SNSから解放され、ある意味贅沢な時間を過ごすことができた。

流石に11時間以上飛行機の中にいると体も慣れるようで、多少の揺れでは騒がなくなった。前回沖縄へ行った時はかなり叫んだ思い出があるので、耐性ができたと考えて良いと思う。

およそ残り四十分のあたりで、暗くなっていた機内が明るくなった。窓を開けると、そこは雲の上の世界。雲間からは街や山がのぞいていて、息を呑んだ。

着陸後、空港で荷物を取って地下鉄でホテルに向かう。しかしここでも問題発生!階段が多くエレベーターもないため、18キロくらいあるトランクを担いで移動しなくてはならない。

ひいひいいいながら地下鉄の階段を抜けると、そこには絵画の世界が広がっていた。

一瞬、言葉を忘れて、そのあと顔を見合わせて、にんまりと笑い、二人ではしゃいでしまった。

だってどこを見ても絵画なのだ。
ゴッホの『夜のカフェテラス』みたいな世界に迷い込んでしまったかと錯覚するほど、それは絵画で、舞台だった。

ようやく到着したホテルはとても綺麗だった。しかしなぜかケトルが凄まじくお酢臭く、酸の香りを放っていたため、相方が洗ってくれた。私はパリのスーパーで買ったボンヌママンのマドレーヌを頬張り夕食がわりにした。

薬を飲んだら10秒かからずに寝てしまったようだ。明日はモン・サン・ミシェル。

相方に常に感謝を忘れずに頑張りたい。

2024/09/09

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?