(まとめ編)スタートアップ経営をしながらスタンフォードSEPに地獄の留学をした話し
こんにちは! NEWT(ニュート)という旅行サービスをがんばっている、令和トラベル篠塚です。NEWTでは今年最後の大型キャンペーン「NEWT FESクリスマスセール」が始まったので、ぜひご覧ください🎄
今夏、6週間の留学をしておきながら最後の振り返りを書けていなかったので、少し自分の備忘録がてらまとめておきたいと思いました!半分は自分の記録のため、半分は少しの形式知になるかなという気持ちでまとめておきます。特に、留学する前にStanford SEPのことを調べてもほとんど情報を見つけられなかったので、こんなnoteがあってもよいかなと思いました。
本記事はこんな方におすすめ:
スタートアップのCXO職や次期幹部候補の方、VCやPEなどファンドの方、大企業の幹部や幹部候補の方、NPO法人や医療法人の経営者などなど。(参加生徒もこのような属性の方たちばかりでした)
ということで少し長くなりますが、プログラムに興味ある方やスタートアップの方はぜひご覧くださいませ!
"Stanford GSB SEP" とはなに?
Stanford GSB(Graduate School of Business=経営大学院の略)が主催するStanford Exective Program(略してSEP)というマネジメントクラス向けのプログラムです。年に2回、夏と冬に開催されており、特に夏は完全にオフラインでの授業となります。スタンフォード大学のキャンパスに集まり、朝から晩までみっちりと学び、全員が寮生活をします。私はついこの間まで、このSEP サマータームに参加してきました。
参加のきっかけは?
私は年に1度くらいは何かしら新しいことや学習機会を設けて自らに負荷をかけるようにしているのですが、今年は40歳になったのでこれまでとは違う圧倒的に負荷の高い挑戦をしたいなと考えていました。また、令和トラベルではグローバルに挑戦したいと思っていたり、「LEARN NEW(あたらしいことを学ぼう)」というコーポレートバリューを掲げています。また、何よりも私自身が誰よりも圧倒的に学び・行動し続け、ビジョンを実現する器になっていかなくてはならない。という使命感を日頃から感じておりました。
このプログラムは、私にとっていかに負荷が高いかというと、
・当たり前すぎるけどオールイングリッシュ(留学経験はあるが半年以下)
・6週間の全寮制プログラム
・月から金、AM8時からPM6時過ぎまでのGSBトップ教授によるクラス
・日々ホームワークや課題図書ももちろんたくさんある
・任意だが朝のエクササイズは7時前後から始まり、夜も毎晩のようにパーティや運動の誘いがある・・・
・授業後の夜にも仲間や特別ゲストによるセッションがあったり
・週末もたくさんのアクティビティがある
・(そしてなんと、18時からは日本の仕事もできる時差😇)
という感じの、まさに拷問のようなスケジュールです。でもなんだか、フルタイムの学生以上に戻る感じにワクワクしませんかね?笑
また、Stanford GSBが開講するプログラムの中では唯一、Alumni(学位取得者・同窓生の資格)になれるという本気度の入れようで、並のプログラムではないことがよくわかります。まぁ正直、そのような資格は今さらどうでも良いっちゃ良い。w
3つの目的がありました
正直、今さら大学院にいって座学で学ぶ意味などあるのだろうか・・・。経営は勉強するより行動するものだよな・・・。そもそも英語力明らかに足りていないんだが・・・とかとか、考えれば考えるほどやらなくても良い理由がたくさんありました。が、これらはすべて結局「やってみなきゃわからないだろう」と行くことにしました。
当然、これだけの時間を投資するわけなので私なりの目的がありました。
1つ目は語学です。
英語の学習、読書、スピーキングなどはもちろんやってきましたが、グッと濃度を上げ切っちゃって一気に学ぶ機会があればいいのにと思っていました。投資家とのやりとりや、交渉の現場での英語力は全く足りていないし、英語でのイベント登壇なども不安しかなかったので、これを機に習得しきってしまいたいと考えました。Stanfordへ行く目的の1つが英語学習というのは失礼甚だしいんですが。笑
2つ目は経営スキルの拡張です。
スタンフォード大学は名実とも世界トップスクールであり、事実、世界で一番ユニコーン企業を輩出しているメガスタートアップの大量輩出校(※)でもあります。つまりとんでもない実績を持つ教授陣や卒業生たちがいます。そこから知識を学べるということは、私にとっては経営スキルの拡張であるし、グローバルにスタートアップを挑戦したい身としてはこの上なく効率が良い場所だなと考えました。
※2024年時点、スタンフォード出身の起業家によるユニコーン企業は207社で世界ダントツ1位。
3つ目はコミュニティです。
もうすでにその恩恵を信じられないほど受けていますが、通う仲間たちとの出会いや世界中のつながり、クラス外で出会うであろうベイエリアのVCや起業家、または卒業したスタートアップ間でのコミュニティなどは変え難い価値があると思いました。今ではどの国へ行っても、誰かがサポートしてくれます。世界がとても近くなりました。
以上、3つを目的を考えて無謀ながらチャレンジすることを決めましたが、結果的には3つとも非常に良い結果になったと思っています。このことは最後プレゼンさせていただく機会にも恵まれてしてきたnoteがあるので、ぜひ。
参加者はどんな人たちか?
およそ30カ国、230名、平均年齢は45歳、全ての大陸から。参加者たちのバックグラウンドはとてつもなく多様です。大企業の幹部や幹部候補、アントレプレナーたち、VC(ベンチャーキャピタル)・PE(プライベートエクイティ)といった投資家、さらには研究者やNPO関連企業など、あらゆる業界からリーダーたちが集まっていました。大手商社、大手銀行、メガIT(Amazon, Meta, Google、Appleといった)、またはブラジルやインドなどからユニコーン起業家もいたり、とにかく多種多様です。
全世界から参加者がリアルに集まり、全く異なる文化・宗教や、ビジネスの視点やビジョンの違いなどを共有できる環境は、私にとってはとてもかけがえのない体験でした。みんなある一定の実績を積んでからきていることもあり、幅も深みもあるとても良質なコミュニティでした。
余談:米国エグゼクティブプログラムの厚さ
ところで少しの余談ですが、アメリカの大学院にはCXO向けのエグゼクティブプログラムがとんでもないほどあります。例えば、WhartonのVenture Capital Executive Programや、HarvardのAdvanced Management ProgramやOwner/President Managementや、MITのCTO Programなどもとても有名で、どれも世界トップ教授陣や最高峰のゲスト講師などが教えてくれます。対象はCEO限定、Founder限定、CTO限定、CHRO限定、CFO限定など多彩ながら極めて特化された内容で、とんでもない経営形式知を浴びせ続けられます。
1週間くらいの短期プログラムから、私が参加したような2ヶ月近いもの、または1年かけてパラパラと通うものなどとても多様です。アメリカ全土でのこのような「形式知の横展開」には正直とても感動し、また日本との隔世の感に対して悲しみも覚えました。 様々理由はあれど、これは間違いなくメガスタートアップがごろごろ生まれる理由の1つであると感じます。
ちなみに日本ですとGlobis大学院のプログラムは非常によく、たまに役員に受けてもらったりしています。今後、令和トラベルのCXO職やマネージャーは英語要件さえ満たしたらどんどんエグゼクティブプログラムや研修などを受けていって欲しいなと思っています。
授業のコンテンツは?
SEPの授業はとにかく幅が広く、よくMBA of MBAと言われる所以がよくわかりました。経営に関する直接的な議題はもちろんですが、あまり関係のない話題までたくさんあります。授業のスタイルとしては座学が多かったものの、全体の30%程度のクラスは単純な座学ではなく実践的ディスカッションや、ワークを行うようなものでした。ケーススタディとディスカッションは特に多く、なぜAという企業がBという企業に勝った(負けた)のか? この時Xという意思決定をといった大量に扱うケースは、本当に多くの視点を学ばせてもらえました。
特に印象に残ったトピックスをいくつか紹介してみると、
意思決定とはなにか
「意思決定」という言葉を聞かない日はないくらい、死ぬほど叩き込まれます。どういう意思決定が良い意思決定なのか? 悪い意思決定とは? なぜあの時あの企業はこの意思決定をしたのか? 意思決定を行う際の危険なバイアスとはなにか? などなど、企業の重大な意思決定を行う際のプロセスを大量に学びました。ケーススタディを通じて、実際のビジネスにどのように適用するかも体験できました。
先日ふわっと書いたNoteを参照。
バリュープロポジション(価値提案)
この言葉も聞かない日はないくらいよく出てきた頻出ワードです。夏以前はあまり「バリュープロポジション」という言葉を使ってこなかったのですが、帰国してからはしょっちゅう使うものだからこいつは流されやすい奴だな。と多分メンバーからは思われていますが。笑
バリュープロポジションとは、言い換えれば「差別化戦略」とか「製品の強烈な特徴」とか言い変えられます。大量のケーススタディから、なぜNokiaがAppleに負けたのか、バーンズアンドノーブルとAmazonのバリュープロポジションの違いはなにか、AirbnbとBookingの違いはなにか。などなど、スタートアップが急速に成長するためには、バリュープロポジションの徹底した磨き込みこそが重要であることをひたすら学びました。
その他にも色々と・・・
統計に関するクラス
マクロ環境や、とりわけスタートアップ創業における統計データを深く分析するクラスがいくつもありました。例えば、VCの支援を受けた企業とそうでない企業の成長度の違いや、性別や年齢による起業成功率の違い、シリアルアントレプレナーと初回起業家の違いなど、多くの統計データが揃っておりとても勉強になります。ファイナンスに関するクラス
ファイナンスの授業も多くありました。財務に関するクラスでは、スタートアップから上場企業に至るまでの財務諸表やモニタリングすべき指標や活用法を学びつつ、またM&Aや新規事業立ち上げ時におけるさまざまな資金調達についても多くのケースを学習。リーダーシップやビジョン
良いリーダーとはなにか、良いビジョンとはなにか、良いマネジメントチームとはなにか? はたまたビジョンの高低が及ぼす企業戦略とは、ビジョナリーカンパニーとそうでない会社の違いとはなにか。などなど、ひたすら浴びるようにケースを学んでいきます。交渉に関するクラス
これも驚いたのが、交渉をここまで科学しているのかよ・・・。というくらい徹底的かつロジカルに科学していることでした。交渉のテーブルについた時に、一体幾つの変数が存在し、お互いに譲れないポイントや価格はどこ、譲っても良いポイントはどこかなどを変数化してまとめていきます。Reservation Price、WTP、WTS、ZOPA、BATNA・・・様々な意思決定に関わることを科学的に学ばされます。マインドフルネス
私が特に好きだったのがクラスの1つです。毎週月曜の朝8時(=つまり週の最初の授業)から始まるのでSEPの本気度を感じます。笑 教授はいつも様々なテーマを提示し、それについてたくさん考えさせられる、集団コーチングのような素晴らしい時間でした。時には隣同士議論したり、時には大学校内を散歩したり、ビジネスとは違うことをたくさん考えさせられました。戦略的コミュニケーション
230人は毎週クラスがコロコロ変わるようにできており、毎週「はじめまして」から始まります。最初の2週間くらいは知らない人もまだ多いのですが、3週目くらいになるとほぼ全員顔見知りになれるのはこの授業があるおかげでした。
スピーディにチームビルディングを行うための企画・設計、コミュニケーションにおいてどのようなポイントが重要なのかを学びつつ、実際のゲームやアクティビティを通じてひたすら体験していきます。そもそも初日のオリエンテーションからして、自転車を組み立てる速度を競うレースをしたり、レゴを使った創造的な作業をやったりと、230人の参加者全員がいきなり一体感を持つことができました。
と、こんな感じで多岐に渡ります。まだまだもっとあります。
とにかく教授たち・研究者の皆様は「事実」「データ」がとても大好きです。クラスでは事実しかほとんど取り扱わないので、世界最先端の環境でケーススタディの洪水を浴び続けていける授業はとてつもなく新鮮であり、また令和トラベルの経営においても「あれもできそうだな」「これもできるな」という学びがそれはもう大量にありました。
過酷だったが、最高の6週間だった。
今こうして振り返ってみても、この6週間は地獄のような日々で、もう一回行きたいとは正直言って全く思えません。笑 でも、本当にかけがえのない時間で、とても大きな経験の1つになりました。
特に、通い始めてから2週目過ぎたあたりが私にとっては鬼門、久しぶりに「疲れた」という言葉が自然と出てきたり、英語での対応が難しすぎて議論についていけず(当たり前だが全員完璧な英語力が・・・。)、さらにはちょうどそれくらいの日数が経つと日本とのMTGや面接などが詰まり出してくるので、夜になると日本時間は朝となってZoomの量が少しづつ増えていったり・・・寝る数分前まではずっとSlackを触っていて寝落ち、朝6時に起きるという生活を繰り返していました。絶対に体に悪い👨💻
人間はつらくなってくると、合理的な言い訳を作る天才になります。
これは結構まじめに「半分はもうクラスを休んで、半分は仕事にしようかな。なぜならーーー」ともっともらしいロジックを考えるようになりました。笑 しかし、隣の芝が青いとき、業務で成果が出ない時なども合理的に多くの言い訳を考えだします。でもやりきった人だけが最後は勝ち残る、諦めない。やりきる。そのような粘り強さに、結局は助けられました。
まぁここまで色々書いてみましたが、総論としては本当に素晴らしい場です。もっと多くの日本人アントレプレナーやVCの方が参加したらよいなと思えるプログラムで、グローバルとの距離が大幅に近づく効率の良い濃密な6週間でした。アントレプレナー、CXO職、VCの方にも、とてもおすすめでございます。
もしSEPに興味ある人いたら、いつでもご連絡くださいませ!!
追記その1:
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追記その2:
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