【詩】残暑お見舞い
(はじめに)
ご無沙汰しております。という書き出しで
始まるのがお決まりになってしまいました。
今回は、私の詩集「雨が生む色彩」からの作
品になります。発行所であります(七月堂)
のホームページの近刊・新刊案内のページに
も載っているのですが、もう少し踏み込んだ
情報として、詩がつくられた場面などを書こ
うかなと思いました。古い作品になります。
2007年に福岡県小郡市で開催された「野田
宇太郎生誕祭 献詩募集」に応募し佳作に選
ばれた作品です。夏に募集が行われており、
今年で35回を迎えられました。現在では一般
の部において佳作は設けられていないのです
が、当時はありました。そして、私の詩が評
価され初めて賞状をいただいたのがこちらで
した。言わば原点になります。 (この賞状だけ
は、額に入れ飾ってます。当時の気持ちを忘
れないためです)
前置きが長くなりましたが、お暇でしたら
読んでいってください。
残暑お見舞い
テーブルの上にこぼしたミルクに
溺れそうなくらい縮んだ
僕は
十円硬貨ほどの大きさしかなく
昼に食べた冷や麦の器が
宇宙船のようにそびえる横を
草の匂いを含んだ風がすり抜けた
めんつゆの残った器の陰に身を潜めるも
落ちていたネギのひと欠片に足をとられ
尾てい骨から転んだ先はミルクの海
痛みは脳までひろがって
おまけに背中はびしょ濡れで
誰かが名前を呼んでいた
(知るもんか)
それよりこれは現実か
まばたきを繰り返していると
悪いことにますます小さくなりつつあり
仰向けの状態で起き上がれず
誰かが名前を呼んでいた
片方の翼がぼろぼろに壊れた
天使が宙に微笑む姿
痩せこけた体が水分を欲して
眠りから覚める合図をうながす
耳は確かに聞いていた
天使の声を、羽根音を
いたって僕は元気をよそおい
バイクにまたがる
………………………………………………………
小々露さま。イラストお借りいたしました
いつもありがとうございます。
………………………………………………………
(ちょっとだけ解説)
詩に限らず、作品をある程度書けるように
なると、自分の生み出したものがどのくらい
通用するのか。実力を試してみたいと行動す
る方は大勢いらっしゃると思います。当時、
私もその中のひとりで第18回野田宇太郎生誕
祭献詩募集において、詩を応募したのは自然
の流れでした。ある日、仕事から夜遅く帰っ
てきますと、郵便受けに大きな封筒が入って
いました。中を確認するとA4サイズの賞状
と受賞の通知に、気持ちが舞い上がったのを
今でも鮮明に覚えてます。
時を重ね読み返してみますと「 終始わけー
な」というのが率直な感想でして、天使とい
う単語を恥ずかしげもなく使っているところ
が目立ちます。( 現在では通用しないでしょ
う)それから雑誌への投稿とかコンクールへ
の応募を積み重ねてきまして、今の私が存在
します。詩歴だけは長いです。それを証明す
るように、検索していただければ確認できま
すが、web投稿である「日本現代詩人会」の
第16期(2020年 1〜3月)におきまして今期
の選者を務めております『雪柳あうこ』さん
と同じ時期に入選の欄に名前が載っており、
その後、雪柳さんは数々の大きな賞を受賞さ
れ今は審査員。私はのらりくらり詩を書かせ
ていただいている部分だけを強調してみます
と、詩歴だけ長いことは明確です。
それでも、昨年運よく詩集で茨城文学賞に
選出され、詩を書く者として少しずつ認めら
れていることは素直に嬉しいです。ひとつ情
報がありまして、投稿には「暗黙のルール」
みたいなものが存在しておりまして、詩集単
体で何らかの賞に選ばれますと、1編の詩か
ら投稿できる分野において、強制ではありま
せんが控えなければいけない空気感が漂って
いたりします。先輩から学んだのですが、詩
集で受賞したのなら、投稿などで入選してア
ドバイスをもらうのも良いかもしれませんが、
自分で書いた作品が駄作であるかどうかは、
もう自分で判断しなさい。ということなのか
もしれません。でも私は、お金や入賞の楯を
いただけるコンクールには相変わらず応募を
続けておりますし、確率は減りましたが見事
に落選したりします。
珍しく、長い記事になってしまいました。
ここまでお付き合いくださいまして、ありが
とうございました。
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