個展 溺れる鱗を開催して
私は小説家志望だった。
言葉で人を救いたかった。
その夢が潰えたあと、心理士を目指した。
それも諦めた。
でもずっと人の心の居場所を作りたかった。
苦しい夜から逃避行できる秘密基地を作りたかった。
それが形を変えて、今回叶ったことに、涙を溢している。
今回の展示は、八月に決まった。
土日でほのの展を開催されるほののさんのご厚意で、平日の空き時間を使わせてもらえることになったのが始まりだった。
それはちょうどスタジオで、海の中の世界を撮影し終えたときだった。
今回の展示は三回に分けて撮影をした。最後の撮影はほんとうにギリギリの10/3に行った。
準備の段階も、全部ギリギリで、参考にはなりづらいと思うので割愛する。
会場はとても広かった。自分がここで展示をすることに少し怯えるほど。それでも、キャストの2人とアシスタントさん、それから恋人、ここに書ききれないほどたくさんの方に手伝っていただき開催することができた。
私は、今までの物語では死への憧れや甘美さを描いてきた。死こそが最後の救済だったから。
今回の展示では、ある覚悟をしてシナリオを書いた。大人、が出てくるのも初めてだが、生きることを選んだ主人公を描くのも初めてだった。
わたしは幸せが怖かった。いつ失うかわからない大切なものを抱えるなら、元からない方がいいと思っていた。でもその思いは変わって、いつ失うかわからないから、大事に抱えて生きていくしかないと、大事にするしかないと思った。
展示がいざ始まって、展示を見たときに、泣いてしまう方もいらっしゃった。そこで初めて自分の作品の暴力性を自覚した。それは決して悪いことではないと思うけれど、ある一定の覚悟が必要であり、気軽に扱っていいテーマではないと改めて思った。
誰かの心に触れるのは怖い。
でも、心は温かかった。
この展示を見た人の心に、煌めく鱗を一枚添えられますように。
2024/10/24