夢追い人を追う
テレビ番組や映画、小説等で涙腺が刺激されやすい分野って人それぞれですよね。スポーツものに弱い、子供が出てくるものに弱い、動物ものに弱い、等々。
私も最近自分にそういう特定の分野があることに気づきました。オーディション番組です。
特に音楽オーディション番組。中でも好きなのが『中国好声音』。世界各国で人気を誇る音楽オーディション番組の中国版。今年も待っていました、この季節を。今年は王力宏と李荣浩が審査員兼指導者に新たに加わり、また目が離せません。
本日時点で第11回まで放送されており、番組もいよいよ佳境を迎えるところでありますが、今日は放送前半部分のブラインドオーディションからエピソードを取り上げてみたいと思います。審査員兼指導者の4名がステージに背を向けた状態で挑戦者の姿を見ずに歌声だけで審査をし、自分のチームに取り込むというブラインドオーディション。これが番組の第一段階です。
第1回放送から
新彊ウイグル地区アルタイ市からやって来た馬傑雪。邱振哲の『太陽』を歌い上げます。歌っている間、彼女の応援にやって来たご両親の姿が時折映ります。歌う彼女を心配そうに見守るお母さん。最初に指導者那英が振り向いた時のお母さんのその表情、期待と不安が喜びに変わる瞬間に胸が熱くなります。結果として彼女には3名の指導者が振り向きます。
彼女のお父さんは目を悪くしており、今回彼女が番組出演にあたって事前大会に参加する為の旅費を、お父さんの手術費より優先させて来たと言います。それに対して那英が、お父さんの目を治せる良い病院を探してあげる、と言う場面ではこちらも温かい気持ちになります。家族がどんな気持ちで彼女を応援してきたのか、彼女もまたどれだけの家族の想いを背負ってこの舞台に立っているのか、それを考えると込み上げるものがあります。
第2回放送から
黒龍江省大慶からやって来た常虹。油田で有名な大慶では、そこに住む人のおよそ9割が石油事業に従事するという中で、音楽の道を進むことを決意し、今は子供たちに音楽を教えている彼女。思わず男性かと思わせる容姿と声の彼女に、指導者たちは聞きます。どうしてこの番組に来たの?と。彼女は答えます。
音楽に関わる仕事がしたいとバーやレストランを探していた当時はとても太っていて、女性歌手は綺麗でスタイルが良くないといけないという理由で何度も断られてきました。けれどある時1人のオーナーが声をかけてくれました、バーをオープンするんだけどうちに来ないかと。オーナーに何で私を選んでくれたんですか?と聞いたところ、『中国好声音』を見た事はあるか?歌を歌うのに容姿は関係ないんだと言われました。そしてそこで働くことになったんです。
辛酸をなめてきた彼女が、この番組の存在に救われたエピソードに、心が洗われます。
同じく第2回放送から
マレーシアからやって来た以格。王力宏の『Forever Love』を歌います。その熱のこもった歌いっぷりに王力宏自身が涙するほどです。そして彼女自身も涙ぐみながら、この番組は今回で4度目の挑戦になり、これまでただの1度も成功しなかったことを打ち明けます。4名の指導者の誰1人も振り向いてくれない、誰からも認められない経験を繰り返してきたのです。それでもあきらめずに挑戦を続けてきた、そんな彼女に王力宏が言います。
ショービジネスの世界は成功よりも失敗の方が何倍も何倍も多いんだ。幾つもの曲を書いては断られる、それは李荣浩も僕もたくさん経験してきた。それでもあきらめないことが大切なんだ。
成功者が語る言葉だからこそ深いと思うと同時に、彼女のあきらめない気持ちの強さに心が打たれます。
たくさんの夢追い人たち
取り上げたのはごくごく一部で、その他にもたくさんの挑戦者が現れます。夢追う彼ら彼女らの背景には多くの苦悩や葛藤があって、それが垣間見える時、思わず自分の人生を重ねてみたりして、その挑戦する姿にエールをを送りたくなります。そしてエールを送ると同時に、私自身もまた多くのエールを貰います。
年齢や容姿や経済環境等、いろいろなマイナス面を乗り越えて夢を追おうとする姿は、心の琴線に触れます。
夢追い人たちの挑戦は、続く番組の中で。彼らの夢の続きを追える幸せを、まだもう少し味わっていたいと思います。