目指せ出版! 日本史のセンセイと行く全国制覇の旅20 会津戦争と北海道を行く
徳川慶喜が二条城(京都府)で大政奉還を行って江戸幕府が倒れた後、明治時代がスムーズにやってきたわけではありません。戊辰戦争という大規模な内戦が始まったのです。鳥羽伏見の戦い(京都府)、上野戦争(東京都)に続いて新政府軍が旧幕府軍を追い詰めて起こったのが会津戦争(福島県)です。白虎隊の悲劇で知られています。白虎隊は16~17歳の少年兵で組織された部隊で、元々は城下町の警備を担当していましたが、前線へと送られて戦いました。飯盛山で会津若松城(福島県)周辺から煙が上がっているのを見て、いままで小説やドラマなどでは
「城が燃えている、いまやこれまで」と自害をしたと言われていましたが、最近の研究では城に戻るか、敵軍の斬りこむか、の激論がなされたのちに、敵につかまり生き恥をさらすよりは、と悲劇が起こったことが分かっています。今では自刃の地に十九人の墓が建っており、頂上からは会津若松市内を一望できるようになっています。なお会津戦争での悲劇や、その後の会津藩士の苦労を描いた書籍としては「ある明治人の記録 会津人柴五郎の遺書」(中公新書)が有名。名著です。
会津戦争の残党はその後北へ逃がれ、北海道にたどり着きます。ここで起こった戊辰戦争最後の戦いが箱館戦争、別名五稜郭(ごりょうかく)の戦い(北海道)です。江戸時代末期に箱館(江戸時代には函館ではなく箱館と書いていた)奉行所を移転させるために造った星形(ほしがた)要塞(ようさい)が五稜郭。ここを旧幕府軍が奪い、新政府軍と戦いました。石垣などが残っていて、箱館奉行所も再建されています。五稜郭公園を上から見ることができる五稜郭タワーは一見の価値あり。思っている以上に星型の城砦が見られて面白いです。また北海道の少し遅い春に咲く桜は圧巻の美しさだそうですよ。
【北海道に行ったなら】
北海道と言えば本州にはない大自然がみどころ。日本史というよりは地理になってしまうけれど、ぜひ見に行きましょう。まずは釧路湿原。日本で初めてラムサール条約に指定された、東京ドーム6000個以上もの大きさの湿原で、特別天然記念物に指定されているタンチョウが有名です。現在は湿原を保護するため、いつでも好きなときに好きなところを見るわけにはいきませんが、いくつかの観察スポットがあります。釧路市湿原展望台には遊歩道も整備されていて自然を観察することができます(運がよければキタキツネを見ることができるかも。ぼくは見ることができましたが、いくらかわいくても触ったらいけません。キタキツネはエキノコックスという恐ろしい病気を媒介することで知られているのです)が、蛇行する釧路川の姿は見えないんですね。だから雄大な自然の中に川が走っている景色が見たい人には、少し離れている細岡展望台をおすすめします。釧路川は本流にも支流にもダムがない自然に近い川なので、その点でも有名です。
もう一つの大自然と言えば世界自然遺産の知床。実は知床半島の先端、知床岬までは自動車ではいけません。なぜなら自然保護のため道路が造られていないから。だから世界遺産を見に行くためには船に乗らなくちゃならない。しかも時期によってその船がどこまで行くか決まっているので、ぼくは知床岬までは見られませんでした。それでも自然の中で生きるヒグマを船上から見ることができるなど、足を延ばして見に行く価値は十分にアリ。船は事前に予約しておいてくださいね。
地理的分野からは離れるけれど、北海道に行ったなら意識してみたいのがアイヌの文化について。北海道の先住民族として独自の文化を守ってきたアイヌ。北海道の地名はアイヌ語がもとになったものも多く、またクマの木彫りの飾り物など身近なイメージもあると思います。アイヌはすべてのものにカムイ(神、と訳すことが多いようだけれど、魂のようなものだと思います)が宿り、人間とカムイの間の関係を維持しながら日常の生活を行ってきました。だから神道の考え方にもどこか似ている部分があるんだと思うんだよね。いまはウポポイ(民族共生象徴空間)や阿寒カムイコタンなどで伝統的なアイヌ古式舞踊を見学することができるなど、勉強する機会が多く得られる。「日本は単一民族国家だ」なんていう人もいるけれど、北海道、そして沖縄にも独自の文化があったということを忘れちゃいけないよ。