任天堂が独占していたゲーム機業界でソニー独り勝ちを実現した共存戦略 #ダイナミックケイパビリティ
どもっ、しのジャッキーです。本記事は、超重要経営理論「ダイナミック・ケイパビリティ」に関する個人的な学びをアウトプットするものです。
カリフォルニア大学バークレー校でデイビット・ティース教授に師事していた菊澤教授による"「ダイナミック・ケイパビリティ」の経営学"という書籍(以下、本書)からの学びをまとめていきます。今回は第6回です。
前回は、日本企業が目指すべき経営パラダイムとダイナミック・ケイパビリティがもたらす3つの有用性について、日本企業の事例からの学びをまとめていきます。最後に今回取り上げた事例の1枚まとめチャートもあるのでご参照ください。
既存技術の転用を可能にする:事例「富士フイルム」★前回の記事
独自のビジネス・エコシステムを形成できる:事例「ソニー」★今回の記事
イノベーションのジレンマを回避できる:事例「YKK」
独自のビジネス・エコシステムを形成できる:事例「ソニー」
2つ目の事例は、βマックス vs VHSという家庭用ビデオの戦いにやぶれたソニーによる、任天堂が覇権を握っていたゲーム機業界への参入で成功した事例です。
私自身は、ゲーム機といえば、その後、任天堂が過剰な性能バトルになるなかで、ゲームを家族のだれでも楽しめるものに戻した「Wii」によるイノベーションのジレンマの克服が頭に浮かびます。今回の事例は、その前のころのお話ですね。
1980~90年代のゲーム機業界の変遷
1980年代、任天堂がファミコンで業界を独占する中、NEC(PCエンジン), セガ(メガドライブ)などがファミコンよりも高性能なマシンによる差別化戦略で参入するも、任天堂のコストリーダシップ戦略が圧勝となりました。
その後1994年ごろから、ソニーがプレイステーション、セガがセガサターンでさらなる高性能化による差別化戦略で対抗、任天堂はスーファミでコストリーダシップを堅持するも、業界は3社で均衡し始めます。
そして1998年に、シェアはプレイステーション 60%, セガサターン 20%, NINTENDO64 15%とソニーの一人勝ちになりました。
任天堂が陥った「個別合理的全体非合理」の不条理
ソニー、セガとの競争の中で、任天堂がとった戦略は、競争戦略においてリーダーがとる王道とされるコストリーダーシップ戦略でした。ゲーム機の本体価格を下げ、ソフト販売利益で稼ぐジレット戦略をとりました。
その実現のための関係ソフト会社、流通業者への厳しい契約条件を課しました。例えば、ソフト制作会社は、内容の任天堂との事前協議・許可を得てからの政策、年間販売数の制限、生産したカセット(ソフト)の買取義務(返品は認められない)などなど。
ソフト販売でも、従来からの問屋が間に入っていたが、買い取らせ、返却を認めない形だったため、在庫リスクが価格転嫁されたり、不正コピーや中古品を新品として販売するといったモラルハザードも生み出されていきました。
このようにコストリーダーシップを維持するために個別最適を進めていった結果、全体としては非合理な状態となる「個別合理的全体非合理」の不条理の状態に陥り、スーファミを取り巻くビジネスエコシステムのユーザーとの関係において取引コストが増大し、ユーザーが離散し、自壊していってしまいました。
不条理のパターンについては、以下の記事をご参照ください。
独自のビジネス・エコシステムを形成したソニー
ソニーが任天堂の覇権を崩すためにスムーズな参入と、参入後の優位性確保と業界との共存を目指す戦略をとりました。以下のような戦術をとっていきました。
ライブラリ公開でソフト開発者の参入コスト低減
生産コストの安いCD-ROM採用
CD販売ノウハウによる仕入れ販売方式
上記に加えて業界の常識以上の販売店マージン設定
これらはエコシステムのプレイヤーをガチガチにしばった任天堂の戦略とは大きく異なるものです。競合の構造的に転換しずらいところを新規参入のメリットを生かして、うまくステークホルダーとの共存の戦略をとることで、信頼関係を構築して、独自のビジネス・エコシステムを形成することに成功した結果、60%という圧倒的なシェアを達成しました。
ソニー事例の1枚まとめ
次回は以下、YKKの事例をご紹介します!
既存技術の転用を可能にする:事例「富士フイルム」
独自のビジネス・エコシステムを形成できる:事例「ソニー」★今回の記事
イノベーションのジレンマを回避できる:事例「YKK」★次回
おわりに
このほか、当方の経営理論に関する記事は以下のマガジンにまとめていますので、もしよかったらのぞいてみてください。またフォローや記事への「スキ」をしてもらえると励みになります。
ということで「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。
しのジャッキーでした。
Twitter: shinojackie