日本一利益率の高いラーメンチェーン 一蘭のシステムが学びだらけだった話し
(写真がなくて、これは和牛二郎ですね)
先日、堀江貴文さんに教えてもらった話しで面白すぎたのでシェアしてみます。
こちらが元ネタでありおすすめ動画です。違った視点を交えて、私なりの抽象化をしてみました。
前段 : 流行っているモノより、裏側の仕組み
私は、流行っているモノそれ自体よりも、その裏側にある創意工夫された仕組みのほうが気になります。そこにあるアルゴリズムを知ることが、一番ワクワクします。しかし、生活に普及したサービスや情報というのは透明化されて見えづらくなるため仕組みに気がつきづらいわけですが、まさに一蘭の戦略は目からウロコ過ぎました。強すぎる。
また、以前にこんなこともつぶやいたのですが、まさにこれはそのような話しでした。簡単にはコピペできない事業価値ですね。
※なお、本記事は今日時点におけるファクトかどうかは不明なことがいくつかあります。詳しく調べたわけではありませんので数字のミスは気にしないでください。ただし、戦略の本質には影響ありません。
ということで、以下に紹介していきたいと思います。
ラーメン 一蘭とは
Wikipedia「天然とんこつラーメン専門店 一蘭(いちらん)は、福岡県福岡市に本社を置くラーメンチェーン店である。」とのことで、みんな大好きなとんこつラーメンチェーンです。飲み終わって食べに行ったこと、ランチにささっと食べたこと、あるのではないでしょうか。
なんで今回、一蘭のシステムについてシェアをしようかと思ったのは、そのラーメンの味もそうですが設計やオペレーションが天才的に優れているということを学んだからなのです。何十回も食べたことあるのに、このモデルを全く抽象化できていなかったことに今更気が付きました・・
一蘭の最高売上店舗はどこか? いくらか?
結論から言うと「アトレ上野店」であるそうです。偶然、わたしは浅草に長らく住んでいたので、飲み会後に一人で上野駅へ立ち寄ったり、土日に行ったりとしていたため、常に行列ができている姿が妄想しやすかったです。ただ、特に内部が他の一蘭と変わっているわけではありません。
どれくらいすごいかというと。
1日に平均1,500人の来店で月4万人超です。単価800〜900円として月商約4,000万円で年商も4−5億円近くまであるということです。(※すいませんここ曖昧なのでちょっと間違ってるかも。知ってる人募集)
あの決して広くはない、たったの1つのラーメン屋でこれだけの売上を叩き出せていることはとんでもない数値ではないでしょうか。スタートアップもびっくりです。さらに、全店舗売上は右肩上がりで推移しており、すでに250億円を超えているという強さを誇ります。立ち上がりは遅れていますが、ここ数年で急激に上昇をしています。
しかも一蘭が飲食業界で最も経常利益率が高いってことを、知らなかったです。(飲食業界オールです、Notラーメン業界) 15%あるみたいなので、40億円くらいの経常利益が出てます。
ソース:https://ichiran.com/news/2018/05/mj.html
出典:https://ichiran.com/company/profile.html
この時点で驚異的であり、どんな仕組みで伸びているか知りたくなりますよね。まさか、「美味しい一蘭の味」だけでこんなことになるはずなんてなく、冒頭に申したシンプルにはコピーペーストできないたくさんの仕組みが隠されておりました。以下、3つの素晴らしい仕組み(仕掛け)を紹介したいと思います。
1つ目は味集中カウンターの真の狙い、2つ目は非常識な採用戦略、3つ目はセントラルキッチンとオーダーマネジメント です。それぞれをかなり細かく、分析していってみましょう。
1)味集中カウンターの狙い
あの座席、誰しも体験したことがあるはずですがあれに隠された仕掛けがとんでもない。味集中カウンターとは行った事がある人には説明不要ですが、カウンターに一人掛けの仕切りがあり、「味に集中するために」一人で黙々と食べる座席です。図書館の一人がけで勉強できるような感じですね。
あの座席によって何が起こったか。3つのポイントを紹介します。
出典:https://ichiran.com/ganso/#counter
1-1)(知らぬ間に)一蘭の物語を読んでいる
他のラーメン屋では会話が盛り上がったり、メニューが目の前にあるためそちらに集中してしまいますが、味集中カウンターという仕組みによって、一人で暇だから「一蘭のブランドストーリーを読んでしまう」という設計がされています。その結果何が起こるかというと、一蘭を美味しく感じます。味わいに物語が加わるので、当然です。
1-2)回転率改善への数々の仕掛け
雑談ができない、しない。複数グループで並んでいても一人掛けにさせられ、そして一人だから雑談をほとんどしません。空席は店内入ってすぐのディスプレイに表示されており、「じゃ、また後で」と言った感じで平然とグループも分断させられます。(というか進んでする)
もしも偶然、隣に並べたとしても雑談がとてもしづらい設計になっていますので、結果どうなるかというと、食べるスピードが早くなり座席回転率が他ラーメン店に比べても異様に速くなります。比較して、倍以上もの回転率向上に寄与しているそうです。(ファクトではない)
もちろん、食べ終わったあとにダラダラと携帯電話を10分も20分も触るような席にもなっていませんので、休憩もせずにすぐに立ち去ります。
1-3)オーダーシステム
後述もしますが、自分で自分の味を手書きでオーダーするため、店員との会話コミュニケーションはないし、調理場との連携ミスも全く発生しません。一般的なラーメン屋によくありがちが「野菜ましまし、にんにく、あぶら」と注文したのに、出てきたときににんにくが忘れられてショボーンとなる心配は一蘭にはないのです。
追加で頼む替え玉も、よく考えると風変わりなシステムですが非常によくできています。ボタンを押すとあの音楽が流れて、裏側では座席ランプが光ります。すぐにスタッフに替え玉だと認識され、1分足らずで麺が到着します。確かに一蘭には「お酒」や「餃子」などをたくさん注文するような顧客はいないためアップセルサイドは取りづらいのですが、それらは回転率を下げるアイテムでもありますので、坪当たり売上効率を上げるという点では両刃の剣です。一蘭のこの一連のシステムは、回転率の減少を最小化しつつアップサイドも取るという、最適な着地点を見出して補うモデルになっていたのです。
そして、これらは一蘭社が特許を保有しているのでマネできません。パテントまで考えているという、抜かりが無い経営戦略です。(ちょっと観点は違いますが、女性客にとってもこのシステムのおかげで入店しやすさが出ています。上野店では40%が女性客という、ラーメン屋にしては驚異的な比率になっています)
2)飲食店としては非常識な採用戦略
これも私は全く知らなかったのですが、言われてみてハッとしたのが彼らの非常識な採用戦略です。一蘭はそのシステムから、店員と顔を合わせることがほとんど全くと言っていいほどありません。確かに人生で何十回も行っていますが、わたしは店員さんの顔を一人も思い出せません。ラーメン二郎は全店長の顔を思い出せるにも関わらずです。
結果として何が起こるかというと、(語弊はありますが)見た目によって人に与える印象が変わるような人たち。金髪でもピアスでもタトゥをしていたとしても、飲食店では働きづらい層の方でも、誰でも受け入れたという仕掛けがありました。
もしもラーメン屋でガンガンにタトゥが入っていて、モヒカンの人が働いていたらちょっとドキドキしちゃいますが(※なお私にはそういう偏見はありません、一般論です)一蘭のシステムならば誰であっても採用ができるし、そもそも顔も姿もほぼ全く見えないので問題がありません。Game of Thronesでいうと「何者でもない人」がサービス提供者になれちゃいます。すごいです。顔が割れている人でも働けます。
これによって、新規採用が大変むずかしいと言われている飲食店にして、他社には絶対にマネができない破壊的な採用戦略を実行し、今なおスムーズにオペレーションが回せているということです。すごい。
3)圧倒的に優れたオペレーションモデル
ちょっと1-3とも内容はかぶりますが。
さて、サービス業には本来はあまり向かないスタッフ層(繰り返しですが見た目への偏見はないですが、一般大衆向けサービス業との相性の話です)の採用をすると何が起こるかというと、現場のサービスレベルが落ちるため、「あのラーメン屋は店員のサービスが悪い」という波風が立ちます。サービスが悪いことが期待に織り込まれたラーメン屋ブランドを作れているチェーンはラーメン二郎くらいなもので、基本的に多くの人にとってはサービスが良いほうがありがたいですよね。まぁ単店では名物親父モデルが成り立つしよくあるし大好きなのでこれも否定するものではないですが、ここはチェーンなのでそうもいきません。
そこで、このようなサービスレベルの劣化問題を解決するために生まれたものが、店内のオペレーションモデルとセントラルキッチンシステムだと思われます。
一蘭は仮にスタッフさんのサービスレベルが低かったとしても、あまりそれに気が付かないようなオペレーションモデルに仕上がっており、全店舗で一律の水準が保てるような仕組みになっています。(ちなみにスタッフさんはめちゃくちゃ親切で、サービスレベルが非常に高い方もたくさんいます。)
まず、店内に入ると自動音声で「いらっしゃいませ」、席を立って出るときには「ありがとうございました」が流れますので、声を出していない人がいても一切気が付かないです。また、自動券売機で注文をすると裏側にも通知が行き、前述した通り顧客は自らの手で書いてお気に入りをオーダーするので、スタッフさんはそれを受け取ってその通りに読み上げるだけでおしまいです。余計なコミュニケーションは一切なにもありません。
もう1つの重要な点は、外国人観光客への対応です。
券売機とオーダーシステムの用紙さえ多言語対応すれば、スタッフは一切その国の言語を話せなくとも対応することができます。これはかなり画期的です。多くの飲食店ではなんやかんやとヒアリングがあるため困っていることがほとんどですが、彼らはスムーズに対応をすることが可能なのです。結果、一蘭は訪日客にも大人気となり、各店舗には外国人旅行客が日々大量に押し寄せています。「Do you want vegetables?」なんて言われても、意味不明ですからね。ラーメン二郎で、イーロン・マスクはどうしているのでしょうか。
続いては、セントラルキッチンシステムについてです。
工場で一定品質のスープ、麺、カット野菜などを作り、各店舗に配送をしています。つまり、店内における仕込みや調理は最小限 of 最小限というオペレーションが組み立てられており、どんなにスキルが低かったとしても味には不具合が一切生じません。これもまた語弊ありますが、カップラーメンを作る要領とほぼ変わらずにあの味を提供できるので、失敗がありません。面積もいらないので、店舗坪効率がMAXとなるわけですね。
これらはすでにチェーンとしても大量の店舗を持っているため、規模の経済が働いて原価率はどんどん低減されゆき、これから競合が類似新店舗を構え、似たことをやろうとしても太刀打ちが困難という感じです。(セントラルキッチンがそもそも少数店舗ではワークしないですが)
セントラルキッチンシステム自体はまぁ様々な飲食店でもやっているのでこれ自体への驚きは薄いですが、先ほどの非常識な採用戦略と組み合わさることで一層のレバレッジがかかっている。という考え方が良さそうです。
まとめ:見えるアウトプットよりも裏の仕組みが大事
アウトプットの品質が高いという前提条件は必須ですが、流行っているものは、その表側に見えているアウトプット(とんこつラーメン)よりも、裏側の仕組み(採用、調理、座席管理、オーダーシステムなど)に注目するということがやはり面白いし、事業スケールという点においては100倍以上も重要です。しかしながら、流行っているものほど生活に馴染んで透明化し人々は慣れていってしまうので、日頃からアンテナを立てていないとこうした当たり前に気が付かなくなってしまうと感じました。
今回は偶然にも堀江さんが教えてくださったので学ぶことができましたが、これを機にさまざまなものを抽象化する。メモの魔力ではないけれど、どんどんと学習しつつメモを取る。そんなことを思ったのでありました。そして、Reluxでもこれくらいマネできないほどに効率化をしていきたいと思いました。
堀江さん、ありがとうございました。
あと・・・こうして書いて見て気がついたのですが、これって中国飲食店で今起こっているキャッシュレス x スマホ注文システムがまさにここらへんも含まれてくるものでした。この話はあくまで一つのラーメンチェーン、あっちは飲食店すべてのインフラの話しなので、破壊的すぎてやばい・・・。となり、中国やばい。と改めて(;・∀・)
私は1年でもっとも忙しい時期になぜこんなことを書いているのかよくわからない気持ちですけれども、こんな感じで今日はおしまいです。もし面白いと思ってくださったらTwitterなどフォローいただきつつ、Reluxの応援をよろしくお願いしますねん。^O^