北野 詩乃 |写真家・エッセイスト

写真家・エッセイスト  東京都の元花街大森出身。線路の向こうは馬込文士村、こちら側は三…

北野 詩乃 |写真家・エッセイスト

写真家・エッセイスト  東京都の元花街大森出身。線路の向こうは馬込文士村、こちら側は三業地。 東京、ニューヨーク、ポートランドを行ったり来たり。 http://shinokitano.com

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Family Ties ーニューヨークの、ある家族の絆

(2005年に執筆した記事に加筆しました) ある冬晴れの日曜日、ベイビーシャワー(出産前のパーティ)に呼ばれ、ブロンクスにある義弟の家まで行ってきた。 義弟のモーリスはもうすぐお父さんになる。ガールフレンドのお腹の中には、小さな命が宿っているのだ。 夫、義弟、義妹の父親はそれぞれ違い、母親が今まで一番愛していた人は義弟の父親だったらしい。 住まいはブルックリンのゲットー(注1)だったが父親はきちんと仕事をもっており、母親は主婦として完璧に役をこなしていた。おもちゃも十分

    • 戦中生まれの父と、LGBTQ

      小さい頃から喧嘩ばかりして、水と油のような父と私だった。 短気で喧嘩っ早く、プライドだけが高くて気が小さい。 気に入らないとすぐに手が出てすぐ怒鳴る。 大人になり和解したと思ったらまた口論して、結局私たちは似たもの同士ということなのだろう。 数年前、その父がアメリカへ遊びにきた。 ちょうど6月はLGBTQプライド月間で、計画したわけではないが、ボストン、ニューヨーク、ワシントンDCと私たちが行くところでパレードに当たった。 戦中生まれの父は例に漏れず保守派で、パレードを見

      • クスクス?クスクス!

        私はその日、どうしてもクスクスが食べたかった。 日本人が毎日お寿司を食べないように、モロッコ人が毎日クスクスを食べるわけではない。 どこのレストランへ行っても「今日はないよ」の連続で、 メディーナの石畳の上で途方に暮れながら、クスクスの味を思い浮かべていた。 すると目の前に、クスクスがいっぱいに入ったボウルを頭に乗せた女性が通り過ぎた。 私は突然「クスクスだ!」と声に出してしまい、それを聞いた女性は立ち止まってこちらを見た。 「クスクス?」と彼女は言い、「クスクス!」と私は

        • コロラドでヒッチハイクをした話

          エヴァグリーンという小さな町はバスは朝と夜に2本ずつという環境で、しかしアメリカの運転免許がないわたしは(今では乗り回しているが)、滞在先のホストに頼むのも申し訳ないと思い、ヒッチハイクをした。ヒッチハイクはアリゾナで一度したことがあるのでこれで2回目である。 2台ほど通り過ぎたあと、大きな赤いトラックが私の前に止まった。助手席側の窓が開き、がっつり刺青が腕に入ったごついお兄ちゃんが「どこへ行きたいんだ?」と聞いた。その言い方と彼の目がやさしそうだったので、きっと悪いひとで

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        • 文化のインスピレーション
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        • 写真はもっとおもしろくなる
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        記事

          通訳をしてくれた5歳の女の子の話

          数年前にジャーナリストのRico Washingtonと「We The People」というプロジェクトを共同制作した際、New Yorkの低所得者ビル通称「ハウジング・プロジェクト」に関わりのある人たちを60人以上の方を撮影させてもらった。 この写真の女の子、Ameenahはマンハッタンのプロジェクトにお母さんのNadiyahと二人暮らしだ。 彼女のお母さんは耳が聞こえないので、もっぱら二人の会話は手話である。Ameenahはそれはそれは上手に手話をあやつり、それこそお

          通訳をしてくれた5歳の女の子の話

          西ベルリンで会った女性は、いま

          義父にラマダンが終わったタイミングで電話した。 私には二人義父がいるが(人生色々ある)、初めの夫の父である。 初めの夫はもう私と口を聞いてはくれないが(努力はしたものの)、義父とはすこぶる仲が良い。何度も引っ越しを繰り返す私にそのたびに何かを贈ってくれる。私がやることを100%応援して励ましてくれる。 たとえ私が彼の息子との結婚を終わりにしたいと泣きながら電話したときも、彼はこう言った。 「きみが息子と離れるのは僕も悲しい。けれどこのまま年を重ねて人生を振り返ったとき、

          西ベルリンで会った女性は、いま

          男でも女でも

          友人とジェンダーについて話した。彼女は25歳になったばかりのアメリカ人で、今まで一度も誰ともつきあったことはないという。男女という概念もないから性別が理由で惹かれることはないし、肉体的な関係よりも心がどれだけ繋がっているかを大事にしたいという彼女の言葉を聞いて、アバズレ度の高い私はただただ反省するばかりだ。 男とか、女とか、そういうのは社会が決めたものだから、あなたも自分で決めていいのよ、というから、じゃあ今日は男だけど明日は女でもいいわけ?と尋ねると、そんなの当然でしょう

          空から巨人が降りてきた

          「ある日、突然、巨人が空から降ってきた。」ロワイヤル・ド・リュクス 舞台演出家ジャン=リュック・クールクーが南仏で1979年に創設した「ロワイヤル・ド・リュクス」は、彼らが訪れる街のすべてが舞台だ。 その街の人たちは彼らが何を、いつから始めるのか全く知らずにその日を迎える。 「この街に、どうやら巨人がやってくる」ということ以外は。 私たちは巨人の到来をなんとなく予想し、数日前からフランスのナントへ入り、街中を観察することにした。 ルワール川を中心に広がるナントという街は

          母とあなたへ

          Day 13 : この地球の、母であるあなたと、母になるあなたと、ときには誰かの母のような存在であるあなたに。 この地球の、母を持つあなたと、母の存在を知らないあなたと、母と会いたくても会えないあなたに。 今日という日を、あなたのためにお祝いしたい。 #art #photoessay #journey #旅路 #photojournal #写真とエッセイ #photoessay #travelphotography #30日チャレンジ #photographerlif

          ジョージア・オキーフがパイナップルを描かなかった理由

          Day 12: ジョージア・オキーフの軌跡を辿るという仕事で、マウイ島へ行ったことがある。 オキーフはドール社(当時は「ハワイアン・パイナップル・カンパニー」)から広告の依頼を受け、1938年ハワイにしばらく滞在していたのだ。 夫で写真家のアルフレッド・スティーグリッツの浮気&精神を病んでいたオキーフにとって、マウイ島のこの気候や初めて目にする文化は新鮮だったに違いない。 日系人の作ったお寿司を食べ「初めて生の魚を食べました」と夫に手紙を記し、中国や日本の影響を受けたよう

          ジョージア・オキーフがパイナップルを描かなかった理由

          住所がないトニーのこと

          Day 10 : トニーのこと。 トニーとはサンフランシスコの街角で初めて会った。 彼はしばらくここに座っているぞと決心したような佇まいでどこかを見ていて、 私は話しかけたのだった。 トニーには家がなかった。彼の母親が病気になり、その医療費の支払いで家を手放すことを余儀なくされ、 路頭に迷ったという。アメリカではそういう話が少なくない。 しばらく話して、私はトニーに連絡先を聞こうと思ったが持っていた携帯も今は使えないという。 「そしたら手紙を書いてくれないか?」 と彼

          ブラジルのファヴェーラの話

          Day 8 ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで、ファヴェーラに住む友人宅に滞在したことがある。 友人の家は山の頂上に近かったので、毎日が登山で、湿気と暑さの中(摂氏36度ほど)、家へ戻る頃には汗だくになる。 実際に私は一週間で3キロ近く痩せてしまった。筋肉痛もひどく、足が上がらない。 登山を回避するため、地元の人はどうするのかと観察すると、オートバイやミニバンが住民の交通手段のようだ。片道約150円くらいで利用できるようなので、私はオートバイを試してみることにした。 し

          ブラジルのファヴェーラの話

          30日間連続、写真と文章を書いてみる。

          暗闇の光。 インスタもFBもままらなない私ですが、今日から30日連続で写真をアップすることにしました。 実はここ1年ほど、私はずっと暗闇の中にいるような感じがしました。そんな中、メンターであるJamel Shabazz氏が毎日のようにポストする写真は、一筋の光を私に見せてくれたのです。 自分がそんな役割をとてもできるとは思えませんが、この世界にあるどこかの風景を、みなさんと共有できたらとても嬉しいです。

          30日間連続、写真と文章を書いてみる。

          アラスカの廃墟村

          撮影で、アラスカのベトラスという村へ行った。フェアバンクスから小型飛行機で約1時間20分、山の隙間を飛行機は通り過ぎ、窓から見下ろすと、うねうねとした凍った川が連なる。”飛行場”にはその村の人口数が、野球のスコアボードみたいに示してある。わたしたちが行った時は確か30人くらいだったが、2020年には23人に減ったらしい。 冬になると川が凍結するため、その上を走れば、村から一番近いスーパーは車で8時間で到着する。ただし、夏は小型飛行機が唯一の移動手段で、それが1日何往復かして

          ブルーノート撮影 in ニューヨーク

          ブルーノートの撮影でValerie Juneの写真を撮った。ベッドスタイのカフェで待ち合わせした。彼女はステージに立つべく存在感があり、シャイで、スイートだった。 そのあとセントラルパークのサマーステージで彼女の演奏を聴きに行った。「The Order of Time」を発表したばかりで、その日はこのアルバム中心に歌った。 「Two Hearts」という曲で、彼女はステージに大の字で寝そべり、しばらくそのままでいた。大きく美しい目で、彼女は空の向こうの何かを見つめていた。

          ブルーノート撮影 in ニューヨーク

          全米有数の“住みたい街”ポートランドで今、起きていること~家族も職もある白人女性、クリスティンが闘う理由とは?

          駒草出版に寄稿しました。2020年の記事です。 このとき戦っていた白人たちは、いまどうしているんだろう。

          全米有数の“住みたい街”ポートランドで今、起きていること~家族も職もある白人女性、クリスティンが闘う理由とは?