[コロナ対策]いま、スタートアップがやるべきこと3つをまとめてみた。
※シナリオが通常から悲観になってきたので、一部編集しました。2020年3月25日
こんにちは、篠塚です。Stand.fmを始める機会を失いましたが、本当はこういうこと話したいなというやる気だけはあります。だから僕はNoteに向かう。
スタートアップがやるべきことはなにか
昨日はまさに歴史的な日でした。Winter is comingです。ドアが開いた。
いよいよ新型コロナウイルスが世界中を自由に飛び回り、実体経済にも本格的に寄生してきたように思います。まわりのみんなにもシェアをしたのですが、スタートアップ(まぁ大企業も変わらないけれど)が今こそ取り組むべきことを3つに整理してまとめてみましたので参考までにメモをしておきたいと思います。
守るべきと攻めるべき、議論がグラグラしているのでちょっとそこをどうやって判断するのがよいかなぁということを私なりにまとめてみました。
では、以下本題へ。
1)リスクシナリオ別のアクション
ここはWealth Naviの柴山さんやGlobis高宮さんと先週のオンラインカンファレンスで登壇をして、私自身が大変学びになったことでございます。それを私なりにも解像度を上げ、具体的に本ショックに対してどうやってアクションしていくべきかというプランとして紹介したいと思います。まず第一は端的に言うと、今回のコロナショックに対するリスクシナリオを以下の3つほど策定し、それぞれを経営メンバーで話し合っておくことをおすすめします。どのシナリオに着地しそうかといった確からしさは、常に専門家の意見をメタ認知しながらすすめていくことが良さそうです。(=専門家の意見すら割れている状態だから引いてみる)
楽観:3−4月に世界的収束を見せる
通常:6−7月に世界的収束を見せる
悲観:年内は継続していく
この3つに分けて考えてみます。
楽観:3−4月に世界的収束を見せる
短期的な広告費をストップさせ、支出の元となるポイントをキュッと絞っておく。そのうえで収束の機を見計らって、経営を元に戻すこと。少し筋肉質になって復活できると捉えれば、むしろ良いとも言える。
ただしこのケースにおいても、自社内でコロナウイルス罹患者が出ることは想定しておくべきであり、これはエマージェンシーテストを行えば対策プランは作れる。非常に簡単なステップです。皆様の会社のだれかAさん(ごめん、Aさん)から社長宛にDMが届き「社長、わたし新型コロナウイルスに罹患しました・・・」というSlack通知が飛んできたことを想定すればよい。みなさん、どうしますか? 該当部署はどうしますか? 近い席だけ? 全社停止? サービスどうするの? など。全体のアクションプランは1時間くらいですべて決めきれます。
また、この自体を事前に避ける最も良さそうがプランはすでにいくつかの会社でも取り入れているようですが、(出社が必要な方々は)サービスラインをA/Bに分けておくことはおすすめです。Aラインのシフトは月水金、Bラインシフトは火木土など。Aラインで罹患者が出ても、Bラインは残しながら事業推進ができることになります。
通常:6−7月に世界的収束を見せる
3末くらいの状況によっては、このシナリオに行く可能性が見えてきそうです。資金繰りが残半年以下のスタートアップにとっては危機的な状況になりえるため、以下のようなことはすぐに動かなくてはなりません。
・資金の入と出をすべて見直す必要性。
・資金調達は今すぐに動きはじめる。
・支出を止める。無駄を抑える。
・採用を抑制する。
(これらは細かく次項でも述べる)
などなど、あらゆる打ち手によって、入を増やし、出を減らす方策を実行し続けなくてはなりません。このシナリオの場合は、安定感の強いSaaSすらも企業側の発注が止まり始めるので、チャーンを抑えるための施策をきちんと実施しないとトップラインは前年比でダウンする可能性が出てきます。ここまで影響するとオリンピックは延期や無観客になりえるため、日本経済への影響は甚大です。→延期が確定(3/25編集)
また、このシナリオに進んでいるということは各国でのパンデミック様相もとんでもなく、東京大阪などのロックダウンや、完全なる営業停止、休校も起こり得ることを前提に対策を打っておきたいところです。
ロックダウンの様相が強まってきたのですが、すぐに企業は「都内から移動禁止になった、どうする?」というシミュレーションテストをボードメンバーで実施すべきです。社員の安全確保は? コミュニケーションラインの確保は? 通常業務への影響範囲は? セキュリティ面は? ミーティングの実施方向は? など。
また、とはいえ必ず業務が発生する企業もあります。そうした場合によっては会社が食料や飲料を備蓄したり、トイレットペーパーを社員数分程度は確保しておき、不測の事態に対して備えるのも有効です。当然この際にも、必要数より以上は買いすぎないなど、節度が必要です。
あわせて、ロックダウンした場合のメンバーらの家族や親族との関わり合いも企業側で一緒に整理をしてあげて対策を作っておくと非常によい可能性があります。メンバーによっては遠かったり、介護があったり、または何かまた別の問題がある可能性もあります。もちろん企業が助けられる範囲はあるものの、備蓄品は充分か、コミュニケーションラインは大丈夫か、そのほかサポートが発生しないか? など、ともにエマージェンシープランを捻り出したいところです。簡単にヒアリングフォームなどを作り、「万が一東京がロックダウン(首都閉鎖)したら、みんなの生活に支障はでますか? それはなんですか?」など、管理チームと共に社員のそれを把握しておくと心理的安全性にもよいかもしれません。
悲観:年内は継続していく
5−6月頃にはなんとなく見えてくるのではないでしょうか。
考えられる限りのワーストシナリオであり、そのまま冬の流行期に入っていきワクチンも間に合わずに再流行がループするケースです。前述の通常ケースまたはこの悲観ケースかに陥った場合、わたしが考えている最大の悲観ポイントは、本当の意味で実体に影響が出始めることです。本当の意味とは、今は、実際のところ消費者の動きが単に鈍化して短期的な経済影響が出ているに過ぎませんが、もしも万が一どこかの国や大手銀行や大手証券会社や事業会社が耐えきれずに倒産するといった実体が発生し、それが連鎖的に起こることです。これは大変なことになります。経済はとにかくちゃんと循環させつつ、ウイルスのピークを抑える方策が求められます。
なお、このシチュエーションで一番やばいのは「なにもしないこと」だと思います。なにもしない場合は、そのままマーケットのダメージを食らうだけのみならず、何かしてる人に様々なことを食われます。これは以下の名投稿にも書かれているような話ですが、そう考えるとGMO熊谷さんの迅速な意思決定のすさまじさ、政府の様々な意思決定は良かったのではと思っています。
Nobody ever regrets making fast and decisive adjustments to changing circumstances. (環境変化に対して機微に実行したアクションに対しては、誰も後悔をしない)
2)アセットのリバランス
さて、シナリオが3つありましたがいずれにしても経営者としてやらなければならないことは、アセットのリバランスです。基本的に経営者は悲観的なシナリオを常に予測して行動つつ、楽観的なビジョンへ向かって突き進むべきと思っています。
アセットのリバランスとは、今日までのPL/BS→明日からのPL/BSへとモデルを進化させることです。大きくは売上計画の見直し、LTVの再算定(予測値の変更)、コスト圧縮の3点を考えていきます。これは事業モデルや現状によって大きく差が出ますが、以下のようなステップで実行可能です。
2−1)売上計画の見直し
売上計画は全面的に見直すべきです。大手企業もスタートアップも、業種を横断し、ほぼ100%すでに影響が出てきており影響がないという会社は1社も存在しません。(なお、+に振れるケースもあるのでそれも含めます)カスタマー向けサービスであれば、店舗型ビジネスや旅行系サイトやD2Cといったものは鈍化がまぬがれませんし、法人向けSaaSや広告代理店や受託系ビジネスならば発注が確実に後ろ倒しが始まっていくわけです。
そうすると、当初計画していた事業計画とは確実にズレますので、まずは資金の入である売上を見直しましょう。ここはまぁかんたんです。(設計は)
2−2)LTVの再算定
続いて、LTVの再算定です。単価減や離脱率やチャーンレートの再定義と捉えても良いかもしれませんが、経済が順調な状態とそうでない状態とでは間違いなく指数になんらかの変動が起こります。(繰り返しですが、+に振れるケースもここでもあります。ECサイトとかジャンルによっては)
マイナスに触れるケースが多いわけですが、これまでのLTVモデルのまま集客/営業をしているとリクープがそのまま後ろに行っちゃう可能性があるので、各シナリオに基づいて以下のような係数悪化が起こった場合、事業はどうなるのか? を経営メンバーや執行チームできちんと話し合っておきたいです。
係数例:チャーンレートの悪化、購入頻度の悪化、購入単価の悪化、新規予約率の悪化、新規契約率の悪化、退会率の増加、顧客獲得単価の悪化、など
1つのパラメータ変動で、LTVは大幅に変わるので3パターンくらいのシナリオを考慮して読み込んでおき、対策をひねっておきたいところです。
2−3)コストの圧縮
これは最もシンプルなような気がしますが、コストの圧縮です。これは現在のコストと未来にかかるコストの双方が考えられます。上記にも書いた2つの点を見直すと、確実に営業利益が大きくマイナスに振れますので、その分をできれば実コストのカットにより補いたいわけです。そうすれば止血は今まで通りかむしろ減るため、企業活動の延命に直結します。
ここは事業によってコスト構造が大幅に異なりますのでひとくくりに言うことは難しいですし、サラっと言うと炎上しかねませんが(すぐに派遣カットだ!的なことになりがちなので)、以下のような項目をきちんと見極めて、あくまで将来のグロースや仲間を守るためにも意思決定しなくてはならないと考えています。偶然、私達の会社はこの1年間かけて「営業利益を創出する」という経営計画でいましたので、すでに多くはカットされていてもうカットできないのですが。笑
現在コストの例:広告宣伝費の見直し、販促費の見直し、人件費の見直し、役員報酬のカット/減額、イベントの見直し、福利厚生費の見直し、など
未来コストの例:移転の見直し、採用の見直し、投資計画の見直し、など
話は変わりますが、こういうときにシェアリングエコノミーとか変動しやすい費用でPLができている会社は強いですね。固定費が積み上がりすぎていると、止血弁がないので1と2の売上計画だけダウンしてコストは維持になっちゃったりします。
3)ピンポイントな攻めの投資
さて、マイナスな話がたくさん出てきましたが、1と2が見えてきたら最後が3です。1と2を引き直すと、成熟したスタートアップほどに意外とコストもカットできる点が見つかってきて、むしろ投資余力が出ることがあります。それを削りきらずに、きちんと狙ったところへピンポイントに投資したいところです。
むしろこれが逆境時の戦略としては一番重要ではないでしょうか。
以下の話です。(以下書いたら意外と反響があったので、このNoteを書いた。笑)
これは、グロースにおいてすごく重要だと思っているのです。(語彙) グラフにするとこんな感じですが、まぁこれはマーケットシェアX%と捉えても良いですし、競合との差が10倍あるサービスと捉えても良いです。ダウン中はこんなイメージです。
落ちるのは当然ですから、シェア%を意識するわけです。
マーケットが50%ダウンして、そのまま自分たちも50%ダウンするのはBadパターンとしており、Goodパターンはマーケットが50%ダウンしたけど自分たちは30%ダウンに耐えた場合を書いています。これはGoodです。
そして、マーケットはいつか必ず戻ります。そのときに、ダウンして獲得したシェアを維持できるような戦略、投資計画をしていきたいのでです。
そうすることで、戻ったときに大きくなって返ってこられるので、こんな感じになります。
元、Booking.comの日本社長を勤められていた勝頼さんも反応してくださったのですが、まさにこの発想です。逆境をバネにして伸ばすことはスタートアップならばむしろしやすいと思いますので、守りにだけまわるのではなく、「今だからこそ投資すべきってどこなんだっけ?」を見極める好機として捉えたいですよね。守ってばかり、削ってばかりだと暗くなりますし、面白くないですから。
そういう点では、以下のような大胆な発表もすごいと思いました。まさにこういうことを、今こそすべてのスタートアップがやるべきではないでしょうか。
ちなみにReluxでもいくつか策を放っていますが、自粛ムードを迎合しつつ、また打ちこわしつつ適度なバランスでいろいろなことをやっています。
・自粛を迎合し、旅行期限を伸ばすための打ち手。
・逆に、自家用車や人に会わなければリスク減るので旅行推進する打ち手。
まあ、あえて元も子もないこと言いますと、こんなにグラフ通りにうまくいくはずはないんですが。笑 でも、マーケット戻ったときにそのまま忘れ去られていると落ちちゃうケースもあるから注意です。
まとめ ピンチはチャンス
わたしは創業したときが2011年の震災の年でしたが、なんとなく似た空気感を感じています。経済への影響はむしろそれ以上であり、混迷を極めるとはまさにこのような状態だなと。初めて体験する新卒や若手のみんなは不安もあると思いますが、やっぱりピンチはチャンスだなというほうが大きく、不謹慎ですがワクワクしてしまいます。
こういうときにこそゲームチェンジは起こり得るので、ぜひ、1つ1つ課題を整理認識して、経営メンバーで大胆な発想を持って攻守を見極めて実行する。そんな機会と捉えれば、人類がまた成長したと言えるんだろうなと感じる次第です。今はみんなが一致団結し、ウイルスと戦いながら成長していけたらいいのではないかな、と思うのでした。
ここまで長々とお読みいただき、ありがとうございました!
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追記:書籍のはじめにが書き終わらない。
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